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「人が成長する場は学校だけではない」 夏休み明けに登校したくない君へ 

どうか知ってほしい

2017年08月30日 17時51分 JST | 更新 2017年08月30日 19時56分 JST
Getty Images/iStockphoto

91日は多くの学校で新学期を迎えます。友達や先生に久しぶりに会えるとあって、うきうきする子どもが多いことでしょう。

一方で、憂鬱に感じる子どもたちもいます。夏休みが明けるこの日の前後、18歳以下の自殺が増えるとされています。そんな子どもたちを励ますかのような一つの記事が2015年、朝日新聞に掲載されました。書いたのは横浜総局の太田泉生記者。自らTwitterで紹介するや反響を呼び、2万超の「いいね」を獲得しました。

太田記者自身、不登校の経験があり、学校の代わりに通いつめた図書館に救われたといいます。「人が成長する場は学校だけではない」。そう訴えた彼の記事を改めて紹介します。(年月はすべて掲載当時です)

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18歳以下の自殺は夏休み明けの9月1日が突出して多いという内閣府の調査を8月に報じた。26年前の自分を思い出しながら書いた記事だ。

当時12歳、小学6年。4月に転校したばかりの学校になじめず、登校するのが毎日憂鬱(ゆううつ)だった。夏休みが始まった時は心からほっとした。

だが8月中旬を過ぎると、再び気が重くなった。9月1日は腹痛を理由に欠席した。翌日も、翌々日も。雨戸を閉め切り家に閉じこもった。

両親には幾度も病院に連れて行かれたが、身体に異常はない。2週間ほど経った頃、学校に行きたくないのだと打ち明けた。「どうやって生きていくんだ」。両親は戸惑った。私に答えがあるはずもなかった。

死が頭をよぎった瞬間もあった。両親の言動など何かが違っていれば、私にもあり得たことだと思う。

だが両親は迷いながらも私の気持ちを受け止めた。どう生きるか、自分にも見えない中、最初に居場所になったのが近くの図書館だった。昼間に行って「学校はどうしたの?」と問われはしないか。でも午後に行って同級生に会うよりましだ。人目を気にしながら家を出た。

図書館で最初に読んだのは気楽なエッセー集。やがて星新一氏や筒井康隆氏に手を伸ばし、空想の世界に浸った。宮脇俊三氏や沢木耕太郎氏の旅行記は繰り返し読んで、見知らぬ土地を旅することを夢見た。

数年後に手にした立花隆氏の「青春漂流」は強く印象に残った。一度は挫折を経験した若者が、悩み苦しみながら生き方を模索するさまを描いたノンフィクションだ。学校だけではない、いろいろな生き方があるのだと知った。ここぞという時に踏ん張る大切さも感じた。「きっと生きていける」。心の支えになった。

そんな経験があるから、「学校がつらい子は図書館へ」という8月26日の鎌倉市図書館のツイートには胸が熱くなった。つぶやいた図書館員に取材すると、夏休み明けに子どもの自殺が多いと報道で知り、思いついたのだという。「一日いても誰も何も言わないよ」。26年前にこの言葉に触れていたら、どれだけ気持ちが楽になったことだろう。

中学の3年間は不登校児の居場所に通った。10代後半はアルバイトをしては外国を旅した。中南米の文化や近代史をもっと知りたいと、大学入学資格検定(当時)を経て大学に入ったのは20歳の時。たくさんの人と出会って文章を書く仕事に魅力を感じ、卒業して記者になった。

26年前、学校に行かない選択肢はないと思っていた。多くの人は今もそうだろう。休み明けに子どもの自殺が多いのは、その表れだと思う。

どうか知ってほしい。人が成長する場は学校だけではない。しばし休んで自分を見つめ、力を蓄えた先に開ける道もあるはずだ。

(朝日新聞2015年10月15日付朝刊に掲載)

hitori

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