「家族」というシェアリングエコノミー~「世帯」の縮小と「家族機能」の拡大:研究員の眼

人が集まり生活の一部を共有することで、経済的インセンティブが働くシェアリングエコノミーが成立する。
portrait of a happy asian family sitting on couch at home, smiling and laughing.
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Getty Images/iStockphoto

ミー「家族」とは、どのような範囲を指すのだろうか。それは配偶者、子ども、両親など戸籍や親等数で捉えられることが多いが、血縁関係に関わらず、同居し生計をともにしているかどうかで判断される場合もある。

法律に定める家族の範囲もケースバイケースだ。共通の概念として、「家族」は複数人で構成されると思っている人も多いかもしれない。

一方、「世帯」とは、「住居と生計をともにする集団」と定義されるが、なかには一人暮らしの「単独世帯」も含まれる。

国立社会保障・人口問題研究所が、2015年国勢調査を基に2040年までの『日本の世帯数の将来推計(全国推計)-2018(平成30)年推計』(平成30年1月12日)を公表した。

世帯総数は2015年の5,333万世帯から増加を続け、2023年に5,419万世帯をピークに減少に転じ、2040年には5,076万世帯になるという。2013年の前回推計では、世帯総数は2019年にピークを迎えるとしていたが、今回の推計では4年ほど先送りされる結果となっている。

その背景には、晩婚、未婚、離婚の増加や親子同居率の低下などによる世帯の小規模化傾向がある。その結果、平均世帯人員は2015年の2.33人から2040年には2.08人になる。

2015年の単独世帯数は1,842万世帯、2040年には1,994万世帯と153万世帯の増加が見込まれ、一般世帯に占める割合は34.5%から39.3%に上昇する。特に世帯主が65歳以上の世帯に限ると、単独世帯が625万世帯から896万世帯へ1.43倍になり、日本社会はますます「世帯」が縮小する時代を迎えるのだ。

世帯規模が縮小する一方、家族の範囲も小さくなるのだろうか。一人暮らしのお年寄りが集まって暮らすグループリビングや多世代が集住するシェアハウスのように、血縁関係に限らない擬似家族を形成する住まい方もある。

携帯電話やスマートフォンなどの料金体系にある「家族割引」サービスでは、適用対象となる「家族」の範囲に、一緒に暮らす家族だけでなく、遠くの親戚や同居する恋人、シェアハウスの仲間まで含めるなど、擬似的な拡大家族の扱いもみられる。

世帯が縮小し家族機能が希薄になるなかで、介護などの社会保障制度の充実が必要だ。日本以上に単独世帯の割合が高いノルウェーやデンマーク等の北欧諸国では社会福祉が手厚いが、日本のような超高齢社会では財政的に困難だ。

人が集まり生活の一部を共有することで、経済的インセンティブが働くシェアリングエコノミーが成立する。世帯が縮小する時代には拡大家族のコミュニケーションや関係性を深めることが、家族機能を活用した持続可能社会を創るひとつのヒントになるかもしれない。

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(2018年1月23日「研究員の眼」より転載)

株式会社ニッセイ基礎研究所

社会研究部 主任研究員

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