どう乗り越える「大介護時代」-「老老介護」支える高齢介護者:研究員の眼

中心となる担い手が自らも介護を要する可能性がある高齢者なのだ。

平成29年4月分の『介護保険事業状況報告(暫定)』をみると、平成29年4月末の65歳以上要介護(要支援)認定者数は620万人だ。65歳以上75歳未満の前期高齢者が75万人、75歳以上の後期高齢者が545万人で、後期高齢者が全体の約9割を占めている。

全高齢人口3,446万人の要介護等認定者率は18.0%だが、前期高齢者の4.3%に対して後期高齢者は7倍以上の32.1%にのぼる。要介護者等が大幅に増加する「大介護時代」の到来は、高齢者の長寿・高齢化によるところが大きいのだ。

増加する要介護者等を介護するのはだれだろう。厚生労働省『平成28年 国民生活基礎調査の概況』(平成29年6月27日)の「主な介護者」をみると「同居する家族」が58.7%を占める。同居家族の続柄は「配偶者」が25.2%、「子」が21.8、「子の配偶者」が9.7%だ。

「主な介護者」の3人に2人は女性で、男女ともに7割は60歳以上だ。「同居の主な介護者」と要介護者等の年齢別の組み合わせは、「70~79歳」の要介護者等では同年代の者による介護が半数近くになるなど、「老老介護」が広がっている。

「同居の主な介護者」の要介護度別の介護時間をみると、「要介護3」以上では「ほとんど終日」が最多となっている。「同居の主な介護者」の約7割は日常生活の悩みやストレスを抱えており、その要因は「家族の病気や介護」が7割以上と最も高く、次いで「自分の病気や介護」が3割程度だ。

「大介護時代」とは要介護者が増えると同時に、「老老介護」にあたる高齢介護者の増大が見込まれる時代でもあり、その支援がきわめて重要になるだろう。

要介護者等のいる世帯の構造をみると、「単独世帯」が28.9%、「夫婦のみ世帯」が21.9%、あわせて半数を超えている。一人暮らしの高齢者が増えるなかで、「主な介護者」として「介護事業者」の割合が増加しているものの1割強にとどまる。

今後の「大介護時代」を支える上で家族が果たす役割が大きいことに変わりはなく、中心となる担い手が自らも介護を要する可能性がある高齢者なのだ。

高齢介護者の支援には、適切な福祉用具の利活用やレスパイト(休息)ケアの充実などが欠かせない。介護保険サービスを巧く組み合わせ、介護者に過重な負担をかけないこと、孤立させないことなどが求められる。

また、介護にはケアする技術も必要だ。要介護者の身体だけでなく介護者の身体に負担や危険がおよばないためのスキルである。車いすの介助動作についても、安全な移乗や移送のための正しい方法を身につけることが重要だ。

超高齢社会の「大介護時代」を乗り越える上で、「老老介護」を支える高齢介護者が安全に安心して介護できる社会システムをつくることが必要不可欠だと思われる。

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(2017年9月12日「研究員の眼」より転載)

株式会社ニッセイ基礎研究所

社会研究部 主任研究員

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