未婚率は本当に上昇していないのか?:研究員の眼

依然として予断を許さない。
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Yongyuan Dai via Getty Images

拙稿(2016)では、国勢調査の結果を用いた未婚率の推移の比較から、2010年から2015年にかけて20代の未婚率および生涯未婚率は上昇しているものの30代の一部では低下するなど、未婚化・晩婚化といった流れに歯止めがかかりつつあるように見受けられることを指摘した(*1)。

一方で、人口動態統計から婚姻の状況についてみると、平均初婚年齢は依然として上昇傾向にあり、2010年から2015年にかけては男女とも0.6歳の上昇となっていることから、少なくとも晩婚化の進行は続いているようである(図表1)。

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果たして未婚率は本当に上昇していないのだろうか。

国勢調査から配偶関係別の構成比をみると、2010年から2015年にかけて男女とも「未婚」、「有配偶」が減少し、「死別」や「離別」が増加しているものの、配偶関係「不詳」は「死別」、「離別」以上に増加している様がみてとれる(図表2)。

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同様に、年齢階級別の構成比をみると、男女とも「年少人口(15歳未満)」および「生産年齢人口(15~64歳)」が減少し、「高齢者(65~74歳、75歳以上)」が増加する中、年齢「不詳」も僅かながら増加していることがわかる(図表3)。

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そこで、2010年および2015年の国勢調査を用いて、性・年齢階級別、配偶関係別、世帯類型別の人口統計より、年齢階級、配偶関係、世帯類型について「不詳」をそれぞれの構成比にあわせて按分し、推定未婚率を算出(*2)した。

その結果、全国の2015年の未婚率についてみると、15歳以上人口全体では男性で33.5%と、「不詳」按分前に比べ2.6pt高く、女性でも24.2%と1.5pt高くなっている(図表4)。

同様の手順で不詳を按分した2010年の未婚率は、それぞれ32.9%、23.8%となっていることから、この5年間では未婚率は低下しておらず、むしろ男女とも僅かながら上昇する結果となっている。

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2015年の未婚率について年齢階級別にみると、不詳を除く結果では男性の30~34歳では44.7%と半数を下回っていたものが、不詳按分後には50.3%と半数を超えており、生涯未婚率は22.8%が不詳按分後には25.0%と、4人に1人が未婚という結果となっている(*3)。

また、女性でも不詳を除く結果では30~34歳で33.6%であったものが、不詳按分後には37.2%となっており、生涯未婚率は15.1%と6~7人に1人が未婚という結果となっている。

このように、国勢調査における年齢階級や配偶関係、世帯類型の不詳を按分したことにより、不詳を除く按分前の結果に比べ、男女とも30代以下の若年層を中心に未婚率が上昇する結果となっている。

また、同様に不詳を按分した2010年の結果との対比では、前述の通り按分前には未婚率の低下がみられていた30代の一部においても2015年にかけて未婚率が高まる結果となっていた。

不詳按分後の結果が必ずしも真の未婚の状況を表しているとは限らないものの、こうした結果は、この5年の間にも未婚率は上昇を続けていた可能性があることを示している。未婚化・晩婚化の進展については、依然として予断を許さない状況にあるといえるだろう。

(*1) 井上智紀(2016)「未婚化・晩婚化はどこまで進む?-国勢調査からみる未婚率の状況」『研究員の眼』2016年8月16日

(*2) 総務省統計局が公表している「国勢調査」の未婚率では、年齢、配偶関係の「不詳」を按分しているものの世帯類型の「不詳」は考慮されていない。しかし、年齢、配偶関係がともに「不詳」となっている者の大半が世帯類型では単独世帯である上、50代以下の単独世帯では過半が未婚であることを鑑みれば、総務省統計局における公表値は過小推計となっている可能性があるものと考えられる。(実際に、本稿における推定未婚率は総務省統計局の公表値に対し最大で3ポイント差となっている)。

(*3) 過去から一貫して最も未婚率が高い東京都について同様の手順により推定未婚率を計算すると、15歳以上人口における未婚率は男性が41.5%、女性が32.7%(不詳を除く按分前は33.3%、27.6%)、生涯未婚率は男性が30.6%、女性が22.4%(同24.0%、18.4%)に達することになる。

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(2017年12月4日「研究員の眼」より転載)

株式会社ニッセイ基礎研究所

生活研究部 シニアマーケティングリサーチャー

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