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親と子どもの「結婚希望時期のズレ」の壁-未婚化・少子化社会データ検証:子の希望に立ちはだかる親の意識:研究員の眼

2017年03月28日 16時51分 JST | 更新 2017年03月28日 16時51分 JST

【はじめに】

前回のコラム「年の差婚」の希望と現実-未婚化・少子化社会データ検証-データが示す「年の差」希望の叶い方では、34歳までの未婚男女の約6割が2歳程度までの年の近い異性との結婚をお互いに希望しており、4歳までの年の差の希望では双方7~8割にも達する、という「お互いに近い年齢の異性との結婚希望がトレンドである」という希望実態を示した。

また、34歳までの未婚女性の約8割が同じ年齢から4歳上までの男性を結婚相手に希望していることも明らかとなった。

では、そもそも「何歳において」の年の差結婚を未婚男女はイメージ(希望)しているのか、という疑問が次に出てくる。この希望についてデータをみてゆくと、そこには意外な「意識の壁」が存在していることが明らかとなった。

子どもの結婚には少なからず親の意見が影響を及ぼしている。

なぜなら、子どもにとって両親の姿は「最も身近な結婚のロールモデル」となりやすいからである。また、国の調査(*1)では1年以内に結婚する場合の障害として「親の承諾」を挙げた未婚者が女性14.3%、男性8.5%ともなっており、結婚を決める際に親の考えがなにかしら影響している可能性は否定できないだろう。

本稿では、晩婚化がすすむ日本における「親と子どものそれぞれの結婚適齢期意識」についてデータ考察してみたい。親と子どもの結婚適齢期(希望時期)にもし乖離がある場合は、それが結婚の障害となる可能性がないとはいえないだろう。

データからは母親という立場でもある筆者にとって、少々残念な結果が現れた。親の結婚希望時期の意識の問題を、データとともに指摘してみたい。

【親はいつまでに結婚して欲しいと思っているのか】

中学生から29歳までの未婚の子どもをもつ親は、一体、子どもに何歳ぐらいで結婚して欲しいと考えているのだろうか。

調査対象者1万4000名を超える民間の大規模調査(*2)からは、母親と父親それぞれの息子・娘に対す結婚希望時期をうかがい知ることが出来る。

●娘に対する結婚希望時期は?

娘に対して父親は

1位 20代後半(までに結婚して欲しい) 47.0%

2位 30代前半 20.9%

で1位は2位の2倍以上となっている。やはり娘には男親は20代で結婚して欲しいようである。

次に、母親は

1位 20代後半 44.9%

2位 30代前半 21.3%

でやはり1位が2位の2倍以上である。娘の結婚時期の希望に関しては、母親と父親の希望は「20代後半まで」でほぼ一致しているといってよい。

●息子に対する結婚希望時期は?

息子に対して父親は

1位 20代後半(までに結婚して欲しい) 36.5%

2位 30代前半 32.9%

で、僅差であるものの、20代での結婚を多くの父親が願っているようである。

次に母親は、

1位 30代前半 36.7%

2位 20代後半 25.0%

となっており、30代に入ってからの息子の結婚希望が20代での結婚希望に10ポイント以上の大差をつけている。

父親から息子・娘とも20代の結婚希望が1位、母親から娘への20代での結婚希望が1位である中で、母親から息子への結婚希望だけが30代で結婚希望が多数派となっているところがデータ的に非常に目立つところである

【子どもはいつまでに結婚したいと思っているのか?】

親のデータで使用した同じ大規模調査によると、「いつまでに結婚したいか」15歳から29歳の未婚男女に尋ねたところ、

未婚女性 

1位 20代後半(までに結婚したい)58.1%(約6割)

2位 30代前半 21.5%

未婚男性 

1位 20代後半 46.2%(約5割)

2位 30代前半 31.6%

となっており、子どもサイドは男女とも「20代後半までに結婚したい」という20代での結婚希望回答が2位の30代前半と大差の1位であった。

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【子どもより親の方がのんびりとした結婚意識】

子どもたちの希望を結婚の実態と照合すると、厚生労働省によれば2015年の平均初婚年齢は夫31.1 歳、妻29.4 歳であるため、未婚女性の約6割の「20代後半までに」希望とは実態がぎりぎり近い数値、未婚男性の約5割の「20代後半までに」希望には実態が乖離する数値となっていることがわかる。

