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「経済力」より「生活力」-"中高年男性"暮らしの安全ネット:研究員の眼

2015年07月04日 00時38分 JST | 更新 2016年06月29日 18時12分 JST

現代社会では、就職して親元を離れた若者や身寄りのないお年寄りなど「一人暮らし」の人も多い。2010年の国勢調査では、単独世帯は全体の32.4%を占めている。

男性の生涯未婚率(50歳まで未婚の人の割合)は2割を超え、近年では中高年男性の単身者も珍しくない。婚姻期間が20年以上の熟年の離別者や配偶者に先立たれた死別者も増え、日本は本格的な「ひとり社会」を迎えているのである。

現役時代に料理などの生活に必要なスキルを身につけてこなかった中高年男性は少なくないだろう。かつて男性の多くが妻帯者だった時代には性別分業が広くみられ、夫の「生活力」の不足は妻がカバーしてきたが、「一人暮らし」が増加した今日、中高年男性にも「生活力」が求められるようになった。

また、定年退職後の中高年男性は家庭や地域に留まる時間が長くなるが、妻帯者の場合、昼間に家にいると、妻から迷惑がられる人も多いのではないだろうか。

「生活力」の乏しい夫のために、外出もままならない妻もいる。『亭主元気で留守がいい』というテレビコマーシャルがあったが、中高年男性も、自分の食事くらいは自分で作れるようにしておきたいものだ。

先日電車に乗っていると、近くにいた二人づれの中年女性の会話が耳に入ってきた。一方の女性が、『最近、スーパーで買い物する中高年男性が増えたけど、カゴの中を覗くとほとんどが飲料と惣菜で、料理の食材はほとんど入っていない』と言うのだ。続けてもう一人の女性が、『男は自分で料理しないからね。これからは自分で料理ぐらいできないと困るね』と言った。この女性たちの会話が身につまされる中高年男性も多いのではないだろうか。

このような中高年男性を支えているのが、家事代行サービスだ。以前は、共働き世帯などの需要が中心だったが、最近では「一人暮らし」の人や高齢世帯の利用も増えているようだ。

確かに、現代社会では経済のサービス化が進展した結果、日常のほとんどの生活サービスを金銭で買えるようになったが、それで果たして老後の暮らしを安心して送れるのだろうか。

多くの中高年男性にとって将来の年金受給に対する不安は増加している。資産を切り崩しながらの年金生活では、長寿になればなるほど資産不足のリスクが高まるため、できる限り日々の出費を抑えたいと考える人が多いだろう。

料理をはじめ家事全般をこなす生活スキルは、生活コストを低減し、健康の維持など生活の質(QOL)の向上にも役立つ。今後は配偶関係に関わらず、長寿時代における中高年男性の暮らしの安全ネットは、「経済力」より「生活力」ではないかと思えるのである。

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(2015年6月23日「研究員の眼」より転載)

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社会研究部 主任研究員

土堤内 昭雄