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迷走する安全保障関連法案の国会答弁、「出口」の扉を閉めるには

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時事通信社
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2014年7月1日の安倍内閣の「閣議決定」は、長年にわたって政府が維持してきた「集団的自衛権の行使は出来ない」という見解を180度転換するものでした。その具体化に向けた安全保障関連法案の審議が、いよいよ国会で始まったのは先週のことでした。実質的な審議が始まる前に『戦後70年、「最重量」の安保11法案審議、「強行採決」は状況次第か』を書いておきました。

「まだ法案審議は始まったばかりなのに、強行採決なんて先走った言い方じゃないか」という意見も出そうですが、かつてから永田町では、重要法案の審議が始まる前から与党側で「出口」が語られることが、むしろ「常識」になってきたと言っていいかもしれません。

「80時間、最大でも100時間で十分だろう」
「100時間だと衆院通過は6月下旬になるか」

こんなささやきが与党内から漏れてくる。集団的自衛権を行使できるようにすることを柱とする安全保障関連法案の、衆院採決までの審議時間の話だ。法案の国会審議が始まったのは、今月26日だが、そのはるか前から「出口」の駆け引きが行なわれている。

審議の中身ではなく時間で「議論は尽くされた」と採決に持ち込まれるのは、今に始まったことではない。国会の伝統的手法と言ってもいい。ベテランの議員は与党議員の役割を「天ぷら屋」と例えることがある。一定の時間がたてば採決に持ち込んで法律を「あげる(揚げる)」のが仕事、という意味だ。

(2015年5月21日東京新聞夕刊・「議事堂」か「表決堂」か・政治部長金井辰樹)

「法案を揚げる」とは、かつて何度となく直接耳にした言葉だし、重要法案の行方を「揚げる」と「天ぷら」を結びつけて語った経験もあります。「審議の内容ではなく時間で」という法則によって法案審議を見るなら、11法案の天ぷらは順調に「質疑終局」に向けてベルトコンベアーに乗って時を刻んでいます。

ただし、常に政府・与党の描く「予定通り」というわけにはいきません。唯一のブレーキは「世論」です。「国民の理解」と消極的であれ「承認」があまりにも低ければ、政権は求心力を失います。法案を通すことが出来ても、引きかえに失うものが大きすぎると判断すれば、緊急停止もありえるのです。「世論」は国会審議をどう見ているのでしょうか。

共同通信社が30、31両日に実施した全国電話世論調査によると、集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案への安倍政権の姿勢に関し「十分に説明しているとは思わない」との回答が81.4%に上った。「十分に説明」は14.2%だった。

法案成立後、自衛隊が戦争に巻き込まれるリスクが「高くなる」は68.0%で、「変わらない」26・1%、「低くなる」2・6%を上回った。安倍晋三首相はリスク増を認めていないが、国民の根強い懸念を裏付けた形だ。
(2015年5月31日共同通信)

安全保障関連法案には、いくつもの「事態」がひしめきあっています。

朝日新聞の「『事態』混然 重なる範囲 もたつく答弁』(2015年5月29日)によれば、そのまま放置すれば日本への武力攻撃につながりかねない「重要影響事態」、日本と密接な関係にある他国が武力攻撃され、日本の存立が脅かされるような明白な危険のある「存立危機事態」、武力攻撃はされていないが、事態が切迫し、攻撃が予想される「武力攻撃予測事態」、武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められる「武力攻撃切迫事態」等、定義はそれぞれ重なり明確になっていません。

たとえば「明白な危険」という共通の表現を盛り込んでいる「存立危機事態」と「武力攻撃切迫事態」はどのように違うのか。それぞれの「明白な危険」に違いがあるのかを質したのが、5月28日の民主党の辻元清美議員でした。

中谷元防衛大臣は、「言葉の通り、いずれも『明白な危険』かどうかで判断するという意味で、同じような内容でないかと思う」と答弁しています。しかし、どちらの「事態」と認定するかで、決定的な違いが出てきます。「存立危機事態」では集団的自衛権を行使することによって自衛隊による武力行使も想定しうるのに対して、「武力攻撃切迫事態」では、実際の武力攻撃が行なわれていないので武力行使は出来ないという違いです。

これだけ聞いていると、仮定の抽象論に終始しているように感じる人もいるでしょうが、法律の「定義」はそもそも抽象的なものです。とりわけ、今回の安保法制関連11法案では、戦後70年かけてつくりあげてきた平和国家の根底にかかわる「自衛隊による武力行使」の可否の判断基準があいまいであっていいはずがありません。

国会答弁がきわめて重要なのは、具体的に軍事的緊張が高まった時に、政府の判断を左右するからです。そして、安保法制関連法案の序盤の質疑で、多くの人に強い印象を残したあの「場面」がやってきます。

「安倍首相 ヤジとばす まわりくどい...答弁が波紋」

首相のやじは5月28日午後、民主の辻元清美議員に発せられた。防衛相への質問なのに挙手して立ち上がった首相を、辻元氏は「総理、落ち着いて。どっしりしてください」と制止。議場に笑いが起きた。その15分後。辻元氏の発言が3分あまり続き、3メートルほどの距離で正面に座った首相が叫んだ。

「早く質問しろよ!」

野党の反発で騒然とし、審議は中断した。
(2015年6月1日毎日新聞)

私もこの場面の国会中継を見ていて、唖然としました。安倍総理は、今回の法案を国会に提出している内閣の最高責任者であり、安全保障関連法案が想定するいくつもの「事態」を判断する責任者でもあります。自衛隊員や国民の生命を左右するような極めて重い判断をしようとする責任者が、「早く質問しろよ」とヤジをとばす光景は尋常ではありません。

あらためて、問いたいと思います。今回の安保法制関連法案の「強行採決」はありえるのでしょうか。

先週の記事でも紹介しましたが、日本経済新聞のインタビューで、自民党の佐藤勉国会対策委員長は、「国対は党が通した法案を成立させるのが仕事だ。国対メンバーには法案の内容なんて知らなくていいと言っている。通すことに突き進めばいい」と語っています。「法案の内容は知らなくてもいい」と自民党の国会対策委員長があけすけにインタビューで語るのも非常識ですが、「強行採決するかどうかは状況次第」とも付け加えています。

まもなく、70年目の夏がやってきます。国会での議論が世論に伝わり、そして国民の声が国会での議論に反映されて、「今回の法案で強行採決はきわめて困難だ」と判断する状況をつくれるかどうかが大きな分岐点となります。

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