BLOG

巷にあふれる不動産投資本、自分に合った本を選ぶために

2014年10月30日 16時40分 JST | 更新 2014年12月29日 19時12分 JST

目的は何か

不動産投資という場合、その内容は節税からマイホームの取得、理想の家づくりまで多岐にわたります。そこでまず、本を読む目的が何かをはっきりさせることが大事です。

大きく分けて、(1)純粋に投資で成功したい、(2)不動産を利用して相続税を節税したい、(3)自分の住まいを確保したい、の3つの目的になるのではないでしょうか。

まず、純粋に投資として成功を目指すなら、いきなり実物不動産ではないはずです。株式や債券、投資信託、外国為替、あるいはリート(不動産投資信託)などの金融商品と実物不動産を比べ、これらの市場特性や資産特性を理解したうえで判断すべきだと思います。

また不動産に限らず、世の中でブームと喧伝される時期には、価格が相当上がってプロは売り抜ける機会を狙っており、素人は高値づかみで失敗しがちなので慎重さが求められます。

不動産を利用して相続税を節税しようと考える人は、低・未利用地の地主や何億円もの金融資産を持つ富裕層が中心ですから、該当しない人は節税に重点を置いた本はあまり必要がないでしょう。投資や節税を考える前に、まず自分のポジション、つまり金融資産や土地の保有状況、相続の可能性などを確認することが大事です。

自分の住まいを確保したいという場合は、何が何でもマイホームではなく、買わずに賃貸居住するという判断もあります。また、マイホームは借り入れをして不動産という実物資産を取得するので投資の側面も持っていますが、よほどの一等地やブランドマンションでもない限り将来の値上がりが期待できないので、純粋な投資目的だけで考えると選択の余地が狭まってしまいます。

金融系の本からわかること

不動産が投資の世界でどのような位置づけにあるのかを理解するために、まず、証券・金融分野の著者が書いた金融系の投資本から読むことをお勧めします。

これらの本では、株式など流動性が高く市場がオープンな金融商品と比べ、実物不動産は流動性が低くて市場が不透明で、取引に関わる手数料や税金が高いといった特徴があるうえ、リスクに見合った高い利回りが期待できない、としてマイホームの取得も含めて否定的な論調が主流です。

また、利回りの考え方が、不動産業界の著者が書いた本で一般的な表面利回りと全く異なる点に注意が必要です。

金融の世界では、賃料から経費を差し引いた純収益に売却損益を合わせた収益を基に、資産価値の変動も加味した年平均ベースの利回りである総合収益率を使い、これが長期的に変動する度合いを投資のリスクとみます。リスクとリターンは対応するので、ある投資で大儲けできたとしてもその裏には必ず大きなリスクがあったはずで、続けて何度も大儲けはできないと考えます。

不動産系の本でいう表面利回りは、経費込みの年間賃料収入を購入価格で除したもので、資産価値の変動や売却損益は考慮しません。例えば、アパートは古くなれば資産価値が大幅に低下しますが、売ることは想定せずに賃料収入があればよしとして、相続時の節税効果に期待することになります。

なお、リートに対しては、金融系の本は実物不動産よりは好意的です。リートは、流動性が非常に高く、分散が効いていて、仲介手数料がかからない、小口から投資できるなどの面で実物不動産より優れているからです。

リートと実物不動産はどちらも値下がりリスクがありますが、リートは株式のように思惑や期待だけで大きく値上がりする可能性もあります。実物不動産がリートより優れているのは節税効果ですが、そもそも投資と節税は区別すべきというのが金融系の本のスタンスです。

不動産系の本からわかること

不動産系の本は、不動産投資の基礎的な知識を解説するものと、不動産投資はこうしなさいと読者に薦めるものに大きく分けられます。

前者は、不動産実務に精通した専門家が、場所の選び方、物件の選び方、情報収集の仕方、物件の買い方、ローンの借り方、維持管理の方法などを実践的に細かく解説してくれます。マイホームの買い方について書かれた本の多くも同様です。

後者では、「わずかな自己資金で大きな投資ができ、将来にわたって安定収入を得られる」として、賃貸不動産への投資を勧めるものが主流です。

金融系の本からは、借り入れを大きくすると不測の事態で資金ショートするリスクも大きくなる、賃貸住宅は供給過剰で将来も収入が安定するかどうかわからないうえ、資産価値はほぼ確実に下がるので総合収益率はマイナスになる(投資としては失敗)可能性が高い、という突っ込みが入りそうです。

不動産系の本では、投資なのか節税なのか、あるいは事業なのか目的を明確にしておかないと、適切な選択ができないおそれがあります。例えば、タイミングをみて売り買いする投資目的の人には、片手間ではとてもできない賃貸住宅事業の経営について書かれている本は合いません。長期的に取り組む賃貸住宅経営は、まさに不動産業を営むということに他ならないからです。

金融系の本では、理論中心で投資の哲学と投資のリスクが語られますが、不動産に対する特別な思い入れはありません。これに対して不動産系の本は、不動産ありきで話が始まり、不動産投資の魅力(節税も重要です)と成功例とノウハウが語られ、不動産への思い入れは十分、理論より実践ありきです。

このような特徴を踏まえたうえで、自分のポジションと目的をはっきりさせてから本を探してみましょう。最近は、インターネットで検索できますが、新聞や雑誌に書評が載るようなベストセラーでない限り、書店で現物を手にとって目次や内容、刷数や版数などを確認することが大事です。

関連レポート

個人の海外不動産投資はもうかるのか?

マンションと戸建て住宅、どちらがマイホームにお薦めか?

超高齢社会でも不動産は値上がりするのか?

株式会社ニッセイ基礎研究所

金融研究部 不動産研究部長

松村 徹

(2014年10月27「研究員の眼」より転載)