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機会と場を届け チームで挑む若者の政治参加NPO法人「僕らの一歩が日本を変える」

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若者と政治の双方に新しい出会いを届けることを目的に活動しているNPO法人「僕らの一歩が日本を変える。」(通称"ぼくいち")。18歳選挙権が適用される2016年夏の参議院選挙を目前にしたいま、"ぼくいち"のさまざまな取り組みがメディアの注目を浴びています。代表理事を務める後藤寛勝さん自身も現役の大学生。大学4年生となる今年、彼は何を思い、何を目指そうとしているのか。等身大のインタビューをお届けします。

政治学科の教授の部屋を端から端までノックして


―"ぼくいち"の活動に関わったきっかけを教えてください

高校は新潟県内の進学校だったんですが、農業に関心があって詳しい友達は「日本の農業を変えたい」と言っていたり、コンピューターが大好きな友達は「ITで世界を変えたい」と言っていたり、ピアノで全国でも優秀な成績を収めていた友達は「日本の音楽業界を変えたい」と言っていたり、学力以外に得意分野を持っている友人が周囲にたくさんいました。でも、卒業後の進路を決めるとなれば、みんな自分の得意分野を捨てて大学受験という道に進んでいきました。聞けば「夢ばかりみていても痛い目をみると思う」とのこと。自分には得意分野も取り柄もなかった分、友人たちが羨ましい存在だったのに、彼らが漠然とした社会の不安感から夢を諦めてしまうような社会に閉塞感を感じました。じゃあ「どうしたらそれぞれが自分の力を発揮できる社会を作れるのか」、「何を変えればいいのか」と考えれば、その分野の仕組みを全て良い方向に変える力を持つ「政治」だなと。周りには政治に関心のある人はいなかったし、これを自分にしかない得意分野にしようと思ったのです。

それで大学進学と同時に上京し、東京でビッグになる!なんて理想を追い求めて、NPOやボランティア団体に参加してみたり、政治家の勉強会に参加してみたりできることから始めていたのですが思っていたのとなんか全然違って...。これじゃあダメだ、自分で何かしなければ、と思って始めたのが、政治学科の教授の部屋を端から端まですべて訪ねて「いまの政治について教えてください」とか「政治家になるためにはどうしたらいいですか」って聞いて回ることでした。

9軒目ぐらいを訪ねたところで、教授から当時、"ぼくいち"のメンバーを紹介され、一緒に活動していくことになりました。その後、"ぼくいち"はNPO法人格を取得し、現在は自分が代表理事を務めています。

永田町から全国へ~票育は人材育成事業


―"ぼくいち"ではどのような活動を行っていますか

もともとはイベントを企画することが多かったのですが、最近は地域社会で優秀な若い人材が実働できる仕組みや制度づくりに重きを置いています。

"ぼくいち"の活動で一番知られているのは「高校生×国会議員」というイベントで、全国から高校生100人が集まって国会議員とディスカッションし、政策提言をしていく、というものです。このイベントに参加することで「政治家はこんなに身近な存在なんだ」とか、「自分にも政治に対してもしかしたらできることがあるかもしれない」という気づきや発見が高校生に生まれています。

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一方で、このイベントに来てくれるような高校生をどうやって増やすことができるか、全国に広げていけるのか常に悩んでいました。きっと彼らは、自分の町や地域にこういった機会や場がないんだろうな、と。やっぱり、僕がそうだったように政治に関心があったり、社会に対して想いを持っていたりしても、それを口に出せば変な奴と思われたり、敬遠されたり、何となくタブー視されていますよね。

