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「LGBT当事者の声」から見えてきた「生きづらさ」を解消するための支援政策

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Pichi Chuang / Reuters
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世田谷区では、2015年11月から同性カップルが「パートナーシップ宣誓書」を提出したことに対し、「宣誓書受領証」を発行しています。12月9日の定例記者会見で、この1年の歩みをふり返り、また世田谷区が独自に調査したふたつのアンケートの内容を発表しました。ひとつは、新制度の成果と課題が明らかになり、もうひとつは「2人に1人」が自殺を考えたことがあるという厳しい実態が浮き彫りになりました。

世田谷区:同性カップル宣誓40件 制度開始13カ月で(2016年12月10日・毎日新聞)

世田谷区が宣誓書を提出した同性カップルを「結婚に相当する関係」と認め受領証を発行する「パートナーシップの宣誓」は、昨年11月の制度開始から約13カ月間で40件に上った。保坂展人区長が9日の記者会見で明らかにした。保坂区長は宣誓者らへのアンケート調査結果も公表し「制度は相当な効果があった。当事者の声も聞き政策に反映させていきたい」と述べた。

世田谷区の「パートナーシップ宣誓書」と「宣誓書受領証」の取り組みは、 同時に始まった渋谷区の条例にもとづく「パートナーシップ証明書」の取り組みとは異なり、「宣誓書を受領した証明書」というかたちを取っています。2016年11月のスタート時点では、どのような社会的効果が生じるのかについて疑問の声もありました。結果は、どうだったでしょうか。

渋谷区と同時スタートだったこともあって、世田谷区の取り組みもあわせて、大きく報道されました。不動産業界団体も、医療関係団体も、携帯電話各社にも制度の趣旨を説明してまわり、波紋は予想以上に広がったと感じています。13カ月で40組80人が「宣誓書受領証」を受け取ったわけですが、いま当事者が感じていることを、区のアンケートに書き込んでもらいました。

この調査は、「世田谷区パートナーシップ宣誓の取組みに関するアンケート」で、2016年9月1日から20日にかけて実施しました。 この時点で「宣誓受領証」を受け取った37組・74枚を配付して、29枚を回収しています。(回答は世田谷区HPに掲載しています)

1 パートナーシップ宣誓をしようと思ったのはなぜですか?
「日常の中に、多くのLGBTカップルがいて、普通に生活をしているという認知が広まってほしい」
「パートナーとこれからも一緒に生きていくことを誓う証として。また節目としてもいいと思った」
「公の証明として認めてもらいたかった」

2 パートナーシップ宣誓の前と後で、何か変化はありましたか?
「職場で同僚に、家族や友人達(セクシャリティ問わず)に祝福された」
「生命保険金等の受け取りを法定相続人からパートナーに変更出来た」
「宣誓を機に、会社にカミングアウトした。特に人事上の制度はないが、周囲に受け入れてもらえた」

3 パートナーシップ宣誓をしたことでよかったことはどんなことですか?
「区が行ったことにより、「LGBT」や「同性婚」という言葉が、一般的に浸透したように感じる」
「パートナーシップ宣誓の事を踏まえて自分たちのことを説明すると、伝わりやすく、伝えやすくなった」
「二人の関係(存在)を公的な立場の人に伝え、認知された。存在が認められて安心感を得られた」

4 同性カップルであることが理由で生活上、困っていることはありますか?
「賃貸物件を借りにくい、家を買う時に共有財産として認めてもらえない。保険の受取人になれない」
「相手が外国人の為、配偶者ビザが出ないのが不安」
「仕事場でのカミングアウトが出来ない。企業にもLGBTの理解を求めたい」

5 今後、区の施策・サービスとしてどんなことがあったらいいと思いますか?
「区営住宅に入居したい。同性カップルを理由に、賃貸を断られた。不動産業界への啓蒙活動強化」
「区民への周知にもっと力を入れてほしい。正しい理解と、病院や学校等での差別をなくしてほしい」
「学校での人権教育や図書館にLGBTの本を増やし、若い世代が相談をできる場を作ってほしい。
「同性カップルも対象のDV相談窓口やシェルターをつくってほしい」
「男女のパートナーと違う不当な扱いを受けた場合、正式なパートナーシップである事を伝えてほしい」
「渋谷区と同様、条例として正式に定めてほしい」
「住民票の写しの発行などでも、配偶者と同様に取り扱うべきだと思う」
「世田谷区から転出する際に、転出証明に加えてパートナーシップ宣誓証明を発行してほしい」
「LGBTを受け入れる医療機関を世田谷区のウェブサイトで紹介してほしい」
「子どもがほしい同性カップルの支援をしてほしい」

6 パートナーシップ宣誓受領証をどんなことに利用しましたか?
「受領証を個人が特定できないようにして、SNSで周知した」
「知人、友人へのカミングアウト。世田谷区から転出した際、転入先役所で見せて理解を得た」
「利用していない」(同様意見他に23件)

7 (何かに利用された方に伺います)相手方の反応はいかがでしたか?
「ポジティブな意見のコメントが多数あった。ネガティブな意見は全くなかった」
「会社には好意的に受け入れてもらえた。人事部に今後の社内規定改善に繋げたいと言われた」

