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「消費税まやかし還付」と「安保法制の強行」は同質同根

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ABE ASO
KAZUHIRO NOGI via Getty Images
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安保関連法制の参議院採決が近づいています。この4カ月あまり、国会審議を通して見えてきたのは、政府が説明を加えるほどに脱線・迷走し、前言撤回と変更を繰り返している姿です。

昨年7月、「集団的自衛権行使の憲法解釈変更」の閣議決定の直後、安倍首相がイラストをバックに「日本人の母子が乗った米艦を日本の自衛隊が守る」と意義をにじませた説明も、国会のやりとりで崩れました。8月26日の参議院特別委員会でのやりとりで中谷防衛大臣は正直に答えました。

安倍晋三首相らが再三強調してきた邦人輸送中の米艦防護について、中谷元・防衛相は「邦人が乗っているかは絶対的なものではない」と述べ、邦人保護が行使の理由にならないことを認めた。(2015年8月26日朝日新聞)

もうひとつの例示、「ホルムズ海峡での機雷掃海」については、衆議院の審議の段階で「念頭にあるのはホルムズ海峡での機雷封鎖だけ」と繰り返してきましたが、9月14日に公明党の山口代表の質問に対して、安倍首相自身が事実上撤回しています。

安倍晋三首相は十四日の安全保障関連法案に関する参院特別委員会で、中東・ホルムズ海峡での戦時の機雷掃海について「現在の国際情勢に照らせば、現実の問題として発生することを具体的に想定しているものではない」と述べた。国会審議で繰り返し取り上げてきた集団的自衛権行使の代表例を、自ら否定したことになる。

公明党の山口那津男代表が、ホルムズ海峡のシーレーン(海上交通路)はイランとの対話で確保するべきだと質問したのに対する答弁。首相は、イランが海峡を機雷封鎖する可能性がないことを認めた。(2015年9月15日東京新聞)

法案を提出した政府が当初に「立法事実」とした、安保関連法制の制定が必要と主張する代表的事例がくつがえったならば、一度廃案にして出直すべきです。そもそも、昨年7月の閣議決定で「集団的自衛権が行使できる」としたことが憲法違反なのであり、土台が腐っているということを圧倒的多数の憲法学者だけではなく、内閣法制局長官経験者や最高裁判所長官経験者も指摘しています。合憲の根拠として「砂川判決」を引き合いに出していた高村正彦自民党副総裁も、これ以上の詭弁を弄することができずに、この点では沈黙しています。

9月に入っても、安保法制をめぐる世論は軟化するどころか厳しいままです。

安倍政権が今国会で成立させる方針の安全保障関連法案は、「賛成」29%、「反対」54%だった。与党は17日を軸に法案成立をめざすが、いまの国会で成立させる必要が「ある」は20%、「ない」は68%。国会での議論は「尽くされた」11%に対し、「尽くされていない」は75%に上った。(2015年9月14日朝日新聞)

どうして、安保関連法制は世論の理解が得られないのでしょうか。

この4カ月間の国会でのやりとりで、「この安保関連法制は憲法違反であり、国会のやりとりを聞けば聞くほどに不安が高まる」という「理解」が広がってきたとも言えると思います。

これまでの審議の中からは、明らかになった自衛隊内部の文書などが示すように、「専守防衛」の枠を超えて、米軍の要望のもとに自衛隊を海外に「派遣」ではなく「派兵」できるようにするという法案の狙いが見えてきます。

8月30日、国会周辺は「安保法制反対」の声で埋まりました。今、連日のように国会をとりまく人々の数は、7月よりもさらに多くなり、高校生から高齢者まで年齢も幅広い多様な人たちが組織動員ではなく、個人の意志で参加しています。

一方、自民党総裁選では「無投票」で安倍晋三氏が当選しました。「女性活躍」と言いながら、自民党総裁選で人事処遇をちらつかせながら、よってたかって野田聖子さんの立候補を力づくで封印する姿は、みっともないものでした。「安保法制の採決環境に影響するから」という理由で総裁選をスルーした安倍首相は、このままだとさらに「3年間の任期」を得て、長期政権を築く可能性も手にしました。

