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STAP細胞関連ブログコメントなどより転載

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昨日の記事は(ハフポストに転載されたためか)とてもたくさんの方々に読んで頂いたため、「専門家の意見を求む」というお願いに反応されたコメントやメールを頂きましたので、その一部、専門性が高いと思われたものを転記致します。とくに、顕微鏡の自動撮影の際のフォーカス自動合わせの機能に言及した考察などは、現場の実験に詳しい方ならではのものがあります。

なお、頂いたコメントで一部誤解があったようなので念の為に書き添えますが、昨日の記事の中で「ライブ・セル・イメージングが改竄されている」という指摘をしたのではありません。動画が本当にSTAP細胞(仮)様のものを示しているのか、勘違い?の可能性は無いか、ということを論じています。

関 由行(許可を得てメールより転載)
関西学院大学理工学部 生命科学科
生殖後成遺伝学分野

1. STAP細胞形成過程における多能性遺伝子の発現変化について。
Nature ArticleのFigure 2bでSTAP細胞形成過程における6種類の多能性遺伝子の発現変化解析を行っています。
ここで気になるのが、コントロールに用いているES細胞における発現です。
おそらく遺伝子発現をGapdhに対する相対値で計算していると思うのですが、ES細胞における6種類の遺伝子の発現量がほぼ同じになっています。
過去の論文や自分たちの実験データを見ても、ES細胞においてこの6つの遺伝子のGapdhに対する相対量がほぼ同じになることはありえません。
どのような計算を行い、このようなデータを出したのか知りたいところです。
宜しくお願い致します。

ヒトES細胞、iPS細胞を用いた研究を行っている研究者の方より(許可を得て匿名により掲載)

私はSTAP細胞としてblastcystにinjectionされたものは「マウスES細胞をLIF存在下で浮遊培養して作製した細胞塊だったのではないか」と考えております。これはkahoさんという方がブログで、copy number variation(CNV)解析から「STAP=STAP-SC= ES」と記載をされているのを拝見して感じたものです。私の考えはkahoさんのブログ(http://slashdot.jp/journal/578973/オオカミ少年)に「解析、有り難うございました」という題名で投稿させていただいております。以下に骨子をコピーいたしました。

小保方氏が、若山教授に渡したマウスと異なる系統のマウスに由来する細胞塊をSTAP細胞と称して渡したことが判明した今でも、STAP細胞の存在を信じる声があることには驚きます。さらに若山教授に対して不信感を抱く声を聞くと本当に呆れてしまいます。


若山教授へ不信感を示す声は、教授が「ES細胞キメラの胎盤はGFP陰性、STAP細胞キメラは胎盤がGFP陽性であった」「通常の方法でSTAP細胞のinjectionを何回も繰り返してもキメラは生まれなかったが、細胞をバラバラにせずに小塊に切り分けてinjectionしたらキメラが生まれた」と言われたことにあるようです。つまり「STAP=ESならば最初からキメラが生まれたはずだし、胎盤でのGFP発現にESキメラとSTAPキメラで差があるという発現は出ないはずだ」ということから若山教授に不信感を抱く人がいるようなのです。


しかし、このことは以下のように考えれば説明ができます。小保方氏がES細胞をSTAP細胞と偽って渡す時には、ES細胞(接着細胞)をそのまま渡すことはできず、「浮遊細胞塊」つまりembryoid body(胚様体;EB)のようにして渡す必要があります(STAP細胞とはそもそも「浮遊した細胞塊」なので)。通常EBはLIFを除いた培地で作製しますが、この場合にはLIF存在下で作製したはずです(STAP細胞の培地がLIFを含有するので)。このためEBほどには分化せず、未分化性はそこそこ保持されていたと考えられます。おそらくEpiblast stem cell(Epi-SC)のようになったものと思われます。Epi-SCはキメラ形成能はありませんが、それはE-cadherin発現がES細胞よりも低いためにICM(内部細胞塊)にうまく取り込まれません。つまりEpi-SCのようになった「通称STAP細胞」をトリプシン処理により細胞をバラバラしてinjectionすれば、当然ながらキメラは形成されません。しかしトリプシン処理をせずに小塊に切り分けてinjectionすれば、トリプシン処理によるE-cadherinの切断が起きないためキメラ形成能はそれなりに保持されると考えられます。さらにマウスEpi-SCがヒトES細胞と酷似していることはよく知られています。そしてヒトES細胞はマウスES細胞と異なりtrophoblastに分化することは有名です(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17363553の論文のイントロをご参照下さい)。