8 パートナーシップ宣誓は今後どうあるべきだと思いますか?
「渋谷区のような足を踏み入れづらいものではなく、実際に世にいるLGBTファミリー・パートナーたちの存在と数を知ってもらうためには、世田谷区の制度は、いい落とし所だと思った。今のままでよい」
「これが全都道府県にいきわたり、そこから、渋谷区のような形が増え、婚姻につながればと思う」
「結婚と同等の内容まで保障されてほしい。宣誓制度を更に進化させて法的なものにしてほしい」
「病院での家族扱い、不動産(賃貸)などで、もっと区として公にサポートしてほしい」
「いつでも宣誓したい時に宣誓できると嬉しい」
「宣誓書のコピー等を渡したり、使用したくないので、携帯出来るものがあるといい。携帯版には、世田谷区の担当部署の連絡先を入れてもらい、相手先の確認等が出来るとありがたい」

9 パートナーシップ宣誓の取組みの信頼性向上のために、必要と思われることはどんなことですか?(例;独身証明書、戸籍抄本等の提出)
「『宣誓』という形であれば、住所確認のみで良い。手続きが多くなれば、宣誓者が減少してしまう」 「普通の結婚と同じ書類の提出。また、戸籍抄本の提出が求められると信憑性があがると思う」
「男女の婚姻と同じように、サインをすればいいと思う。承認欄を作り、承認者(二人が書いてほしい人)にサインをもらう。または家族の誰かにサインをもらうなど」

10 その他、区に対する要望、質問事項等がありましたら、記入してください。(省略→こちらに掲載)

世田谷区で「パートナーシップ宣誓」をして「宣誓受領証」を受け取った人たちの声の一部を紹介しました。周囲からの理解と祝福を受けた、公的に認められたことで安心感につながったという声がある一方で、区営住宅をはじめ、賃貸住宅の入居時のハードルがあることや、企業の理解が進んでいない点、異性間の婚姻同等の制度的保証を望む声がありました。

パートナーシップ宣誓書を受け取り、宣誓受領証を発行する取り組みを始めた区として、さらに改善できる点を洗い出しながら、実行していきたいと考えています。調査はもうひとつあり、全国のLGBT当事者を対象としたWebアンケートの結果も発表しました。

LGBT進まぬ理解 「自殺を考えた」5割 世田谷区アンケート (東京新聞2016年12月11日)

全国のLGBT(性的少数者)約1000人を対象に世田谷区が実施したアンケートで、当事者の多くが自殺を考えたり、実際に自殺を図ったりしていたことが明らかになった。区は昨年11月から同性パートナーを公認する証明書を発行しているが、周囲の理解が進んでいない実態が浮き彫りになった。区は調査結果を踏まえ、一層の支援体制を整える考えだ。 (神野光伸)

アンケートは、LGBTをサポートするNPO法人「ReBit(りびっと)」(新宿区)に委託し、8月22日~9月11日にインターネットで実施。965人から有効回答を得た。

いずれも複数回答で、「LGBTとして経験したこと」という質問では、「自殺したいと思った」が最多の49.7%を記録。「自殺未遂」(18.9%)、「性暴力被害」(10.4%)と続いた。

渋谷区や三重県伊賀市など世田谷と同様の動きは全国に広がりつつあるが、「生活する上で困ったこと」との問いで、「地域住民の無理解」が35.5%を占め、次は「地域に相談できる場所がない」(34.6%)。「同性パートナーと暮らす上で困ったこと」との質問では、「医療や福祉で法律上の家族と同等のサービスが受けられない」との答えが30.6%あった。

この調査は「性的マイノリティ支援のための暮らしと意識に関する実態調査」(世田谷区28年9月世田谷区生活文化部人権・男女共同参画課) です。2016年8月22日から9月11日までの間に、インターネットで「性的マイノリティ当事者」に実施したもので、965人(居住地は東京都内450人・東京都外515人)の有効回答を得ました。行政機関の行った当事者を対象とした1000人規模の調査は、これまでに例のないものです。 報告書全文はこちら

新聞記事にあるように、私にとって衝撃的だったのは、「あなたが経験したことのあるものを教えて下さい」という質問に対して、「自殺したいと思った」(49・7%) 「自殺未遂」(18・9%)という数値です。複数回答可としていますが、約半数が「自殺したい」と考え、そのうち4割近い人たちが「自殺未遂」を経験しているという数値でした。これはアンケート回答者全体の平均値ですが、クロス集計すると「トランスジェンダー」の人たちは、「自殺したい」(66・7%) 「自殺未遂」(30・1%)とはねあがります。

「子どもの頃に困ったこと」についての設問では、「ジェンダー・セクシャリティに関する正しい情報の不足」(66・6%)をトップに、「保護者からの無理解」(35・9%)「教職員の無理解」(32・1%)、「学校でのいじめ・暴力」(25%)と続いています。「学校でのいじめ・暴力」についてのクロス集計では、「レズビアン・ゲイ」(32・5%)「トランスジェンダー」(28・7%)と続いています。

この1000人アンケートについては、また機会を改めて詳述したいと思います。性的マイノリティの当事者の声から伝わってくるのは、子どもの時代に孤立し苦しんだ経験がある人が多く、当事者に届く支援や理解が乏しかったという現実です。さらに分析を進めて、課題を受けとめ、改善の方策を示していきたいと思います。

今後、ふたつのアンケート調査から見えてきたLGBT当事者の「生きづらさ」を解消する支援政策を組み立て、実行していきたいと思います。

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