「アベ政治」の長期化は国民にとっては受難であり、けっして国民生活を豊かにするものではありません。ついにこの国会を通過した改正労働者派遣法は、派遣労働者の不安定な身分をいっそう固定化し、正社員化の道筋をつけていません。この国会では見送られたものの「アベ政治」のメニューとなっている「残業代ゼロ」法案について、私は次のように書きました。

「残業代ゼロ」は少子化に拍車

人口減少と少子化の進行は、「非正規雇用による格差社会」と「ブラック企業の増加と長時間労働の常態化」に原因がある、と私は考えています。したがって、出産や子育てがしやすい社会にするためには、「格差解消」と「人権を尊重される労働条件の回復」を徹底する以外にありません。しかし、これから始まる国会で審議される「労働者派遣法」改正は、すでに2千万人を数える非正規雇用を拡大して、格差をさらに広げていくことにつながる懸念があります。(「太陽のまちから」2015年1月20日)

ただでさえ、多くの若者たちから希望を奪い、結婚生活や子育てをする経済的基盤を喪失させてきた雇用政策です。それをさらに「生涯派遣」が常態化する格差社会の拡大の方向に向けてエンジンをふかしている姿は、常軌を逸しているように見えます。

さらに、財務省から「消費税の2%上限付き還付案」が発表されました。内容を見て驚きました。政治のみならず、官僚の劣化もおそるべきレベルに達しているのではないでしょうか。

付加価値税・消費税は、富裕層に負担が軽く、低所得者層に負担が重い逆進性を特徴としています。その逆進性緩和のために、ヨーロッパでは多くの国で食料品等を非課税にしたり、軽減税率を適用したりしています。この間、公明党は「軽減税率の導入」を強く求めていました。

財務省案は、払いすぎた消費税の還付の仕組みを 10 月から導入されるマイナンバー制度と結びつけています。2017 年 4 月に消費税率が 10%へとアップした時から、個々の消費者がマイナンバーカードを小売店の端末にかざして国税庁のデータベースに買い物の内容を通知するとしています。そして消費者は、いったん 10%の消費税を支払って、後に自分の「酒類を除く飲食料品」の買い物リストから 2%分の還付をうけるとのことです。しかも財務省案は、当初は還付の上限を 4000 円としていました。

4000円を国から還付してもらうために、重要な個人情報が刻まれたマイナンバーカードを持ち歩くというリスクに懸念の声が一斉にあがりました。しかし麻生財務大臣は、「カードを持って行きたくなければ持っていかないでよい。その代わり、その分の減税はないだけだ」と言い放つ始末です。こうした傲岸不遜な物言いからは、国民に消費税率のアップという税負担に加えて、さらにマイナンバーカードを持ち歩く手間とリスクをお願いする立場であることを自覚しているとは思えません。9月8日、私はツイートしました。

財務省案は、「軽減税率導入」を期待する大手メディアからコテンパンに批判されています。中国・上海市場の株価急落に端を発した「中国バブルの崩壊」は、大きな影響があり日本の株価も急落させました。2017年4月に10%への税率アップが出来る状況なのでしょうか。そもそも、「社会保障財源」を確保するための消費増税と言いながら、年金・介護・医療に関わる安心材料は探せません。この「消費税まやかし還付」案は、「国民の生命と暮らし」を重視していないという点で、派遣法改正や安保関連法制への強硬姿勢と相通じるものだと感じます。

さて、話を安保法制に戻します。

どれだけ多くの反対意見があっても耳を傾けることなく、安倍首相は「強行採決」も辞さずの構えを崩しません。私は安保法制の「強行採決」にあくまで反対します。しかし、安倍首相が公言するように「決めるべき時には決める」と強行採決に踏み切った場合には、一日も早く安倍政権を退陣に追い込まなくてならないと考えています。

そして、来年7月、参議院選挙がやってきます。あと10カ月間、怒りを力に変え、国民の大多数が望む政治を実現するために国会の勢力地図を塗りかえ、憲法を蹂躙した安倍首相のこの間の軌跡を打ち砕くことが必要です。憲法を尊重し土台とする法治国家へと塗りかえる新しい政治的パワーの結集のために、私も動きたいと思います。