【はじめに】
平成27年(2015年)国勢調査の結果をもとに都道府県別の男女別生涯未婚率(50歳時点で1度も結婚経験がない人の割合)が発表された。
未婚率は前回の2010年の国勢調査結果からさらに男女とも上昇した。まずは、生涯未婚率が高い10エリアと低い10エリアを参考までに示してみたい(図表1)。
ただランキングを眺めただけでは、各自治体の全国における位置づけをみることには便利であるものの、それが一体何を意味しているのかについては漠然とした理解にしかならない。
このため、次に、男女別に一体何人に1人が50歳になるまで結婚経験がない(以下、未婚)エリアとなっているのかを、検証してみたい。
【男性は全てのエリアで6人に1人以上が未婚者】
図表2からは、ランキングで見るよりもいかに男性が未婚化しているかが見えてくる。しかも、女性の未婚化と異なり未婚化の度合いに分散(ちらばり)が少なく、全エリアで6人に1人以上が未婚であるという結果が示されている。
日本は、国の調査では男女とも約9割が「いずれ結婚するつもり」(*1)の社会である。
その希望が50歳までに叶っているエリアとは、上記の国の調査から男性の85.7%、女性の89.3%にいずれ結婚する意志があるとするならば、あくまでも全体として見てではあるが、未婚率が男性14.3%未満、女性10.7%未満であれば、50歳までに結婚希望がほぼ叶うエリアである、といえる。
そのような視点で図表1をみると、あくまでも全国レベルでの希望と各エリアでの現実との差異の比較ではあるものの(*2)、
であり、
「男性の結婚希望とその現実が割合的にマッチングするエリアはない」「女性の結婚希望とその現実がマッチングするエリアは中部地方を中心としたわずか7エリアのみ」という、男性にとっては全エリアにおいて、女性においてもほとんどのエリアにおいて結婚希望への対策が必要とされていることがデータ的に見て取れる。
【エリアの未婚化がもつ2つのリスク】
未婚化には「結婚希望が叶わない」という個人的なリスク以外に、社会的にはどんなリスクがあるだろうか。以下、大きく2つに分けることができるだろう。
1つ目は、日本の場合は婚外子比率が非常に低いために、未婚化はそのまま少子化につながる。少子化に伴う人口問題、すなわちそのエリアから人口がいなくなり自治体が存続不能となる「消滅可能性都市問題」(*3)である。
2つ目、これが未婚化の議論においては非常に机上にのぼりにくいのであるが、単独世帯(総務省統計局による定義:世帯人員が1人の世帯)リスクである(*4)。
この単独世帯リスクについては、未婚化について様々な立場の方と議論する中でも、先方から筆者にこのリスクについて質問されることがまずない状態である。
単独世帯は最新の国勢調査結果でも、前回調査と同様に3割を超えている(図表3)。
単独世帯は、1人世帯主が心身の病気を患って誰も気がつかない、倒れていたり亡くなっていたりしいても気がつかない、本人が就業不能・介護等になっても支える人がいない、すなわち、その家で何か問題が起こっていても周囲に気づかれにくい(気づくのに遅れる)という社会不安リスクが、単独ではない世帯のそれに比べて高くなってしまう。
未婚化は、少子化によって多くの自治体が消滅する可能性が高まるだけではなく、生き残った自治体においても「単独世帯リスクの上昇」という社会不安の上昇可能性を孕んでいることを、今回の調査は改めて示す形となった。
そのあり方は何であれ、1人より2人、2人より3人、「ともに支えあう人がその世帯にいる社会作り」が急務となっているのではないだろうか。
(*1) 社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」:男性85.7%・女性89.3%
(*2) ただし、未婚者が結婚相手を求めてエリア間を移動することもあると考えると、エリアにおける未婚率を全国レベルで見た結婚希望割合にマッチングする程度に引き下げることは非常に意味があると考える。
(*3) 2014年5月 「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務大臣)が分析結果を発表。
(*4) 単独世帯増加のリスクの詳細については、「単身世帯の増加と求められる対応 ~高齢単身者の現実」みずほ銀行産業調査部「みずほ産業調査」2016No.1等を参考にされたい。
関連レポート
(2017年5月1日「研究員の眼」より転載)
株式会社ニッセイ基礎研究所
生活研究部 研究員