個人の海外不動産投資はもうかるのか?

いま、不動産会社や機関投資家などプロの不動産投資家が海外不動産に注目している大きな理由は、国内では少子高齢化で投資機会が長期的に減っていくのに対し、海外には人口が増加して今後も高い経済成長率が見込める、つまり投資機会の拡大が見込める国がたくさんあると考えているためです。
McKevin Shaughnessy via Getty Images

プロが海外不動産に注目する理由

いま、不動産会社や機関投資家などプロの不動産投資家が海外不動産に注目している大きな理由は、国内では少子高齢化で投資機会が長期的に減っていくのに対し、海外には人口が増加して今後も高い経済成長率が見込める、つまり投資機会の拡大が見込める国がたくさんあると考えているためです。

特に、インドネシアやフィリピン、マレーシアなどアジア新興国では、かつての日本の高度経済成長期のように、人口の増加と都市への集中が続き、住宅を中心に商業・業務施設などへの旺盛な需要によって長期の市場拡大と価格上昇が期待できるという見方です。一方、米国や英国など経済が成熟化して不動産市場が比較的安定している先進国で、大型投資を再開する不動産会社も増えています。

これら不動産のプロに共通しているのは、国内の投資や事業を核にしながら、中長期的な成長戦略として海外進出を積極化していることで、ブームに乗った安易な海外進出でない点に留意が必要です。

面倒なことが多い海外不動産

海外不動産投資では、為替リスクやカントリーリスクなど、国内投資にはない特有のリスクがあるので気をつける必要があります。

為替リスクについては、コストが高いことから為替ヘッジを行うプロは必ずしも多くないようです。アジア新興国は長期的にみれば為替が上昇する可能性が高い、つまり将来円安になるので資金回収に有利、という考えもあるのでしょう。

また、国が違えば不動産に関する法制度や税制が異なるのは当然ですが、それらがある日突然変更される国があります。せっかく投資でもうけても、外貨規制のため資金の国外持ち出しが出来ない国もあります。このため、人口が増加して高い経済成長が見込めるだけでなく、法制度も政情も安定しており、海外からの投資を積極的に受け入れている国がより望ましいといえます。

投資実務では、土地勘がないため割高な物件を取得するリスクがあります。しかし、現地の弁護士やコンサルタントなどから手厚いサポートを受けると、今度は投資費用がかさみます。

また、日本でもまったくないわけではありませんが、重大な設計・施工不良が判明して予想以上に追加費用がかかってしまうリスクもあります。このため、アジア新興国では、短期に投資回収できて長期保有のリスクをとらなくてすむ住宅建設・分譲事業への投資が目立ちます。

どこの国でも不動産は非常に個別性が強い資産ですから、日頃からビジネスの交流があって土地勘のある国や、信頼できる現地パートナーがいる国を選ぶことが望ましいでしょう。

このように、プロの世界でも海外不動産投資はハードルが高く、それほど簡単なものとはいえません。もともと日本の不動産会社や投資家は国内志向が強く、国内市場が将来も順調に成長を続けるなら、わざわざ苦労して海外に出て行く必要はありませんでした。

もちろん、積極的にフロンティアを開拓しようという企業やリスクやコストに見合った高い収益を上げられる可能性に賭ける企業もあります。いずれにしても、将来のための先行投資と割り切れる程度の体力が必要です。

これに対してプロでない個人の場合、特に国内での不動産投資の成功体験のない人が、現地もよく知らないままいきなり海外不動産に投資しても成功する確率は非常に低いとみるべきです。

海外投資家が注目しているのは日本

いわゆるアベノミクスで株価が大幅に上昇しましたが、景気の回復傾向もあって全国主要都市の地価も上昇傾向が強まっています。金融緩和で資金調達環境が大きく改善したこともあり、将来の値上がりを先取りして国内外から投資マネーが流入して不動産投資市況は活況を呈しています。

2008年のリーマンショックで日本からあらかた引き上げてしまった海外マネーが、再び日本に注目して不動産投資に力を入れ始めています。

2014年のアジア都市の不動産投資見通しランキングでは、2013年に13位だった東京が1位になり、他の調査でもクロスボーダー投資家の選好する都市の1位は東京でした。「グローバルな分散投資先として日本は絶対に外せない」と公言する外資系不動産投資顧問会社のトップもいます。

先日発表された世界の都市総合ランキングでは、東京はロンドン、ニューヨーク、パリに次いで第4位を維持しており、オリンピック開催効果で3位浮上も視野に入ると期待されています。

このように、今、海外の投資家が注目しているのは日本、特に東京の不動産なのです。それだけに、このタイミングであえて海外不動産に投資する意味やリスクをよく考えてみるべきではないでしょうか。

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株式会社ニッセイ基礎研究所

金融研究部 不動産研究部長

(2014年10月20日「研究員の眼」より転載)

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