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テレビはもっと便利になれるか?(ヒントのひとつはソーシャルメディアにある)

2013年12月10日 00時38分 JST | 更新 2014年02月08日 19時12分 JST

まず前もって言っておくと、この記事は身内の催しの宣伝につなげようという意図もあって書いている。その催しについては最後の方に書くからね。

"テレビ論壇"みたいなコミュニティに気がつくと参加していた。2011年に『テレビは生き残れるのか』という本を書いたのだけど、これを読んでくれた人から声をかけられたり業界誌に原稿を依頼されたりするようになった。テレビを中心にメディア論を議論する人びとがいるのだと知った。

志村一隆さんはその中のひとりだ。『明日のテレビ』や『ネットテレビの衝撃』などの著作で知られる。研究者ながらどこかクリエイター肌のところもあって何となく気が合い、仲良くさせてもらっている。

志村一隆さんはJBpressによく原稿を書いている。12月5日付けの記事は「最悪のインターフェースも乗り越えるコンテンツの力」と題した原稿だった。ざっと読んでもらえばわかるのだけど、米国のドラマ『ブレイキングバッド』にハマった話を入口に、ドラマの続きを観るためにVODサービスの使い勝手の悪さをいかに乗り越えたかを書きつづっていた。

huluでシーズン3まで観たあと、シーズン4をどこで観れるか探したらU-NEXTというVODサービスを見つけた。PCならすぐ観られるのだけどテレビで観たい。ところがIDの入力がうまくいかず・・・という話だ。

テレビって不便だなと思う。

いや、少し前までは別に不便でも何でもなかった。地上波のチャンネルをリモコンで切り替えてリアルタイムで観る分には何の不便も感じなかった。でもテレビで観たいもの、やりたいことがどんどん増えた。それに対してのテレビはほんとうに不便だ。

今のテレビはたくさんのチャンネルにアクセス可能だ。地上波だけでもけっこうな数だが、BSボタンを押すと民放キー局系列のBS局を含めて十数チャンネルが視聴できる。さらにスカパーもしくはケーブルテレビに加入すればそれに加えて何十チャンネルも観ることができる。多チャンネルサービスの加入世帯は1100万を超えているそうなので2割以上の家庭がこの状態だということだ。

多チャンネル環境を前提にした途端、何の不便もなかったリモコンが、不便のカタマリになってしまう。いまやテレビで番組表を見るのは田舎のおじいちゃんでもやると思うが、この画面が分かりにくいし使いにくい。使いにくいけれども、この表で番組を選ぶことが増えている。新聞のテレビ欄では地上波以外十分な情報が示せないのだ。

この番組表、EPGというのだが、テキストだらけだ。テキストだらけの表を何十チャンネル分も見ていっても何ら"そそられない"。結局、観たい番組を発見するためには番組表は機能していない。あらかじめ観たい番組を決めておいて、あれは確かこの時間のはずだけどどこだっけ・・・とたぐっていって、あった!という使い方になる。

では観たい番組はどこで観ればわかるのだろう。・・・いちばんの情報源はEPG、つまりテレビの番組表だ。・・・この説明は不思議なパラドックスを巻き起こす。テレビ番組を選ぶいちばんの情報源はテレビ画面上の番組表なのだけど、これはあらかじめ観たい番組が決まっている時じゃないと機能できない。・・・これはつまり、番組を快適に選ぶ手段が事実上存在しないということなのだ。

地上波の局の人からするとホッとする話だろうか?ふう、BSやCSに視聴者を奪われなくてすむなあ。

いやいや、もうそういう時代じゃないのだ。地上波だけだって、番組が選びにくいのは変わりない。今どき新聞にろくに目を通さない若者が増えており、"新聞のテレビ欄"が効かなくなっている中で、『半沢直樹』ぐらい話題にならない限り、観たい番組を発見してもらえないということだ。あの番組表の重要性をいま一度再認識すべきタイミングだとぼくは思う。