つまり、マウスES細胞をLIF存在下で浮遊培養して作製したスフィア(小保方氏がSTAP細胞と呼ぶもの)は、(1)そのままではキメラ形成能を保持している、(2)トリプシン処理によりキメラ形成能は消失する、(3)ヒトES細胞のようにtrophoblastへの分化能を持つ、と考えることはそれほど無理がないのもと思われます。

このように考えれば、若山教授はご自身が観察された実験事実を正しく伝えていらっしゃることが解ると思います。つまり、今回の騒動は単純に小保方氏単独の捏造事件と考えるのが一番無理がないと思います。

私は若山教授は直接には存じ上げませんが、テレビで拝見する限り非常に真摯な方だとお見受けいたします。若山教授の潔白を証明しつつ、かつ笹井氏の「おかしな理屈」を論破することはできないかと思い、文献を検索しておりました。なお上記の書込みに対してはいくつか反論も寄せられましたので(Epi-SCはtrophoblastにならない etc)、全ての事実を正しく説明するものとはどういうものであるべきか、を考え直してみました。

そして「ESキメラとSTAPキメラは作製法が異なっていたことがそのまま答えになる」と思うに至りました。つまり
(1)ES細胞をsingle cellにばらしてblastcystにinjectionすると胎児のみに寄与する(注:胎盤中央部は胎児由来なのでGFP陽性になります。ここで「胎児のみに寄与する」とは「胎盤全体がGFP陽性にはなるわけではない」という意味です)、
(2)ES細胞塊を小塊に切り分けてblastcystにinjectionすると胎児と胎盤の両方に寄与する、
ということではないかと考えてみました。残念ながら(2)に相当する実験を行った文献は見つかりませんでしたが、「8-cell embryoとES細胞塊とを融合させる」という形でのキメラマウス作製を行っている文献が見つかりました(添付)。これは、ES細胞を「細胞塊として取り扱う」(single cellにしない)という意味においては(2)に限りなく近い状況を再現していると考えられると思います。

驚くことに、Fig. 2J, 2KではTrophectodermにES細胞が取り込まれています。これは「in vivoで作製されたiPS細胞はtotipotentである」というHannaらの論文(Nature 502 340-345, 2013)のFig. 4f によく似ています。なお添付文献のtext中には「積極的にtrophectodermに寄与したのではないかもしれない」という遠慮深い表現もありますが、Fig. 5Hでは胎盤(しかも胎盤外縁部まで)が明らかにGFP陽性となっており、textにもそのように記載されています(黄色でハイライトしました。なおここでFig. 5Gと書かれているのはFig. 5Hの誤りと思われます)。

つまり、ES細胞を「塊のまま」使ってキメラマウスを作製すれば胎児と胎盤の両方にコミットする、と考えられるのではないかと思いました。そして、笹井氏の「胎児と胎盤に寄与できる既知の多能性細胞はない」という主張は誤りであると思いました。即ち「STAP細胞の存在を仮定しなければ説明ができない現象がある」のではなく、kahoさんの解析を基づいて考察すれば「ES細胞であったとしなければ説明ができない現象がある」と言うべきと思われます。

若山教授が、コントロール実験としての「ES細胞キメラ作製」の実験においても小塊に切り分けたものをblastcystにinjectionしていらっしゃれば、STAPキメラとESキメラに差があるとは感じられなかったことと思います。そして、ES細胞の混入(取り替え)の可能性についてより慎重に検証をされたことと思います。そうすればSTAP事件も起きなかったと思います。

