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「結婚」と「離婚」の間で-「つながりたい」のか、「つながれたくない」のか:研究員の眼

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今年3月、NHK総合テレビのニュース番組『おはよう日本』で、「死後離婚」という聞きなれない言葉を耳にした。

配偶者が亡くなった後、結婚によってできた義理の両親やきょうだいなどの『姻族』との関係を断つことを意味する造語であり、「姻族関係終了届」を提出することで成立する。法務省の戸籍統計をみると、同届は2015年度2,783件と10年前の1.5倍にのぼり、特に近年増加が著しい。

「死後離婚」に踏み切る人の多くは、夫の死後、長く家制度のもとで強いられてきた「嫁の役割」から解放されたいと願う人のようだ。同番組では、その心情はよく理解できるとともに、家族のあり方に疑問を呈する街の声も伝えていた。

今後、平均寿命の違いから夫に先立たれて老後をひとりで過ごす女性が増え、長寿時代のあらたな家族問題としてもクローズアップされるだろう。

嫁姑問題などは永遠の課題だ。妻が死後に夫の「累代の墓」に入ることを望まず、樹木葬や共同墓に埋葬されることを願う人もいる。死後はだれにも気兼ねせずに安らかに眠りたいということだろう。

もちろん夫とは一緒に埋葬されたいと、夫婦だけの墓をつくる人もいる。「死後離婚」は墓の承継にも影響を与える。今後は墓も、家系や世帯から個人単位で考えられる時代がくるかもしれない。

先日、総合結婚情報誌「ゼクシィ」の2017年版のCMを見た。キャッチコピーは、『結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです』だ。

かつて「女性の幸せは結婚すること」と言われた時代もあったが、他にさまざまな選択肢があるなかで、『結婚したい』というメッセージは鮮烈だ。自ら選択した「つながり」には強い自己肯定感があり、主観的幸福度も高いのだろう。

夫婦より「個」を優先する生き方が広がる現代社会だが、大学生などに「夫婦別姓」について尋ねると夫婦の一体感を感じるためにも「夫婦同姓」を望む人が案外多くいる。

人は強く束縛されたくはないが、いつもだれかとつながっていたいと思っているのだろうか。結婚自体も法律婚に限定せず、事実婚や同性婚、通い婚のような多様な人間関係を受け容れる寛容な社会が求められているのかもしれない。

東日本大震災を機に親子の絆、夫婦の絆、地域の絆など、さまざまな「絆」の大切さが再認識された。「絆」には、『人と人との深いつながり』と『動物をつなぎとめる綱』という2つの意味が含まれている。

これまで日本の家族や地域には強い絆があり、互いに助けあって生きてきたが、時には互いの自由を束縛して息苦しさを覚えた人もいるだろう。ひとと「つながりたい」のか、「つながれたくない」のか、多くの人は「絆」の二面性の間で揺れ動きながら、あらたな「つながり」のバランスを探し求めている。

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(2017年5月2日「研究員の眼」より転載)
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社会研究部 主任研究員
土堤内 昭雄