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災害救助法は何をしてくれるのか-災害・防災、ときどき保険(2):基礎研レター

2017年05月28日 22時56分 JST | 更新 2017年05月28日 22時56分 JST

1――災害への対応を定めた法律がある

ある災害が発生した時に、国や地方自治体が、それにどう対応するかについては、現在につながるものに限っても、明治以降様々な法律が整備されてきている。

地震予知など事前の対応・防災のための研究等から、いざという時の緊急対応、その後の復旧に至るまで、それぞれの段階に対応した法律の定めがある。

具体的にそうした災害時の対応を定めている法律の全てを挙げるのは、広範囲かつ細部にわたるので難しいが、代表的なものを挙げるなら、

・南海地震(1946年)を契機としてできた「災害救助法」(1947年)

・伊勢湾台風(1959年)を契機としてできた「災害対策基本法」(1961年)、それに基づく「中央防災会議」の設置

・阪神・淡路大震災(1995年)を契機とした「被災者生活再建支援法」(1998)、自衛隊の災害派遣の法定化

が、柱となるであろう。

また、内閣府が毎年、「防災白書」によって、「防災に関してとった措置の概況」と「防災に関する計画」を国会に報告しているが、これも災害対策基本法の定めによるものである。

平成28年防災白書における方針としても、これまでの防災対応の発展には3段階のフェーズがあって、今が4段階めの検討中という位置づけとされている。

その4段階には名前が付いていて、伊勢湾台風のあとの「防災1.0」、阪神・淡路大震災のあとの「防災2.0」、東日本大震災のあとの「防災3.0」、そして現在は次の大規模災害に備える意味での「防災4.0」ということにされている。3.0まで大災害の後追いだったものが、今回は先取りしたものとなっているところに意味がありそうだ。

ちなみに、表題どおり、ときどき保険に触れさせてもらうと、

・新潟地震(1964年)を契機とした、地震保険の制度化(1966年)

がある。地震保険については、いずれ詳細に紹介したいといつも思っている のだが、本稿の段階では、国(と損害保険会社)が運営する制度であることにだけ触れておく。

まずは災害時に適用される法律の中から、災害救助法についてみてみる。

2――災害救助法

1|災害救助法の内容

災害対応関係の法律の中で、災害救助法は、比較的耳にする機会の多いものだろう。これは、先にも述べたとおり、南海地震(1946)を契機として1947年に制定された法律で

「災害に際して、国が地方公共団体、日本赤十字社その他の団体及び国民の協力の下に、応急的に、必要な救助を行い、被災者の保護と社会秩序の保全を図る」(災害救助法 第一条)

ことが目的とされている。

また救助の対象は、政令で定める程度の災害(災害の程度については、地区の人口に対する「住家が滅失した世帯数」の割合により定められている。)が発生した市町村の区域内において当該災害により被害を受け、現に救助を必要とするものに対して、都道府県知事が救助を行う、ということになっている。(同 第二条)

実際にどのような救助を行うかというと、制定時から徐々に項目が追加されてきており、

(制定時(1947年))

・避難所の供与

・炊き出しその他による食品の給与  

・被服、寝具その他生活必需品の給与又は貸与

・医療及び助産

・生業に必要な資金、器具又は資料の給与又は貸与

・学用品の給与

・埋葬

(1953年追加)

・飲料水の供給

・被災者の救出

・被災した住宅の応急修理

・避難所・収容施設に応急仮設住宅を含めることを明文化

(1959年追加)

・死体の捜索及び処理

・災害によって住居又はその周辺に運ばれた土石、竹木等で、日常生活に著しい支障を及ぼしているものの除去

となっている(同 第四条とそれに関連する災害救助法施行令)(*1)。

救助の程度、方法、期間については、都道府県知事があらかじめ定めることとされているが、適切な実施が困難な場合には、内閣総理大臣との協議・同意を得て定めることもできる。また、必要な場合には、実際の救助ではなく金銭の支給によることもできることになっている。

都道府県知事(救助の行われた都道府県、または応援を要請された都道府県)は、医療(医師、歯科医師、薬剤師、看護師など)、土木建築工事又は輸送(鉄道、自動車運送、港湾運送など)の関係者を上記救助に際し必要があれば、費用を負担して従事させることができる。(従事命令 第七条)

救助を要する者及びその近隣の者を救助に関する業務に協力させることができる。(協力命令 第八条)

さらに、病院、旅館、飲食店などを管理・使用し、物資の保管・収用を行うことができる。これもこれにかかる損失や費用は補填されることになっている。

緊急時には、金銭の負担の話は後回しにはなるが、特に大規模に人や団体を動員すると、いずれその費用は誰が負担するのかということになるので、それも条文として定められている(あとで述べるように、まだ完全なものではないようだが)。

基本的には救助の行われた都道府県が負担するのだが、各都道府県はそういうときに備えて、「災害救助基金」を税収の一定割合で積み立てておかなければならないと定められている( 同 第二十二条)。

応援を出した都道府県はかかった費用を、救助の行われた都道府県に求償できる。都道府県の税収と比較して、かかった費用が大きいときは、その程度に応じて国庫負担もできることになっている。

2|現在でも問題点を議論中

これまで災害に対応するための法整備は、大きな災害を教訓として順次行われてきた。と言えば順調に整備されてきたといえるが、逆の見方をすれば、大災害でなんらか犠牲がでて初めて行政や法整備などが動き始めるという後追いのようにもみえる。

平常時には、防災のみに関わっているわけにもいかず、国民、行政とも意識が向かなくなるのは致し方ないことだろう。

災害救助法における改正事項や救助項目の追加というものは、こうして被害の実態やその時の対応に応じて進められてきたようで、現在は、東日本大震災や熊本地震をうけて、問題点が浮き彫りになったような点も議論されている。

例えば、災害救助法の適用は、都道府県が要請するような法律の内容になっているが、実際に矢面にたって動くのは市町村レベルでないかという指摘がある。また費用の分担については、一通り法の中に規定されているものの、現場の実態に応じて、自治体間の納得感があるものなのかといった課題もある。

こうした点についても、例えば救助の種類につき、実態にあわせて追加されてきたように、今後も改正がなされていくだろう。

次回以降も、災害対策基本法などの周辺の法律を見ていく予定である。

(*1) 救助の追加項目については、「災害救助法について」 内閣府防災(被災者行政担当)も参照した。

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(2017年5月16日「基礎研レター」より転載)

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保険研究部 主任研究員

安井 義浩