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守るつもりが、損してる。ほったらかしたら、トクをする。

2013年10月24日 22時51分 JST | 更新 2013年12月24日 19時12分 JST

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少し前に半沢直樹の視聴率の高さについて記事にした時、ネット上の動画が視聴率に寄与したようだと書いた。それは公式オンデマンド配信のことを建前上は言っているのだが、実際には違法にアップロードされたものも多く観られたと思う。スマホの普及がそれを加速させた。

ぼくの知人、50代半ばの人なのだが、半沢直樹が面白いと聞いてスマホで検索したら出てきたので、放送済みの番組を観たのだそうだ。3話分を、スマホで観たという。それを見て面白かったから4話目からリアルタイムで観るようになった。

スマホは革命的だなと思う。PCだとその人は観なかっただろう。身近な存在であるスマホだから気軽に検索し、出てきた動画を3時間も観続けたのだ。画質だってクオリティが高い。とくにしんどい思いもせずに観ることができる。

テレビ局としては、違法動画など観ないでください、というべきところだろうが、それを見ることでその後の視聴率が上がるのなら、まあいいか、というところだろう。

著作権法は著作者を守るための法律だが、著作権が守られない方が著作者はトクをすることもある。そんな状況ができつつあるのだ。だからむしろ、テレビ局は放送後にネットで番組を無料で配信した方がいいんじゃないか。これについては、あやとりブログでも少し前に書いた。無料でもCMつきで配信し、ゆくゆくはスポンサーに追加の提供料を視聴数に応じてもらえばいい。もちろんそんなにカンタンではないのはわかっているけど。

ネットでの再配信はテレビ局自身が嫌がっているより、出演者、タレント事務所サイドが嫌がっていることが多い。いまやそっちの方が強いブレーキかもしれない。大事なタレントの映像をやたらネットに置いたらファンに勝手にコピーされる。タレントたちの肖像が資産なのだからタダでは配れないよ。そんな考え方だ。でもそれも、頑なに守っても意味がない。トクにならない。そんな時代になっていることに気づいた方がいい。

著作権法には要するに"複製を勝手にするな"という思想が底にある。レコードをプレスするとか、本を印刷するとか、そういったことがカンタンにはできず、だからこそその価値を重たくする必要があった。でもいまや、複製はドラッグ&ドロップで簡単にできてしまう。複製の価値が下がってしまった。

複製いいじゃん。複製ありだよ。どんどんやっちゃって。そう考えた方がトクなのだ。オープンにしていけばプロモーションになる。多くの人の目にふれることができる。そうして知名度を上げて、何か別の要素でマネタイズする方がいい。そんなことになっちゃったのだ。もっとも「何か別の要素でマネタイズ」がはっきり見えてないのがやっかいだが。

少し前の話で、書籍の自炊代行は違法だと判断された裁判があった。これもどうなのかなと思う。本を買った人が自分で自炊するのはいいけど、それを代行するサービスはダメだというのだ。もちろん、そうやって残ったデータが何に悪用されるかわからないでしょ、という心配は理解できる。でもそれは自炊代行サービスと直接関係はなく、自分がやるとOKで代行サービスはダメというのはどうにも矛盾がある。著作権についての考え方にほころびが出てきている。

複製ってなんでそんなにダメなんだっけ?というところからもう一度問い直した方がいい。法律におかしなところが出てきているのは、法律を取り巻く考え方がズレてきているからで、著作権は守られなければならないので守られねばならない!とだけ言い続けるのは自分が損することだと気づいた方がいい。これは著作権を否定しているのではなく、上手に守って上手にゆるめた方がいいんじゃないの?という話だ。

著作者の願いは、生み出したものをできるだけ多くの人に楽しんでもらうことだと思う。そのためにどうしたらいいかと考えたら、頑なに守ることだけが答えではないと気づくはずだ。実は、権利を守ることの前に大事なこと、人びととどう心を通わせるか、にほんとうの答えがあるのではないだろうか。

※この記事ではコピーと写真をデザインしたビジュアルを使っている。このビジュアルは文章の挿し絵ではなく、ひとつの独立した表現のつもりだ。ぼくが書いたコピーに、アートディレクター上田豪氏が絵をつけ、コピーとともに配置している。ちなみに写真も彼が撮ったもの。こうしたビジュアルを先に作ってそれに沿って文章を書く記事をこのところ毎週続けている。ネット上での新たな表現形式にならないか、そしてそれが新しい広告のフォーマットにできないか、という試みだ。とりあえず当面続けてみようと思う。

●これまでの記事

「させていただきます、を必要以上に使いすぎてると、言わせていただきます。」

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「反対は、上手になった。正解は、わからなくなった」

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「誰かをヘイトしていると、あなたがヘイトされる。」

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コミュニケーションディレクター/コピーライター/メディア戦略家

境 治

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sakaiosamu62@gmail.com

(※この記事は、2013年10月24日の「クリエイティブビジネス論〜焼け跡に光を灯そう〜」から転載しました。)