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ロボット介護機器の「重点分野」が改訂され6分野13項目に:基礎研レター

経済産業省の「ロボット介護機器開発・導入促進事業」は2015年度より、AMEDに委託し実施されている。

2017年11月18日 17時00分 JST | 更新 2017年11月18日 17時00分 JST

1――日本の介護ロボット開発を先導する「ロボット技術の介護利用における重点分野」

10月12日に「ロボット技術の介護利用における重点分野」の第2回目となる改訂内容が、厚生労働省と経済産業省より同時公表された。この公表内容を以下で示し、簡略な解説の後、考察する。

1|今回の改訂で1分野5項目が追加され合計6分野13項目に

両省より公表された資料(「別添」)より「今後の開発等の重点分野」の内容を抜粋する(図表-1)。

ニッセイ基礎研究所

本稿の「重点分野」とは、第1章の冒頭にある「ロボット技術の介護利用における重点分野」を指している。なお、経済産業省の事業では「重点分野」の開発支援機器を「ロボット介護機器」、厚生労働省ではこの「ロボット介護機器」を含めて介護分野のロボット等を幅広に捉え「介護ロボット」と呼んでいる。

さて、「重点分野」とは両省の協議により策定・改訂された開発ターゲットを示すものであり、分野・項目ごとに開発対象の機器が定義(*1)され、公募により複数の開発補助(助成)事業が採択される。

2012年11月に「重点分野」が初めて策定(4分野5項目)され、2014年2月に第1回目の改訂(1分野3項目を追加)が、そして今回の2017年10月の第2回目の改訂(1分野5項目を追加)によって、「重点分野」は合計で6分野13項目(図表-1参照)へと開発支援範囲が拡大されてきた。

また、両省による機器開発等の支援事業は、2013年度から国の成長戦略に「ロボット介護機器開発5カ年計画(以降、5カ年計画)」として組込まれ、現在までに開発補助(助成)を受けたロボット介護機器(介護ロボット)が多数登場している。

そして、2017年度の成長戦略である「未来投資戦略2017」において介護や介護ロボット開発について「自立支援等による利用者の生活の質の維持・向上」と「介護者の負担軽減」の両方を同時に「実現」する方針が打ち出されている。

2017年度は前述の「5カ年計画」の最終年度に当たり、今回の「重点分野」の改訂は「未来投資戦略2017」の方針を踏まえた次期計画に向けた取組の一つであり、追加された1分野5項目の内容は開発の優先度が高い。

特に今回の改訂では、「健康寿命の延伸」に向けた「自立支援」介護への取組が強く意識されており、厚生労働省で様々な検討が開始されている。

2|追加された1分野5項目について

次に追加された分野・項目を確認する。図表-1の中で従来の内容に「1分野5項目」が追加され、その1分野とは「(6)介護業務支援」であり、5項目とは図表-1内に「●」で示された内容である。

この追加された分野・項目には、厚生労働省の事業「平成28年度 介護ロボットのニーズ・シーズ連携協調協議会」における検討結果も反映されている。

初めに「分野」に着目すると追加及び新規追加が計2カ所ある。

その一つ目は「(4)見守り・コミュニケーション」分野であるが、「コミュニケーション」というワードが従来の「見守り」に追加されている。これに対応する「項目」として「●高齢者とのコミュニケーションにロボット技術を用いた生活支援機器」が新たに追加された。

この背景には、2016年度に国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が実施した「介護分野におけるコミュニケーションロボットの活用に関する大規模実証試験」(*2)によって、高齢者等の日常生活における活動をコミュニケーションロボットの発話や対話などでサポートし促進する有効性が示唆されたことがあろう。

二つ目は上述した図表内の「(6)介護業務支援」の新設である。

その内容は、ロボット介護機器の活用により得られた、様々な介護業務に伴う情報を収集・蓄積し、それを基に、提供された介護サービス内容の共有やその情報を介護記録システムやケアプラン作成システム等に連動可能とすることも目指されている。このケアプラン作成システムなどは、AI等の活用も示唆されていよう。

