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商業施設の二極化とSNSの活用による収益性の追求:研究員の眼

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外国人旅行者の増加を背景に、街中で外国人中心の行列を見かけることが増えてきた。例えば、都内で人気の牛かつ店の前には韓国人の行列が絶えることがない。

インスタグラムなどのSNS上でインフルエンサー(*1)の投稿が人気を集めたようで、日本人にはやや意外なブームとなっている。

このような行列店の多くは、大通りから外れた裏通りなどにあり、事前に調べた顧客やリピーターでないと気が付かないケースも多い。もっとも、行列ができると通行人の目に止まり、飛び込み客の取り込みにも成功しているようだ。

このように、個性のある商品を扱う飲食店などでは、SNSを利用した情報発信などにより、立地、物件を問わず集客に成功する例は多い。

もっとも、SNSが普及する以前も、マスメディアの紹介によって裏通りのラーメン屋に行列ができ、住宅街の隠れ家的なレストランが予約で満席になることはあった。

しかし、SNSが普及した現在、各店舗の自発的なアピールが可能となり、積極的なPRや集客の余地が大きく広がったといえる。

一方、従来の店舗経営のセオリーでは、立地、物件の選択が非常に重要である。同じエリアでも、表通りと裏通りでは競争力に格差があり、また、同じ通りでも、人気の区画とその隣の区画では全く集客力が異なることも多い。

商業施設については、住宅やオフィスなどの他の不動産に比べ、とりわけ物件、立地の個別性が強いといえる。

さらに最近では、商業施設間の競争が激化し、勝ち組商業モールと他の苦戦する物件との間で二極化が進んでいる。

多くの地方中核都市では、JRの主要駅に併設する商業モールに人気が集中する一方、従来の中心商店街の地位が相対的に低下しており、また、郊外では、大手商業モールの独壇場ともいえる状況が一般化している。

これらの商業モールには、大手のファストファッションブランドや、飲食チェーンなどが出店し、全国的にどこでも同じような店舗を利用できるようになりつつある。

主に利便性が重視され、一か所で多くの需要を満たしたい消費者と大手事業者の需給が一致した結果だろう。

都心では、さらに利便性を追求する動きがみられ、東京駅などのターミナル駅で改札口の中に展開する駅ナカ商業モールが人気となっている。

駅ナカは、消費活動のために移動時間を必要としない究極的に利便性に優れた立地といえるだろう。

不動産投資家は、商業施設を特に専門的な運用能力を要する投資対象として認識してきた。

商業施設については、物件、立地の個別性の強さから賃料相場の把握が難しく、さらに最近は、利便性の追求により、勝ち組の物件、立地に人気が集中する二極化が進展している。

一方で、商業施設はテナント誘致の戦略や共用スペース、サインボードの有効活用といった運用能力が、物件の価値を大きく左右するオペレーショナルアセットでもある。

上記のように、SNSなどの活用による集客の成功例も増えており、そのようなテナントを確保あるいは育成できれば、競争力に劣る物件、立地であっても収益性の追求が可能といえる。

マイナス金利下で不動産投資利回りが低下している現在も運用努力によってアップサイドを見込める商業施設は、新たなチャレンジを厭わない投資家にとって引き続き魅力的な投資対象といえるだろう。

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(*1) SNS上で多数のフォロワーを有するユーザーの呼称。ライフスタイル提案、マーケティング等の面で影響力を高めつつある。

(2016年12月12日「研究員の眼」より転載)
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金融研究部 主任研究員
増宮 守