一方、ネットでは「ESキメラで臍帯・yolk sac・胎盤中央部が光っていないことがそもそもおかしい(Nature Letter Fig. 1a)」という意見や、「ESキメラは胎盤が光らないと言っていることがおかしい」といった意見も出されております。それはそれで正しいとは思いますが、それでは若山教授の観察眼を疑うことになります。私は、若山教授が「ESキメラとSTAPキメラの胎盤の光り方に違いを感じ取った」ことの根拠を明示したいと思い、上記のような考えにたどり着きました。

なお笹井氏が挙げた「STAP細胞存在の根拠」のうち、他の2つは論外であることはすでに周知されているかと存じます。牙城であった胎盤寄与の問題を論破しさえすれば笹井氏の言葉は空虚なものになると思います。

Commented by とある細胞生物学者 at 2014-04-17 01:14 x
細胞一個しかうつっていない電顕写真を根拠に小さい細胞なんて結論が出せるわけがない。また、そんな小さな細胞なんてものはライブセルイメージングにはうつっていないように思います。さらに不思議なのは、細胞質がない小さな細胞はとうぜん細胞骨格も退化していると思いますが、なぜかライブセルイメージングで活発に動き回っている。

キメラ実験などについては小保方さんが若山氏に何を渡したのか不明であるのに、それを根拠にSTAP細胞が存在するというのはどう考えても論理に飛躍があります。おっしゃるとおり、混入どころかESやTSの細胞塊そのものを渡した可能性もある。また、もっと悪質なケースでは移植後のマウスを、CAG-GFP♂マウスと交配済みの妊娠マウスとすり替えた可能性だってないわけじゃない。

Commented by 木根渕猛 at 2014-04-17 11:21 x
細胞残渣、特に仁小体は強く蛍光(525 nm付近)を発します。ビデオ画像はphagocytes内の貪食直後の仁小体に見えます。

Commented by 通りすがり1号 at 2014-04-17 16:54 x
笹井さんのコメントで「顕微鏡の自動観察なので、人為的な操作は実質上不可能であること、死細胞の自家蛍光とは別」とありますが、どのように撮影中に自家蛍光とGFP蛍光を区別されたのかが不明です。GFP用のbandpass filterを使用していれば自家蛍光も緑色に見えるはずです。

また、死細胞の観察ではないことの証明にFACSを用いたと話されていましたが、これは「movieの細胞が自家蛍光ではない」との証明にはなりません。実験系がまったく違います。FACSについても、蛍光補正ができていない、サンプルとネガコンを別条件で測定するなど、不適切なFigが認められます。このような状況下ではFACSのデータは信用に値しないと思われます。

Commented by 通りすがり1号 at 2014-04-17 17:11 x
たびたび、すいません。
下記コメントにつきまして取り急ぎ。「ES細胞、TS細胞の混ざり物では細胞接着が上手くいかず、1つの細胞塊にならない」

確かにそのまま混ぜただけではESとTSはひっつかないと思います。ただ、アグルチニンを入れれば一時的にひっつかせるのは可能なのではと思います。どの論文か忘れましたが若山さんの過去の論文でアグルチニンを使用していたと思います。

そこまでするかが問題ですが、技術的には可能な範囲だと思います。

Commented by UC at 2014-04-17 22:54 x
ライブイメージの倍率と解像度では、断定的な事は言えないのですが、マクロファージ様細胞で見られる蛍光は、(貪食された細胞ではなくマクロファージ自体の)核内に見えたり、diffuseに細胞質で発色したりしているので、phagosomeに限局した蛍光とは言いがたいように思います。

Commented by インジェクション? at 2014-04-17 23:02 x
若山教授は、インジェクションに何度も失敗した。と述べていますが、ES細胞単独の場合、そんなに失敗するものでしょうか?