残る3つの新項目は以下のとおりである。

一つ目は「(2)移動支援」の最下段の項目であるが、その内容は高齢者の外出支援をサポートする装着型の移動支援機器となっている。一つのイメージとしては、高齢者の両下肢の外側にロボット技術を活用した(外骨格型)機器を装着し転倒予防の警報に注意しつつ歩行するシーンがあろう。

残る2項目は共に「(3)排泄支援」分野での新項目となっている。

その一つは排泄予測機器である。この機器は排尿又は排便のタイミングを、ウェアラブルの小型センサー等で使用者の生体情報を検知、予測してトイレへ誘導する機器であり既に実用化している機器もある。排泄介助の最適化に向けて予測精度の高い機器開発などが目標となろう。

残る1項目はロボット技術を用いてトイレ内での下衣の着脱等の排泄の一連の動作の支援機器となっている。そもそも排泄介助は介護者にとって負担が重いだけでなく、対象の被介護者自身にとっても可能な限り自身で行なう意向が強い行為でもある。

なお、経済産業省の「ロボット介護機器開発・導入促進事業」は2015年度より、前述のAMEDに委託し実施されている。

今回の「重点分野」の改訂を受けて「平成29年度 ロボット介護機器開発・導入促進事業(開発補助事業)」に係る公募事業が公表(10月13日公表、締切11月13日)されている。研究期間は最長1年とされ、内容は2つある。

その一つは今回追加された1分野5項目の介護現場のニーズに基づいた機器開発のフィージビリティスタディ・試作開発であり、残る一つは既存の5分野8項目の介護現場のニーズに基づいたロボット介護機器の改良開発である。

2――「重点分野」の策定・改訂の意義と今後

ロボット介護機器(介護ロボット)の「重点分野」の策定・改訂は、国が継続的に行なっていかなくてはならないテーマであると筆者は思っている。

介護ロボットは様々な対象者に対して、人と介護ロボットが協働しつつ最適な役割分担で質の高い介護サービスの提供を目指す機器であり、予想以上に数多くの安全性確保や機能、使い易さに配慮した開発が求められる機器である。と同時に、超高齢社会において生じる様々な介護の社会的課題の改善や解決を目指すものである。

したがって単に介助支援を目指す特定の機器開発に止まらず、介護分野で幅広く多種多様の支援機器開発を戦略的に推進していく必要性が高い。

また、高齢化が進行する海外諸国においても、社会保障費の最適化や企業の新規事業分野の創出を目指し、日本の開発動向を注視する国は少なくない。

この点においても迅速で効果的な開発を推進する上で「重点分野」による開発分野の特定と項目の拡大による各種機器の開発推進は重要な意義があると考える。また、中長期にわたる継続的な開発における技術革新の進展にも期待したい。

今後、AMEDが実施予定の、2018年度からの経済産業省の新たな3ヵ年の開発支援事業(平成30年度の概算要求時点の事業名は「ロボット介護機器開発・標準化事業」)の今後の公表を待ちたい。

同時に厚生労働省による2018年度の「介護分野における生産性向上」を目指した「介護ロボット開発等加速化事業」等や「自立支援・重度化防止に向けた科学的介護の実現にかかる取組の推進」の事業成果にも期待したい。

さらに「未来投資戦略2017」の「具体的施策」に「ロボット・センサー等の技術を活用した介護の質・生産性の向上」という項目があり、その本文内に記載されている「介護報酬や人員・設備基準の見直し等の制度上の対応」についての効果実証結果を踏まえた検討動向をも注視したい。中長期的な介護ロボット等の社会実装に向けて、現在は重要な時期を迎えている。


(*1) 6分野13項目の「重点分野」の定義については、経済産業省製造産業局産業機械課「ロボット介護機器開発・導入促進事業(開発補助事業) 基本計画」(平成29年10月)の中の「別紙(P10~22)」に13項目別に複数の定義(開発要件)が記載されている。
(*2) この事業は経済産業省がAMEDに委託(2015年度より)し実施されている「ロボット介護機器開発・導入促進事業」の一つである「基準策定・評価事業」において「ロボット介護機器開発に関する調査」としてとして実施された規模の大きな「実証試験」を指す。

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(2017年11月1日「基礎研レター」より転載)
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社会研究部 准主任研究員
青山 正治