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大丸有(大手町、丸の内、有楽町)の国際化にみる今後のエリア包括的開発への期待:研究員の眼

2017年08月21日 23時14分 JST | 更新 2017年08月21日 23時14分 JST
Bloomberg via Getty Images
Commercial buildings, bottom, stand in the Marunouchi and Otemachi districts in this aerial photograph taken in Tokyo, Japan, on Wednesday, June 24, 2015. The Abe administration aims to cap increases in spending as it tries to rein in the world's heaviest debt load while sustaining a recovery from two decades of stagnation. Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg via Getty Images

日本生命保険は、オフィスビルを中心に日本全国に多数の不動産を保有しています。東京駅の丸の内側には多数の超高層ビルが林立していますが、丸の内北口改札から最も近い日本生命丸の内ビルが、2004年の竣工以来、日本生命の不動産ポートフォリオの顔となっています。

2014年には、丸の内物件第2号として、パレスホテル東京の隣に、日本生命丸の内ガーデンタワーが竣工し、日本生命丸の内ビルと共にポートフォリオを代表する物件になりました。

日本生命丸の内ガーデンタワーは、皇居外苑の和田倉濠を一望できる景観に恵まれ、2014年の竣工当時から三井物産株式会社の本店となっています。

地下1階から2階にはバラエティに富んだ飲食店、3階には貸し会議室のAPオフィス東京、および会員制サテライトオフィスのビジネスエアポート東京が展開していますが、その他のオフィスフロアは全て三井物産およびそのグループ企業に賃貸しています。

しかし、三井物産は近隣の大手町で自社ビルを建設しており、完成する2020年には丸の内ガーデンタワーから退去する可能性が高くなっています。また、東京では、2018年から2020年にかけて多数のオフィスビルが完成する予定であり、賃貸オフィス需給の悪化が懸念されています。

今回、ニッセイ基礎研究所では、2020年の丸の内ガーデンタワーの後継テナントをイメージするため、大手町、丸の内、有楽町(大丸有エリア)の全てのビルのオフィステナントを調査しました。

実際に確認して改めて感じたのは、金融機関や法律事務所を中心とした外資系企業の数の多さです。製造業などの国内企業の本社も多い大丸有エリアでは、2000年以前、外資系企業の存在感は現在ほど大きくありませんでした。その後のエリア包括的な再開発により、オフィステナントの顔ぶれが大きく変わったといえます。

同エリアの包括的な再開発は、ビル単体に止まらず、再開発された新築ビルに次の取り壊しビルのテナントを取り込み、順次、取り壊しと新築を繰り返す連鎖型の再開発でした。

2002年の丸の内ビルディングの竣工から始まり、その後も、新丸の内ビルディングや丸の内パークビルディングなどの超高層ビルが相次いで竣工していきました。

丸の内ビルディングは、複合ビルとして新たに竣工して以降、高級感のあるショッピング、グルメスポットとして賑わいを維持しています。また、後続の複合ビルも概して集客力が高く、ビル以外でも、景観が向上した丸の内仲通りのライトアップイベントなどが人気を集めています。

このように、丸の内エリアは、単なるオフィス街に止まらず、洗練された街並みと商業的賑わいを兼ね備えた東京の顔へと進化してきました。

こうした街並みの変化は、外資系企業をオフィスビルに誘致する面でも効果的でした。以前は、米国大使館もある赤坂、六本木エリアに外資系企業は集中していました。職住近接を好む欧米人駐在員が、周辺の外国人向け高級住宅に居住し、同エリアは欧米的な雰囲気の特別なエリアになっていました。

しかし、大丸有エリアも、再開発が進むにつれて欧米人が好む洗練された街並みに進化してきました。住宅環境をみても、近年の千代田区や湾岸エリアでのタワーマンションの増加により、東京駅勤務でも職住近接のライフスタイルが可能になってきました。

こうした街並みの変化とハイグレードビルの増加により、賃料負担力のある外資系企業が大丸有エリアに移転する条件が整ったといえます。

加えて、経済のグローバル化の影響も大きく、リーマンショックなどの景気の波に面し、日本企業と外資系企業のM&Aや提携が加速しました。それらのオフィス統合に伴い、集約移転先として新たに竣工した大丸有のハイグレードビルを選択するケースも多々みられました。

そもそも、大丸有エリアは、東京駅を中心に、都内交通はもちろん、空港へのアクセス、地方都市へのアクセスなど、交通利便性では赤坂、六本木やその他のエリアを凌駕しています。最近では、賃料負担力のある企業が新たにオフィスを設ける際、優先的に大丸有エリアを検討する状況になっています。

ところで、東京では、大規模なオフィスエリアの再開発に際し、国際金融センターを目指すというスローガンが好んで用いられます。対して、シンガポール等と比較し、東京の国際金融センター構想を冷やかに見る市場関係者は少なくありません。

実際、金融機関の多い北米企業の日本国内での従業員数をみると、リーマンショック前に比べ大きく減少しています(*1)。しかし、大丸有エリアについては、エリア包括的な再開発によって多数の外資系企業を誘致できたことは紛れもない事実です。

エリア包括的な開発では、新たな街の魅力を創出することにより、外資系企業を含む多数の企業を惹き付けることが可能になります。

東京では、2018年から2020年にかけて、多数のオフィスビルが完成する予定ですが、さらに、東京オリンピックの終了以降も、東京駅の八重洲側や、品川駅北側の新駅周辺などで、エリア包括的な大規模開発が予定されています。

東京オリンピック以降を見据えると、東京の人口もピークアウトが迫るなど、経済や不動産市場について悲観的な見方が支配的となっています。しかし、東京では、中長期的に、エリア包括的な開発による新たな街の誕生が相次ぎます。

また、リーマンショック以降、欧米企業の日本国内での従業員数は伸び悩んでいますが、アジア企業の日本進出は増え、外資系企業全体の日本国内での従業員数は増加しています。

国際金融センター構想などに対し、人口動態などから悲観的に概観することは簡単ですが、東京は新陳代謝を繰り返す形で、進化を続けています。新たな姿を見せ続けてきた東京ですが、今後も各エリアの開発動向を楽しみに見守っていきたいと思います。

(*1) 経済産業省の外資系企業動向調査によると、2016年3月の北米企業の日本国内での従業員数は、リーマンショック前の2008年3月時点と比べ-44.0%、ただし、外資系企業全体では+5.7%。

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(2017年8月1日「研究員の眼」より転載)

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株式会社ニッセイ基礎研究所

金融研究部 主任研究員

増宮 守