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豊洲市場がヒルズ化?ダイナミックに変貌する都心東側のソフト戦略に注目:研究員の眼

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豊洲市場の移転問題が世間の注目を集める中、「豊洲市場のヒルズ化」という報道記事がみられました。

超高層マンションや大規模商業施設の開発を前提に豊洲市場を売却するという築地残留・豊洲売却案についての記事でしたが、「ヒルズ」という言葉から大規模複合施設に生まれ変わる豊洲市場の姿を自然にイメージできた方も多いのではないでしょうか。

しかし、改めて考えると、湾岸エリアの豊洲の開発計画について、丘を表す「ヒルズ」という言葉が使用されることは不思議なものです。丘の上や海外の高級住宅街に由来する「ヒルズ」ですが、今では、六本木ヒルズをはじめとする大規模複合施設を想起させるものとなっています。

不動産の物件名称としての「ヒルズ」は、1986年に森ビルの開発によって竣工した大規模複合施設のアークヒルズや、同時期に大手不動産会社など4社の共同開発によって竣工した大規模マンション群の広尾ガーデンヒルズが始まりでした。

画期的な都心複合施設として注目を集めたアークヒルズは、当時の流行語大賞にもノミネートされ、「ヒルズ」が不動産の物件名称として広く認識されるようになりました。

森ビルでは、その後も六本木ヒルズなどの多数の大規模複合施設の名称に「ヒルズ」を使用してきました。不動産は商標登録の指定商品の対象ではないため、他の多くの企業も丘に立地するマンションなどに「ヒルズ」の名称を用いていますが、森ビルの「ヒルズシリーズ」のブランド認知は際立っています。

2014年に竣工した虎ノ門ヒルズのように、平地の施設にも「ヒルズ」の名称が使用され、海外でも、上海の黄浦江沿岸の平地に開発した超高層オフィスビル(*1)が上海ヒルズと呼ばれています。

今回、「豊洲市場のヒルズ化」の記事で改めて気付かされたように、「ヒルズシリーズ」は立地や地形を問わず展開できるまでに認知されています。

本来、不動産は、最重要の立地に加え、物件の形状、機能といった個別性が非常に大きいため、グルーピングしてブランド化することが難しい商品と考えられます。しかし、近年、駅直結の超高層オフィスビルや職住近接のライフスタイルに対応した都心のタワーマンションといった好立地のハイグレード物件が増加しています。

ハード面の差別化は難しくなってきており、「ヒルズシリーズ」のようなブランド価値の向上や特色あるサービスの提供といったソフト面の重要性が一層高まっています。

豊洲市場が実際に売却、再開発に向かうか、今後の東京都の決定が注目されます。しかし、東京では、その他にも不動産開発が目白押しです。

日本橋や東京駅の周辺、さらには虎ノ門、浜松町、田町、新駅を含む品川駅の周辺など、中長期的にオフィスビルを中心とする大規模な複合開発が続いていきます。また、豊洲市場の周辺でも、東京五輪の選手村が建設される晴海などで大規模開発が予定されています。

山手線西側でも、渋谷駅周辺の大規模開発や池袋駅周辺の複数の開発などが注目を集めていますが、総じて今後の大規模開発は、上記のように山手線東側から湾岸エリアに集中しています。

これらの東京都心の東側では、山手線内側の中心部に比べ、ブランド価値の向上余地が大きいエリアも多く、ダイナミックな変貌が期待できます。

今後、東京都心の東側で続く不動産開発では、戦略的な新しい街づくりなどにおいて各社のソフト面での競争が注目されます。

(*1) 上海環球金融中心、浦東の小陸家嘴に立地する上海を代表するランドマークビル、2008年竣工、高さ492m。

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(2017年5月1日「研究員の眼」より転載)
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増宮 守