Commented by LiveCell at 2014-04-18 08:41 x
ライブセルイメージングの開発を行っている者です。話題になっているので、イメージを見てみました。セティングはx10オブジェクティブ、DICイメージの質が悪いのでおそらくプラスティックボトルかディッシュ、自動焦点機能を使用、といったところでしょう。興味深いのは蛍光非発現の細胞が減っていること。細胞死によるのであれば、死んだ細胞のカスが残りますが(DICでは白く光って見える)、きれいに無くなっているので何かによって処理されていると考えられます。この系ではおそらくマクロフェージの類だと思います。では、マクロフェージであればイメージ中に見えているはずですが、最初の方のイメージ中にはありません。これは自動焦点機能によるマジックでしょう。たぶん、輪郭抽出による自動焦点機能が使われていると思いますが、この場合、焦点はディシュ表面ではなく、丈のある物体(イメージでは球形の細胞)の方に当たります。

Commented by Live Cell at 2014-04-18 08:42 x
続き
マクロフェージのようなディシュ表面にべたっと付くタイプの細胞はこの条件では見にくいはずです。後半に行くに従い、激しく動く細胞が見えだしますが、これは球形の細胞が減ったため、自動焦点がディシュ表面に移動し、見え始めたと思われます。もし、この激しく動く細胞がSTAP細胞であれば、蛍光発現細胞に由来するはずですが、このイメージング条件ではディシュ表面に居る細胞が分からないので何とも言えません。が、マクロフェージに補食されたと考えた方が合理的なように思います。焦点をディシュ表面に固定化するかz−スタックを取ってイメージングすれば答えは簡単にでます。おそらく、蛍光発現細胞がマクロフェージに補食されたイメージが取れると思います。

Commented by LiveCell at 2014-04-18 08:43 x
続き2
また、理研のhttps://www.youtube.com/watch?v=lVNbwzM2dI0&feature=youtu.be&app=desktopを見てみましたが、細胞がクシュとなるきれいな細胞死の一つのパターンのように見えます。

個人的にはこのような細胞(おそらく死細胞)からマウスが発生するとは思えません。ですので、未だ隠されたトリックがあるはずです。

Commented by UC at 2014-04-18 14:35 x
培養が進むにつれ、自動焦点機能によりフォーカスが表面に近づいた場合、残ってる球形の細胞のフォーカスがぶれてくるように思うのですが、そのような変化を認めますか? マウスの脾臓には骨髄球型前駆細胞や単球系の細胞が存在し、培養中にマクロファージに分化するため、培養の途中からマクロファージ様の接着細胞が出現すると考えた方が妥当なように思いますけど。この動いてる接着細胞の一部は、かなり早期から緑色を発していますよ。

Commented by UC at 2014-04-18 15:24 x
笹井先生は自家蛍光を否定していましたが、その根拠が示されていないのは問題です。論文suppleのデータを見ると、FACSの蛍光補正ができてない図がありますので、Oct4-GFP/CD45のFACSもCD45の蛍光標識によっては、補正不十分なデータかもしれません。PI染色を併用している(supple)ようなので、CD45はAPCなどfar redで標識してると予想しますが、その場合はCD45とGFPとの間で補正は不要ですけどね。いずれにせよ、酸処理した、Oct4-GFPが入ってない細胞で自家蛍光のレベルを確認したデータが必要です。ライブイメージではGFP陰性の細胞がそれなりに存在するのに、FACSでは大多数がGFP陽性である点も、矛盾点。(ただし、GFP陰性細胞のほとんどがPI陽性でゲートから除外されていれば、あり得なくもない。) 笹井先生には、自家蛍光についてのデータを示して欲しいですね。

Commented by UC at 2014-04-18 15:39 x
あともう一点。Extended Fig1bを見ると、酸処理後の細胞FSCが高い細胞がかなりいるんだけど、MainのFIg1hとかなり矛盾しますね。ライブイメージを合わせ考えると、Extended Fig1bの方が正しいように思うので、細胞のサイズについては電顕も含め、あまり信頼しない方がいいでしょうね。

なお、STAP細胞の存在にポジティブなご意見は以下のようなものがありました。

Commented by 分野違う研究者 at 2014-04-17 16:38 x
客観的にみたら、STAP細胞はあることを前提に検証する価値はあるんでは?
大隅さんは、ライブセルイメージングが改竄されているとのことですが、そこまで面倒なことをするなら、画像張り間違えがないと思います。

(2014年4月18日「大隅典子の仙台通信」より転載)

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小保方晴子氏の記者会見画像集(2014年4月9日・大阪)
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