田中杏子さん「ストーリーと共存する服は手放せない」Lenet FUN! MY STYLE

田中杏子さん「ストーリーと共存する服は手放せない」Lenet FUN! MY STYLE
中島のりゆき

雑誌『Numéro TOKYO』の編集長として活躍する田中杏子さん。同誌を通じて、世界中のファッションやカルチャーなどを伝えています。そんな田中さんに、ご自身が服を選ぶときのポイントや、素敵なストーリーを持つお気に入りの服のこと、服のお手入れについてお話をうかがいました。

中島のりゆき

服を選ぶときは試着がマスト

服を選ぶときは、着たいと思う気分がその服とフィットしているかどうかがすごく大切。わりとどんな服でもトライしたいタイプだけど、やっぱり似合うものと似合わないものがあるから、それをよく理解するために必ず試着しますね。試着してクローゼットにある服と合わせられるのか、合わせられないなら他に何が必要なのかといったことを考えながら試着をしてますね。

中島のりゆき

最近のトレンドはSNSに影響を受けている

仕事柄、最新のファッション情報が集まってきますが、実はトレンドをそこまで追いかけているわけではないんです。シーズンごとにコレクションを見に行って、今のファッションの気分ってこれだよねっていうのがわかっているから、自然とそっちの方向に意識が向くというか。明るい色や華やかなものとか、色と色や、柄と柄をあえて組み合わせるみたいな、わりとタブーに挑戦した盛ったファッションがトレンドで、私も自然とそっちの方向に向いている感じです。だから、シンプルな服や真っ黒い服をただ着るということをしなくなっていますね。

パリコレやミラノファッションは、カッコよくて、おしゃれで、スタイリッシュなものっていうイメージだったんですけど、ここ最近は「このアイテムにこれを合わせてもいいの?」とか「こんな色とこんな色を合わせてもいいの?」とか「この柄すごくない?」みたいな、驚きに満ちたものが増えています。その理由のひとつがSNS。SNSが今のトレンドを生んでいるという部分もすごくあって、SNSで「いいね」がいっぱいつくものや、人が見て「それカワイイ」って思うものがトレンドになってきているかも。SNSではシンプルなものよりも派手なものの方が人の心を打つので、わりとそれが主流になってきている。派手な、華やかな、ちょっとおかしな柄・形・色が、流行りはじめているのかなと思います。

素敵なストーリーがある服は手放したくない

中島のりゆき

その服を着ているときに何かとても素敵な出来事があったとか、そのストーリーと共に服が存在しているというものは、手放せなかったりしますね。

以前、パリの「LANVIN(ランバン)」でお洋服を試着していたときに、たまたま当時のデザイナーのアルベール・エルバスさんがお店にいらしたことがありました。突然、彼が私の方にやってきて「この服、君だったらこの丈で着るのがカワイイよ」って言って、その場で私に合わせてパパっとサイジングを変えてくれて、お針子さんに「彼女が着るならこのぐらいにお直ししてあげて」って言ってくださったんです。試着しているときは買うか買わないか悩んでいたんですけど、彼にそれをやってくれたこともあって結局買いましたね。こういったストーリーがあるから、その服は手放せずに今だに大切に持っています。

そのとき買ったのはトップスとスカート部分の素材が違っている黒いワンピースです。スカートの部分はナイロンみたいな素材で、大きなジップが背中についていて、切りっぱなしになっていてフサフサと毛が出ているのが特徴。今、その黒いワンピースを着るとしたら、明るめの色のアクセサリーや帽子を組み合わせてスタイリングしたいですね。

パリのビンテージショップで買った「BALMAIN(バルマン)」の昔のドレスも、大事にしている洋服のひとつです。そのドレスには裏にパッサージュナンバー(何年のどのコレクションでどのモデルが何番目に着たかがわかる番号)がついています。つまり、この世に一枚しか存在していないドレスということ。すごく高かったんですけど、それを見たときに「これは出会いだな」と。その昔にこれを着てモデルさんがパッサージュを歩いたというストーリーをまるごと買えちゃうような気になったんです。

そのドレスをパーティーとかで着ると、よく褒められるんですよね。でも、だんだんほつれてきていて着られなくなったらどうしようと思ってて。でも、この間、たまたま京都にある「京都服飾文化研究財団」で修繕してくれることを知ったんです。最終的にはそういうところにそのドレスを寄贈したいとも思ってます。ストーリーがある服は自分の手にも入れられるし、誰かにバトンタッチもできるから、奥深いですよね。

母からもらったものも大事にしています。洋服よりも、バックとか装飾品、アクセサリーが多いですけどね。母もすごくファッションが大好きだったんです。母からもらったものは、きっと娘に譲るんだろうなと思ってます。

クリーニングするだけでなく保管にもこだわる

私は関西出身なんですけど、関西よりも東京のほうが湿気が多い気がする。だから、洋服をクローゼットから出して定期的に風を当てるとか、バッグも定期的に出して拭いたり、頻繁に使うようにしたりしています。

洋服はシーズンが終わるとごっそり持ってクリーニングに出します。クリーニングに出してきれいになったものは、貸し倉庫で保管してもらうことが多いです。室温や湿気を管理して保管してくれるし、倉庫に納めている洋服が必要なときは、連絡すると中1日かからずに手元に届くので便利ですね。

中島のりゆき