女性の活躍状況、ネットで就活生も見られるように~女性活躍推進法のデータベース公開:研究員の眼

女性活躍推進法では、14項目のなかから、最低限1項目以上の公表が求められています。

女性活躍推進のための一般事業主行動計画の策定・届出・従業員への周知・公表、女性の職業選択に資する情報の定期的な公表が企業に義務づけられる(*1)女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)の施行(2016年4月1日)まで、既に1ヶ月を切った。

2016年2月末には、情報公開のための「女性の活躍推進企業データベース」(厚生労働省)が開設され、女性活躍推進法に定められた、女性活躍推進優良企業(*2)に対する認定マークの愛称も「えるぼし」(*3)に決定された。

一般事業主行動計画は、自社の女性活躍の状況を把握・分析したうえでの策定が求められているので、少なくとも一般事業主行動計画が「義務」化されている従業員数301人以上の企業においては既に粛々と準備が進められており、なかには完了している企業もあると推測される。

一方、同じく従業員数301人以上の企業に対して義務化された、女性の職業選択に資する情報の定期的な公表については、同業他社の状況を睨みながらまだ態度を決めかねている企業も少なくないのではないだろうか。

女性活躍推進法では、以下の14項目のなかから、最低限1項目以上の公表が求められている。

<採用>

・採用した労働者に占める女性労働者の割合(雇用管理区分別)

・男女別の採用における競争倍率(雇用管理区分別)

・労働者に占める女性労働者の割合(雇用管理区分別、派遣労働者を含む)

<継続就業・働き方改革>

・男女の平均継続勤続年数の差異

・10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合

・男女別の育児休業取得率(雇用管理区分別)

・労働者の一月当たりの平均残業時間

・労働者の一月当たりの平均残業時間(雇用管理区分別、派遣労働者を含む)

・有給休暇取得率

<評価・登用>

・係長級にある者に占める女性労働者の割合

・管理職に占める女性労働者の割合

・役員に占める女性の割合

<再チャレンジ(多様なキャリアコース)>

・男女別の職種又は雇用形態の転換実績(雇用管理区分別、派遣労働者雇入れ実績を含む)

・男女別の再雇用又は中途採用の実績

上述のとおり、法律上の義務は最低限1項目以上だが、1項目しか公表しないか、積極的に何項目も公表するかといった企業の姿勢によって、学生や求職者等の企業に対する印象は変わってくると予想される。

今年の就職活動が解禁され(*4)、採用情報の公開が始まった3月1日直前の2月末に、各企業の情報公開の状況や内容を横並びで比較できる「女性の活躍推進企業データベース」が開設されたことも重要な意味を持つ。

このデータベースにおいては、女性活躍推進法であげられている14項目等について、公開の状況や内容が業種別に一望でき、企業名、企業規模、所在地でも検索できるようになっている。

このように女性の活躍に関する情報公開の状況や内容が「見える化」され、横並びで比較されることで、今年の就職活動において、学生等の情報収集活動がより活発化してくる可能性があり、企業としても、情報公開に対する学生の反応がより気にかかるようになるだろう。

現時点で「女性の活躍推進企業データベース」にアクセスすると、開設されたばかりなのでまだ空白が目立つが、このデータベースが、内閣府の 「女性の活躍『見える化』サイト」と統合して作成された経緯があることから、内閣府の「女性の活躍『見える化』サイト」に掲載されていた情報もそのまま引き継がれ、既に情報が掲載されている企業もみられる。

女性活躍推進法の認定制度において、認定を取得するための条件として、クリアした認定基準の実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表することが盛り込まれていることから、少なくとも認定企業については、確実に情報公開の動きが出てくる。

女性活躍推進法の認定制度については、次世代法の認定制度と異なり、一般事業主行動計画の実施や目標達成が認定要件に入っていないことから、施行早々に認定される企業が出てくる可能性が高い。

認定企業等で情報公開の動きが活発化するほど、学生等の反応という形で、非公開の企業に対する情報公開圧力は高まっていくだろう。

そう考えると、備考欄(定義以外の数値を掲載した場合の数値の定義、その他注記の記入)や自由記述欄(自主的に掲載したい項目等の記入)も上手に活用しながら、公開できる情報はなるべく早い段階で公開するほうが、企業にとって得策ではないだろうか。

関連レポート

(参考URL)

厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」

「女性の活躍推進企業データベース」リーフレット:厚生労働省

認定制度に関する解説パンフレット:厚生労働省「『女性の職業生活における活躍の推進に関する法律』に基づく認定を取得しましょう!」

(*1) 従業員(常時雇用する労働者)数301人以上の企業は義務、300人以下の企業は努力義務。

(*2) 一般事業主行動計画の策定、策定した旨の届出を行った事業主のうち、女性の活躍推進に関する取組の実施状況等が優良な事業主が、申請により認定を受けることができる。

(*3) 厚生労働省のプレス発表資料「女性活躍推進法認定マークの愛称が決定しました『えるぼし』」(2016年2月29日)によると、「L」がデザインされた円の上に星が輝くデザインにふさわしく、様々な企業や社会の中で活躍し、星のように輝く女性への「エール」と、輝く女性が増えていくようにとの願いを込めて作成されたものだという。

(*4) 2017年3月卒業・修了予定の学生等の就職活動については、経団連加盟企業を中心に、2016年3月1日に採用情報の公開が解禁され、6月1日から選考がスタートする。

(2016年3月11日「研究員の眼」より転載)

株式会社ニッセイ基礎研究所

生活研究部 主任研究員

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