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『逃げ恥』にみる夫婦像-「有償労働」と「無償労働」を考える:研究員の眼

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ちょっと変わった題名のテレビドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(*1) (逃げ恥)が人気を集めている。10月の放送開始時には10%程度の視聴率だったが、回を重ねるごとに上昇、12月20日の最終回には20%の大台を超えた。

契約結婚する男女のラブコメディだが、晩婚化や派遣切り等さまざまな今日的課題が背景にあり、多くの視聴者には日常生活を通じた等身大の共感があるのかもしれない。

ストーリーは、高学歴だが就職先が見つからない女性「みくり」(25歳)が、経済的に自立するために独身男性「平匡」(35歳)の家事代行を始める。

ふたりは雇用主と従業員として契約結婚をするのだが、徐々に好意を抱き、本当の結婚を考えるようになる。そんな時、「平匡」は会社をリストラされることが決まるが、ふたりの関係を維持しようと「みくり」にプロポーズする。

しかし、結婚の動機を聞いた「みくり」は、『結婚すれば給料を支払う必要がなくなる』というのなら、それは「愛情の搾取」にほかならないと言う。「平匡」は、愛する人や家族のための家事や育児など無償労働が「愛情の搾取」になるとは思わない。

一方、「みくり」は経済的自立のために行ってきた家事代行という有償労働が、結婚を機に一転して無償労働化することにモヤモヤを感じるのだった。

日本社会は「男は仕事、女は家事・育児」という固定的性別分業により高度経済成長を成し遂げてきた。

しかし、社会経済環境の変化とともに共働き世帯が専業主婦世帯の1.6倍となった現在、給料を稼ぐ有償労働を男性だけが担い、その代替としてすべての無償労働を女性に押し付けるのは「愛情の搾取」になるという「みくり」の主張ももっともだろう。

「結婚は女の永久就職」という時代もあったが、企業の終身雇用が崩壊しているように、結婚も離別や死別により永久不滅ではなくなった。

人生90年時代を迎え、女性が結婚を機に専業主婦として家事・育児などの無償労働に専念することは、夫婦のいずれにも大きな人生リスクだ。

一方、第10話では、『結婚って、安全装置みたいなところあるよね。生き抜くための一つの知恵みたいな』とも語られる。

このドラマの最終回のタイトルは『夫婦を超えてゆけ』だったが、最終的にふたりが選んだ道は、家庭の共同経営責任者として、有償労働と無償労働を互いに分担しながらも、固定的な夫婦の役割に縛られない生き方を模索することだったと思う。

『逃げ恥』が現代社会に提示した幸せな夫婦像とは、互いの信頼関係と愛情をもとに、共に有償・無償労働をバランスよく担う"ワークライフハーモニー"というライフスタイルを求め続けるカップルのことではないだろうか。

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(*1) ドラマのタイトルの由来は、ハンガリーの"Szégyen a futás,de hasznos."ということわざだそうです。

(2016年12月26日「研究員の眼」より転載)
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