そして、上記の親と子どもの結婚希望時期の調査結果からは、子どもよりも親の方が結婚適齢期の感覚が遅い傾向が見て取れる(図表1)。

娘の場合、子どもの約6割が20代での結婚を希望しているのに対し、父親は約5割・母親は約4割と親の方の希望時期が子どもよりも遅い傾向にある。そして母親の方がよりのんびりと構えていることもわかる。

また息子の場合も、約5割が20代後半までに結婚したいと本人は考えているにも関わらず、父親は約4割、母親の希望は約3割となっており、息子の希望より遅い結婚を両親が希望しているようである。

こちらも母親の方がよりのんびりと結婚時期を考えており、子どもの希望との乖離幅が顕著である(図表1)。

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【母親の息子の結婚年齢の第一希望「30代前半まで」がもつリスク】

中学生から29歳までの子どもを持つ母親は、「息子の結婚は30代前半まで」希望が最も多い約4割(父親は約3割)であると民間大規模調査データからは示された。

このことは何を意味しているだろうか。

2015年に実施された最新の国勢調査結果のデータを見てみよう(図表2)。

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日本では結婚希望者が未婚男女とも約9割で推移しているにも関わらず、特に男性未婚率が急増している。今や50代前半において、女性のおよそ倍の割合の20.1%、死別も離別も経験していない男性未婚者が存在する(図表2)。

母親たちが息子に最も希望するリミット時期である「30代前半における男女の結婚状況」では、すでに女性の約6割が既婚であり、死別離別経験者も含めると約7割が結婚経験者となっている。その一方で男性は約半数が未婚のままである。

年の差婚希望のコラムで示したように、34歳までの未婚男性の約6割が2歳年下までの「同じくらいの年齢の女性と結婚したい」(4歳年下希望まで含めると約7割)と望んでいる。

息子たちは同じくらいの年齢の女性との結婚を希望しているにもかかわら ず、彼らが30代前半になってからそういった女性との結婚を希望した場合には、

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20代前半では約9割が未婚である結婚相手女性のマーケットが、20代後半では3分の2の約6割、30代前半では3分の1の約3割にまで縮小してゆくことを、息子をもつ母親たちは認識しているだろうか。

ここで、30歳を過ぎた息子が「では未婚女性が沢山いる20代女性を狙えばいいのではないか」という議論が頭に浮かぶだろう。

しかし、年の差婚希望のコラムで示したように、現在は未婚女性側も同じくらいの年の男性を希望(4歳上まで希望で約8割)しているため、この議論は「お相手の女性の気持ちを無視した一方的な息子親の期待」となるだろうことをデータは示している。

また、実際の結婚が、近年では年上夫婚が約半分にまで激減し、同年齢婚や年上妻婚が増加しているトレンドからも、トレンドと逆行した一昔前の結婚形態への期待であることが指摘出来る。

息子が、お相手が誰でもいいのではなく「希望の相手との出会い」を叶えようとするならば、結婚の時期を遅らせる、ということは母親が想像するよりもかなりシビアな状況を息子に迫ることとなる、ということを親は認識しておくべきである、といえるだろう。

【子どもの希望を叶える結婚支援にむけた、親の意識改革を】

データからは、「子どもの希望にそった」結婚の夢を叶えるためには、子どもの意識もさることながら、親の意識の改革が必要であるのではないか、という議論の可能性が浮かび上がってきた。

・その多くが20代後半で結婚したいと願いながらも、実際は30代前半の結婚となりつつある未婚男女。

・両親、とくに息子に対する母親が、子どもよりもその結婚適齢期をのんびりと捉えている。

・年々急増する日本における男性の生涯未婚率。

上記の全てのデータが示しているベクトルは、同じことを指し示し、提案しているように筆者には思えてならない。

「子どもたちの結婚希望時期と現実の結婚時期の乖離をうみだす壁」を他ならぬ私たち親が作っているようなことがないか、今一度、親としての意識・言動を見直してみることが必要なのではないだろうか。

(*1) 社会保障・人口問題研究所(2016)「第15回出生動向基本調査」

(*2) (株)明治安田生活福祉研究所・(株)きんざい(2016)「親子の関係についての意識と実態」

  親調査:全国の35~59 都市の男女(中学生~29 年の子を持つ親)

  子調査:全国の15~29 歳の未婚男女(高校生・専門学校生・大学生等・社会人)

  調査方法: WEB アンケ-ト調査(株式会社マクロミルの登録モニタ-)

  調査時期: 2016 年3 月16 日~3 月23 日

  回収数:親調査...9,715 名・子調査...5,803 名

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(2017年3月27日「研究員の眼」より転載)

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