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民泊トラブルの増加と規制の動き:研究員の眼

2015年12月28日 23時43分 JST | 更新 2016年12月27日 19時12分 JST

今年の夏頃から、個人の住宅やマンションの空き部屋に有料で宿泊者を受け入れる「民泊」に関するトラブルが大きく報道されるようになっています。

高級タワーマンションを含め、マンションへの外国人など居住者以外の不特定多数の出入り、パーティーなどの騒音、乱雑なごみ出し、テロや犯罪など治安への不安、無許可民泊オーナーの送検(*1)や所得の申告漏れなどです。

すでに、一部のマンションではトラブルへの対応として、管理規約の見直しをすることで民泊を禁止する動きも出ています。こうした問題は、現在、民泊を規制する法律が存在していないことが一つの理由と思われます。

それに加え、どこにどれだけ誰が所有する民泊が存在し、誰がどれほど民泊に宿泊したかが全く分からない状況も、近隣とのトラブルや不安を招いているのでしょう。

ただ、ここにきて民泊に関する規制の方向性が固まってきたようです。

自由民主党や厚生労働省、IT総合戦略本部などの検討会で民泊の規制に関する検討が活発に進められてきましたが(*2)、それらを受けて(*3)、昨日(2015.12.21)開催された規制改革会議では、「民泊」を旅館業法の簡易宿所と位置づけて許可要件を緩和して届出制にするとともに、民泊仲介業者も許可制にして監視しオーナーや宿泊者の情報把握等の義務を課し、近隣トラブルの防止や消防・安全対策を講じさせるという意見書が提出されたようです(*4)。

これらの規制により、これまで全く分からなかった民泊の実態が把握できるようになるとともに、民泊が法律で適切に位置づけられることで、宿泊者(消費者)保護の制度が整い、防災・衛生等への対応や周辺トラブルへの対策、民泊事業者の所得把握、違法民泊業への取締りなどが大きく進むことが期待されます。

期待と不安を含めて数多く報道されてきた民泊ですが、一部では異なる「民泊」が区別されずに報道されてきたようにも感じています。これまでの報道や規制緩和の議論をみると、現在、5つの「民泊」が存在していると思われます(*5)。

それは、

(1)国家戦略特区内でのみ認められた「民泊条例」の民泊(*6)、

(2)農業漁業体験などができる農林漁業体験民宿(*7)、

(3)コンサートなどのイベント等の開催期間のみ認められる期間限定の民泊(*8)、

(4)遊休期間の別荘貸出し(*9)、

(5)インターネットのマッチングサイトを通じた民泊(*10)

の五つです。

厚生労働省によると、上記のうち、現行制度上、実施可能な「民泊」として、(1)の国家戦略特区内の民泊、(2)の農林漁業体験民宿業、(3)のイベント民泊を挙げています(*11)。

なお、現在、近隣トラブルなどで議論になっているのは、(5)のマッチングサイトを通じた民泊です。

(1)の「民泊条例」の民泊は、大阪府や大田区で条例が可決され、来年から供給が始まると考えられます。

ここでは、7~10日以上の宿泊期間や25㎡以上という面積基準、外国語での情報提供などの条件があり、条件の厳しさから、現在、マッチングサイトを通じて提供されている民泊には「民泊条例」の民泊として認可されるのは難しいものも多いのではないかといわれています。

(2)の農林漁業体験民宿は、農林漁業体験のために農林漁業者などが自宅を宿泊施設として提供できるという制度で、農村や漁村における地域振興の一端を担う施設と考えられています。この施設の提供には旅館業法の認可が必要となります。

今月、福岡市での実施が決定し、大きな話題となっているのが(3)のイベント開催時の民泊です。

これは、地域での大きなお祭りやコンサート、イベント、花火大会だけでなく、ラグビーワールドカップや東京オリンピックなど、一時的に多数の宿泊者が発生する時に、不足する宿泊施設の補完施設として役割を果たす可能性があると思われます(*12)。

(4)の遊休期間の別荘貸し出しの規制緩和は、現在、ホテルなどの立地が認められていない住宅専用地域においても、旅館業法の許可を取れば遊休期間内の別荘貸し出しを認めるという規制緩和です。今年度中に規制緩和が実施される予定となっています。

なお、民泊は増加する空き家への重要な対策の一つとなる可能性も持っていると感じています。

(4)の遊休期間の別荘貸し出しの規制緩和は、住宅専用地域における空き家対策に大きな効果を持つ可能性があるのではないかと考えてきましたが、議論が進むマッチングサイトを通じた民泊が旅館業法の簡易宿所と位置づけられるのであれば、その多くは住宅専用地域に立地していると考えられるため、(4)の遊休期間の別荘貸し出しの内容を取り込む可能性もありそうです。

これらの規制緩和は、地域の空き家や古民家などの民泊としての活用につながると思われます(*13)。

民泊が広がっている背景には、訪日外国人旅行者数のホテル需要の急拡大と日本人の国内旅行の増加に伴う、深刻なホテル不足があります。ホテルの客室料金も上昇しており、一人当たりの料金が比較的安い民泊が好まれているという点もあるでしょう。

政府では2020年の訪日外国人旅行者数の目標を2千万人から3千万人に引き上げる方針であるとの報道もなされており(*14)、今後もホテル不足は続くと考えられます。

逼迫するホテル不足とインターネットの進化により、マッチングサイトを通じた民泊は今後の日本の宿泊にとって不可欠なインフラとなりつつあり(*15)、それが民泊に対する規制緩和および規制の議論を推し進めてきたといえるでしょう。

拡大するインターネットのマッチングサイトを通じた民泊ですが、これまでのホテルや旅館に加え、民泊が日本の法律に位置づけられてしっかり管理されることで、外国人も日本人も安心して民泊に宿泊できるようになるだけでなく、民泊周辺の住民とのトラブルや不安が解消していくことが期待されます。

今後、防災や衛生、防犯、都市計画など、多くの細かい議論が進むと思われますが、単に民泊をホテル不足の補完として認めるだけでなく、日本の観光政策等の中での積極的な位置づけや意味(空き家対策を含め)をもたせつつ規制を進めることが、今後の日本の観光立国確立のために重要と感じます。

(*1)(*2)(*3)(*4)(*5)(*6)(*7)(*8)(*9)(*10)(*11)(*12)(*13)(*14)(*15)はこちら

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(2015年12月22日「研究員の眼」より転載)

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竹内 一雅