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傘の形状は古来より変わらず?

2014年07月04日 18時15分 JST | 更新 2014年09月02日 18時12分 JST

都市・交通インフラの整備で進むアンブレラフリー

昨年、関東地方では7月6日と早い梅雨明けになりましたが、1981年から2010年までの梅雨明けの平均は7月21日となっています。今年は、雷雨に晴天にと不規則な天気が続いていますが、はたして何日の梅雨明けとなることでしょう?

梅雨の必需品といえば傘ですが、傘の歴史を遡ると、既に古代エジプトやギリシャ時代に日傘として存在していたようです。

現在の形状に近い雨傘が作られたのは18世紀のイギリスで、ステッキにみえる持ち手を付けることで普及が進んだといわれています。日本にも、既に6世紀には百済経由で中国の日傘が伝わっていました。室町時代には油を塗った和紙を竹の骨組みに貼り付けた雨傘が作られ、江戸時代から普及しました。

現在の形状に近い雨傘の利用は、19世紀に持ち込まれた洋傘の国内生産が始まった明治時代以降です。

その後、折り畳み傘が登場し、最近では、コンパクトに折り畳めるものや、骨数が多く頑丈で軽いものなど、工夫を凝らした傘が増えています。また、ビニール傘の登場によって、傘は非常に手軽なものへと変化しました。

以前の傘はかなり高価な商品でしたが、コンビニエンスストア等で安価に入手できるビニール傘によって、使い捨て商品のように利用できるようになりました。ビニール傘は、国内の傘販売本数の過半を占めるまでに普及しており、計算上、国民1人あたりの傘保有本数は5本、6本になるともいわれています。

しかしながら、傘の形状についてみると、18世紀の洋傘から大きく変わっておらず、古来の原型を維持しているともいえるでしょう。

一方、世の中の多くのものは、大きく進化、あるいは新たに発明され、人々の生活を劇的に便利にしてきました。特に明治時代以降の鉄道や自動車の普及、戦後の白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫の3種の神器などは人々の生活を一変させました。

また、最近のデジタル化時代でも、パソコンや携帯電話、インターネットといった過去には想像もしなかった商品や概念が、年を追う毎に進化を遂げています。これらに比べると、古来の原型を保つ傘の存在は改めて不思議に感じられます。

傘の形状は変わらないものの、改めて現在の日常を振り返ると、以前に比べ雨に濡れる機会そのものが減ったという見方もできます。車社会の地方圏では、屋根付き駐車場が完備されている場合、ほとんど傘を使わない生活も可能です。

車を利用しない大都市の生活についてみても、鉄道網が発達した東京などでは、商業施設やオフィスビルが駅に直結し、雨に濡れず自由に行動できる空間が数多く存在しています。最近では、頻発するゲリラ豪雨や、紫外線、さらにはPM2.5への意識も高まっており、駅直結施設の快適さを実感する機会が増えてきました。

今後、東京で竣工する大規模ビルの多くが駅直結となる予定で、傘要らずの空間はさらに広がると期待されます。

世界をみると、古い街並みの残る欧米はもちろん、広大な敷地に超高層ビルがそびえたつアジアの大都市においても、必ずしも駅直結の地下空間などは発達していません。そのような中、東京など日本の大都市の交通利便性は世界をリードしているといえるのではないでしょうか。

さらに、最近では、住宅でも駅直結のタワーマンションなどが増えてきました。都心に限らず、戸建て住宅が多い郊外でも、交通利便性の高い駅近くのマンションが増加しています。このようなマンションの場合、都心からかなり離れた駅にあっても、ドアツードアでみた通勤時間は許容範囲に収まることがあります。

駅直結マンションの増加に伴い、近い将来、傘要らずの都市生活も珍しくなくなるかもしれません。少し先になりますが、2027年のリニア中央新幹線の開通後は、東京・名古屋間が約40分で結ばれ、その後、さらに東京・大阪間も1時間強で結ばれる予定です。その際、名古屋や大阪から都心のオフィスに通う生活も時間的には可能になります。

このように、都市・交通インフラの整備に伴い、傘要らずの都市生活はさらに広がっていく可能性があります。日常生活で雨に濡れることがなくなれば、雨は不快なものではなくなり、余裕を持って眺め、風情を楽しむ、あるいは、純粋にその恵みに感謝する対象になるのかもしれません。

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株式会社ニッセイ基礎研究所

金融研究部 准主任研究員

増宮 守

(2014年7月2日「研究員の眼」より転載)