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「大阪都構想・住民投票」を世田谷から見つめると

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時事通信社
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「大阪市を解体し、5つの特別区を設置する」ことをめぐり、5月17日に住民投票が予定されています。二期目の世田谷区長選挙を終えた私に対しても、この「大阪都構想・住民投票」をめぐり、関西のメディアからいくつか取材が重なりました。大阪都構想が、東京都と特別区の関係をモデルとしてつくられたと言われている以上は、都内最大の特別区である世田谷区を預かる立場から、特別区制度の置かれている現状について、しっかり伝えていく必要があると思っています。

関東にいると、大阪都構想の詳細な部分はあまり伝わってきません。大阪都構想には変遷があり、現在の焦点となっている住民投票は、冒頭に書いたように大阪府(880万人)の中で、大阪市(270万人)のみを対象として、「政令指定都市である大阪市から5つの特別区」に移行することを問うものです。東京の特別区(907万人)は、東京都(1335万人)の約7割をしめているのに対して、大阪市の人口規模は、大阪府全体の約3割という点にも留意したいと思います。

東京都は、戦時下の1943年(昭和18年)に、東京府と東京市を廃止して出来ました。東京市はなくなり、特別区が生まれてから70数年になります。区部は都に対して、粘り強く自治権拡充の運動を重ねてきました。1952年(昭和27年)には区は都の内部団体とされ、区長公選も廃止されています。区長公選を再実施するまでには、1975年(昭和50年)まで待たなければなりませんでした。特別区の自治は、長い運動の歴史によってつくりあげられ、まだ途上にあります。

世田谷区は人口88万人と、7つの県(佐賀・島根・鳥取・徳島・高知・福井・山梨)を上まわる人口規模を持っていますが、首長の権限は一般の市町村長以下と聞くと、まさかと思う人も多いかもしれません。まず、税収が限られています。法人住民税、固定資産税(個人・法人)等は、都が徴収します。その55%が区に配分される「財政調整制度」で運営されています。(今回、大阪で5つの特別区をつくった場合には、配分率を77%にするとしています) 財源を握っている都の立場は強くなり、配分を受ける区は「さじ加減」に財政上の大きな影響を受けます。

今年、30年がかりの再開発が完成して、二子玉川に楽天本社が移転してきますが、都が法人住民税を受け、区には直接の税収はありません。間接的には、住民増で税収があがる等のメリットと、ただでさえ足りない保育需要が上昇する等の仕事を抱えることになります。

一方で地方分権の流れで、都市計画決定権限が市町村に移行しましたが、「特別区」だけはまちづくりに重要な「用途地域」等を決める権限が除外されています。例えば、文化・芸術のインフラとして、ライブハウスや小劇場がつらなるまちづくりを誘導しようとしても、「用途地域」の変更なしには進められないのが現状です。ソウルでは、テハンノ(大学路)には小劇場が密集していますが、小劇場を持つビルオーナーに対して、固定資産税の減免を行なっています。世田谷区には、その権限はなく、固定資産税の減免という切り札を区の政策で使うことは出来ません。

世田谷区独自の取り組みとして、出産直後の母子をケアする産後ケアセンター(桜新町)があります。全国的な反響を呼び、国の成長戦略のモデル事業とまで紹介されながら、区内で第2、第3の設置をすることが出来ません。これも、建築基準法で用途地域が制限されていることが、大きな理由です。区民の需要が高く、内外の評判が良くても、桜新町が準工業地域だったことで例外的に立地可能になったことを知る人は多くありません。人口88万都市に、まちづくりの骨格となる用途地域等の決定権限がないことは、大きな制約を生んでいます。

大阪市には現在24カ所の行政区があります。住民投票では、これを5つの特別区に統合し大阪市を廃止するとしています。人口規模は、34万人から69万人で人口270万人の大阪市よりは身近かな行政になると説明されています。24カ所の行政区で行なっている事務は、住民の利便性のために存続するともしていますが、この点がもっとも気になります。

世田谷区は5つの総合支所を持っています。人口規模15万人から20万人を基準にして5つの総合支所を置いています。世田谷・北沢・玉川・砧・烏山総合支所です。区役所本庁舎に出向かなくても、区民生活上の必要な窓口業務や手続きが出来るようになっています。さらに、区内27カ所に出張所まちづくりセンターをを運営しています。

今回の区長選挙で強調したのは、区内の分権・自治をより深く進めていくことでした。選挙チラシには「区民に身近な行政へ。全27地区の出張所・まちづくりセンターの機能を強化し、「参加と協働」の地区行政の拠点とします。本庁から総合支所に身近かで必要な予算・権限を移します」としています。

4年前に区長に就任した時に、27の出張所・まちづくりセンターで「車座集会」を開催しました。まずは、住民の関心が高く、区に求めていることを受けとめるためでした。関心が高かったのは、「災害対策」「高齢化時代の福祉」「子育て支援・教育」の三大テーマでした。

そこで、災害対策では、27カ所で住民参加の防災塾を開催し続行中です。住民自身が作成する地区防災計画を目標に今後の積み上げを予定しています。すでに、「地域包括ケア」の世田谷モデルの展開をめざして、出張所・まちづくりセンターに「身近かな福祉の相談の窓口づくり」を来年度までに準備しています。子育て支援は、フィンランドのネウボラを参考にした「妊娠から就学まで、ひとつながりの育児支援」の検討会を開催し、制度設計を始めます。

関西メディアのインタビューで、「何を基準に住民投票を行なうべきか」と質問がありました。私は、「身近なコミュニティに隣接する現状の区役所で、災害時の危機管理体制がどうなるのか。日常の災害対策をきめ細かく進めることが出来るのか。福祉や子育て支援の住民サービスが向上するのか、後退するのかを見極めることが必要」と答えました。

ただし、判断材料が乏しいのも事実です。政令指定都市である大阪市を解体し、大阪府が5つの特別区の上位に来るような構図の改革には、広域の大プロジェクトを推進する一元化した体制をつくることに力点があるように感じます。これまで、政令指定都市の住民自らが「市の解体」に賛同したことはありません。大阪都構想でも、従前は政令指定都市の堺市を含めた大阪府全域の話でしたが、堺市が離脱したことで大阪市のみの住民投票となりました。

神奈川県には、横浜市、川崎市、相模原市と3つの政令指定都市が存在します。たとえは、横浜市を解体して、神奈川県の特別区にするという議論はあまり聞いたことがありません。むしろ、横浜市は政令指定都市からさらに自治権を確立した特別自治市を提唱しています。

「大都市としての役割を果たすため、現在の指定都市制度を見直し、国が担うべき事務を除くすべての地方事務を大都市が一元的に担う制度」という構想には注目できます。

二重行政を解消するのなら、大阪市が独立性を強め、24カ所の行政区の住民自治を強化するという道もあるはずです。こうした議論をするには時間がなくて、もうまにあわないのが現状なら、拙速に決めるべきではないと思います。今回の住民投票を世田谷区から注目して見ています。

(参考)2014年2月5日「大阪都構想の欠陥-東京23区の現実