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「生きるための仕事」か「仕事のために生きる」のか――浦島花子が見た日本

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Ming Thein via Getty Images
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人は「生きるために仕事をする」のか「仕事のために生きる」のか。

満員の通勤電車に乗ることが増えた最近、行き交う人たちの疲れた顔を眺めては、そんなことを思ってしまう。

今の日本社会には、労働者の権利というコンセプトが欠けている。労働者権利の認識が多くの人々に根付いていれば、ブラック企業を許す社会ではないはずだ。

21世紀にもなって「残業代ゼロ政策」を打ち出すことで、国の首相自らが、人権に対する意識の薄さを堂々と知らしめたのには驚かされた。こんなにも一生懸命働いている国民に対して、どうやったらあんな失礼なことが言えるのだろうか。

いや、もともと日本の政治で権力を握りやすい人たちは、安倍総理をはじめ、経産相を降りた小渕氏も、その後釜の宮沢氏も、元権力者の子孫たちなのだから、あくせく働く雇われ者たちの気持ちがわからないのも当然かもしれない。

日本も北朝鮮とあまり変わらない。私が人生の半分を過ごしたアメリカだって同じである。権力者が世襲制である国はどこも同じだ。彼らにとって労働者は、自分の私腹を肥やすために使い捨てするものなのだ。

残念ながら、そんな腹黒い人たちにはお金がある。アメリカでは、プロパガンダをニュースとして流すテレビ局は、そんな人たちが運営している。彼らは自分で考えることを忘れてしまった人たちに間違った情報を流し、自分と反対の位置にいる人たちに対する攻撃を、自分の手を汚さずに行う。その資金源の多くは、そのまた昔に使い捨てされた人々の労苦によって積まれたものだ。

日本でも、お上の言うことには自分を無にして忠実であることを教え込む教育により、人に自分らしく生きる権利を忘れさせる以前に、自分の権利すら知らない人々を生み出してきたのではないだろうか。

権力者が使い捨てできるロボット作りがせっせと行なわれてきたからこそ、過労死が起こっても、自死の選択をする人が年間3万人いても、引きこもりが10万人いても、DV被害で無戸籍者が増えようとも、虐待により親から離れた生活を強いられている子どもが何万いようとも、なんら問題ないかのごとく、社会が回っているように見える。

どれだけの人々がこの社会の中で犠牲になっているだろう。どれだけの生産力をこの国はすでに失い、これからも社会で機能できない人々が増え続けるのだろうか。

人には心がある。先日、東京都人権啓発センター主催のコンサートに行かせていただいた。谷川俊太郎氏自ら詩を朗読し、その横で彼の詩に曲をつけて歌う沢知恵氏の歌声を聴きながら、人の心に目を向ける人たちの優しさが、私の心にも響いてやまなかった。

ケニー・Gを思わせるスムーズジャズ調で谷川氏の「朝のリレー」を歌う沢氏が、谷川ワールドと私を再会させてくれた。子どもの頃出会った、時にチンプンカンプンに見えた谷川氏の作品は、今思えば自分で考える力を養ってくれていたのだと思う。

悲観的になりがちな浦島花子も、先日のひと時だけは、素直に彼らの心の歌に引き込まれていた。心の底から暖かくなり、感動で涙するのは何年ぶりだっただろうか。人はロボットではない。心がある。

電車の中で爆睡する人を見ては、日本の治安の良さを思うと同時に、家でしっかり睡眠がとれないものかとも思う。多くの人が激務の中で、夜遅くまで働いている。多くの子どもたちも、保育園や学童で、または誰もいない家で、パパやママの帰りを待っている。

そんな悪循環をやめれば、本来の心が戻ってくるかもしれない。少なくとも、家族や大切な人と過ごす時間を増やして個人の質的生活水準を上げることにより、何のために生きるのかがはっきり見えてくるのではないだろうか。

何のために生きるのかが見えてきたら、お金のためだけにしている仕事であっても、モチベーションアップに繋がると共に、組織の生産力アップにも繋がるはずだ。もしかして、組織から飛び出して独立する勇気だって湧いてくるかもしれない。

「生きるために仕事をする」のか「仕事のために生きる」のかは、当然、それぞれの意識の違いだけれど、はっきり言えることは、雇われている人は組織の奴隷ではないということだ。

多くの企業は社会貢献のための助成金を設けている。その助成金を自社の社員の働き方改善のために使えないものかと思う。それが、今日本で最も必要とされる社会貢献ではないだろうか。そして、自分の会社で働く人たちのWell Being(健康や幸福)を守ることによって、どれだけの利益が上がるのか、実験してみることも悪くないだろう。

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