増加する空家~放置される50兆円の資産

増加する空家日本にある住宅の13.5%には普段誰も住んでおらず、空家は2013年には820万戸にも上る(総務省統計局「2013年住宅・土地統計調査」)。日本人が金持ちになって、別荘や残業で遅くなった時に寝泊まりするためのセカンドハウスを持つようになったということも多少は寄与しているが、こうした二次的住宅は40万戸程度で、空家の5%を占めるに過ぎない。820万戸のほとんどは、借り手が見つからない賃貸用住宅や、使うあてのない文字通りの空家だ。

増加する空家

日本にある住宅の13.5%には普段誰も住んでおらず、空家は2013年には820万戸にも上る(総務省統計局「2013年住宅・土地統計調査」)。

日本人が金持ちになって、別荘や残業で遅くなった時に寝泊まりするためのセカンドハウスを持つようになったということも多少は寄与しているが、こうした二次的住宅は40万戸程度で、空家の5%を占めるに過ぎない。

820万戸のほとんどは、借り手が見つからない賃貸用住宅や、使うあてのない文字通りの空家だ。

別荘が多い長野県や山梨県の空家率が高いのは不思議ではないが、大都市でも大阪市の空家率が全国平均を大きく上回る17.2%もあるのは驚きだ。

全国的に見れば、大都市の空家率は低く地方の空家率は高いという傾向がある。沖縄県の空家率が10.4%と全国平均を大きく下回っているのは、おそらく人口増加が続いていることが大きな要因だろう。宮城県の空家率は9.4%と東日本大震災の復興が未だ道半ばであることを示唆している。

放置される50兆円の資産

地域的な差は大きいものの、全国的に見れば日本の住宅は戸数で見る限りはかなりの余剰がある。1958年には日本の住宅数は1793万戸で総世帯数1865世帯を下回っていた。しかし、2013年には住宅数は6063万戸にのぼり、世帯数の5246万世帯を大きく上回っている。

2008年をピークに日本の人口は長期的な減少が予想されているが、高齢の単身世帯の増加によって世帯規模が小さくなるために世帯数の増加はしばらく続く。それでも世帯数は2019年をピークに減少に転じると見られている。

それぞれの住宅の面積や設備の面で住宅投資の必要性は無くならないものの、単純に住宅数を増やすという意味は無くなっている。

空家が13%以上にも上るということは、日本の住宅資産価値340兆円程度(国民経済計算年報2012年末)から考えて50兆円弱の資産が使われることなく放置されていることになる。多額の費用をかけて苦労して作ったにも関わらず、結局膨大な資産が無駄になっているわけだ。

効率的な整備がより重要に

人口高齢化がさらに進めば、新たな社会資本の整備をする余力は低下していき、地域の住民への行政サービスの提供もより困難になっていくのは確実だ。少ない資金をより有効に使って、様々な資産を整備したり、サービスを提供したりすることに知恵を使わねばならない。

道路や橋、学校や病院などの社会資本は貴重な資産だが、維持や更新に相応の費用をかけなくては使い続けることができない。長年にわたって社会資本の整備を行ってきた結果、今保有している資産を維持していくための費用も大きなものになっている。

人々が地域にどのように住んでいても、全ての住民にくまなく十分な医療や介護などのサービスを提供できるというわけにはいかない。より効率的に多くの住民に行政サービスを提供するために、それぞれの地域で人々はどのように住まうのかというプランが必要だ。

日本は社会資本や民間資本などのストックの整備を進めてきたが、将来の利用を見越して無駄が生まれないように、また維持可能性も含めて計画的な整備により力を入れるべきである。

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株式会社ニッセイ基礎研究所

専務理事

(2014年7月31日「エコノミストの眼」より転載)

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