それから最近は気軽にVODにアクセスできるようになってきた。うちのテレビにもケーブルテレビのVODサービスがつながっているし、AppleTVと、それを通じてhuluも使える。ハードディスクレコーダーにはアクトビラとTSUTAYA TV、そしてT'S TVという3種類のVODサービスが内蔵されている。一見、素晴らしく便利に思えるだろう。・・・だがAppleTVとhulu以外、まったくと言っていいほど使いにくいのだ。使いにくい、はちょっと気を遣った言い方だった。使えない!もう吐き捨てるように言いたいのだけど、なんて使えないサービスだ!と思う。

例えば、映画のタイトルがずらりとパッケージ画像を並べて表示されている画面。ここは言わばビデオ売り場みたいな画面のはずだが、ひとつひとつが小さすぎてどんな映画かちっともイメージできない。次のページに行こうとすると十数秒待たされる。元に戻ろうとする時にどのボタンをどう押せばいいかわかりにくい。いわゆるUIがもう全然ダメ。

志村さんの記事にあったように、IDやメールアドレスを入力する際も、テレビのリモコンでとてつもなく操作しにくい作業をやらされる。日本人は携帯電話で使いやすいテンキーの使い方をみんな学んできたのだからあれを元にすればいいのに、信じがたいほど使いにくい操作を要求される。ぼくは何度もリモコンをテレビ画面にぶつけたくなった。

こうした"テレビの不便さ"を克服するにはもちろん、リモコンを改良するとか、EPGを見直すなどの機器の課題があるし、WEBやスマートフォンを使ったサービスやアプリも考えられるだろう。でも少し違う角度でソーシャルメディアの活用も考慮すべきだと思う。

先ほどの志村さんの記事にも最後に、彼がハマった『ブレイキングバッド』についてはソーシャルメディアでちっとも伝わってこなかった、ということが書かれていた。

番組を送り出す人たちからすると、いやそんなはずはない、ということだろうか?ドラマの情報はtwitterアカウントから担当者が発信しつづけていたのに。

海外ドラマにしても、日本のテレビ番組にしても、ソーシャルメディアを使った情報発信がずいぶん増えたと思う。ソーシャルについてテレビ局がおっかなびっくりで接していた頃からすると隔世の感がある。だが、まだ何か大事なことが足りない気がする。

twitterアカウントを作って番組情報を盛んに発信するのが基本だが、それで終わっている。ソーシャルメディアをプッシュ型の広告と同様にしかとらえられていないのだ。ほんとうに大事なのは、番組側からの情報発信ではなく、それも含んで視聴者のコミュニティを形成することだ。そしてそういう"場"まで用意できている番組はまだほとんどない。外部への情報発信より以上に、その番組についてみんなで語り合う場、語りやすい場が必要なのだと思う。そうすればそこから広がった会話に、自然と接触するようになるはずだ。

さて、ここまで読んでくれた人に、お伝えしたい催しがある。「第2回あやぶろナイト」。あやぶろ、とはあやとりブログのことで、これはまさしくテレビを中心にメディア論を語る場だ。TBSメディア総研が主宰するブログで、ぼくや志村さんを含めて、いろんな人が原稿を寄せている。

そのあやとりブログ主催のトークイベントがあやぶろナイト。第一回にはぼくも出演した。第2回ではTwitterJapanのセミナールームを借りて、テレビとソーシャルメディアについてをテーマに据えるそうだ。

この記事を最後まで読んでくれたあなたなら、参加すると面白いかもしれない。まだ席はあると聞いているので、ぜひどうぞ。→お申し込みはこのリンクから

コミュニケーションディレクター/コピーライター/メディア戦略家

境 治

What can I do for you?

sakaiosamu62@gmail.com

(※この記事は、2013年12月9日の「クリエイティブビジネス論!~焼け跡に光を灯そう~」から転載しました)