だとすれば、いま永田町で行っているこの「政治に希望を感じる」体験を全国の教室へ届けに行かなければいけないと思いました。それが「票育」を始めたきっかけです。

「票育」はU-22の人材育成事業であって、ただの出前授業ではありません。授業の担い手が、地域社会の担い手になる仕組みを作っています。具体的には、22歳以下の若い人たちを現地の"票育CREW"として任命し、チームを組閣します。その後、対象地域の中で1~2か月間、研修やフィールドワークなどのプログラムを受講してもらい、そこで学習した地域課題や解決策などの得られた成果を「授業」という形に変換して、若者自身が地域の中高生に届ける、というのが「票育」事業です。

「票育」は現地の票育CREWが作り上げるので、すべてオーダーメイド。地方自治体の課題や総合計画、実際に行っている政策や懸念点など、実施地域の事情に合わせたプログラム内容になります。授業手法も、模擬選挙をやるところもあれば、政策を作るワークショップを行うところがあったり、ゲームをつくるところもあったり本当にさまざまです。

票育で得られる力は2つです。自分の住む地域や社会の課題を発見する力、発見した課題に対して自分がとれる選択肢を見出す力。ポイントは授業の対象者だけではなく、授業の担い手であるCREWの子達も同様にこの力を育むことができる点です。票育CREWとして1~2ヵ月、研修を行うと、地域の若者のエキスパートとも言える知識や課題解決能力が身に付きます。自治体に対してのアイディアも豊富に生まれます。だからこそ、これからの地域社会の担い手となる22歳以下の若者たちが対象であることに意味があるんです。

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2016年度からは、票育がいくつかの自治体で1年間の人材育成事業として採用されました。僕が昔から必要だと思っているのは、政治の中に若者の居場所を作ることです。票育CREWが正式に自治体の任命のもと、地域の子供達のために活動するということは「政治から役割を与えられている」ということと同じです。今は、票育というものが看板になっていますが、将来的には若者の代弁者がここに集まり、常に政治の中に若者声や感性が届いている状況をつくりたいと思っています。

若者の政治や社会に対する意識は高い


―"ぼくいち"では新しい試みも次々に行われていますね

意識しているのは、「(政治家・政治)らしいことをしない」ということです。政治や街の未来について考えるイベントって、ある程度、どういう内容か想像が付きますよね。"ぼくいち"の活動としては、そこにどれだけ「今までなかった」要素を入れられるか、だと思っていて。政治に無関心な人や政治の対極にいるような人を巻き込もうと思った時に必要なのはクールであることや、クリエイティブであることなんです。社会に貢献する、かっこいいNPO、そしてチームでありたいです。

―"ぼくいち"は政治家を輩出する組織ではない、という位置づけですよね

もちろんです。政治に興味はなくても、社会に対する意識が高い若者はたくさんいます。政治家を輩出する、というよりは、それぞれが社会を担う存在になって、自分の得意分野を持ったリーダーであってほしいと思っています。ワークショップやプログラム考案、PR、デザインなど僕にはできません。ぼくいちでは、自分の得意分野を突き詰め、それをどうやって政治にぶつけていくことができるかを常に考えています。

―最近の若者意識はどのような感じですか

「若者は政治に無関心」などマスコミにあおられてかわいそうかな...。そんなことはないんですよ。「政治離れ」とか「社会に関心がない」とか言われていますが、社会に対する日常の気づきや発見は必ず誰の胸にも存在しています。多分それに自身が気づいていないだけだし、気づきを声でも行動でも形にできる機会や場があれば、そのポテンシャルは絶対に開花します。だからこそ「機会と場」が必要なんです。

票育は、夜間や定時制などの学校にも進出しています。特に商業や工業系の高校、夜間高校に通っている子たちの方が、社会や政治問題についてより現実的に議論できるケースが多いです。きっと色々壁を感じていたり、社会に触れている機会が多いからだと思います。

―若い人たちに伝えたいことはありますか

僕たちはSNSが当たり前の世代なんですが、SNSを使えば世界が広がっているようで実は狭まっている可能性があることを忘れないでほしいです。TwitterやFacebookなどの「いいね!」リアクションは、まわりにいる人や理解者であり共感者です。意識をしないと、中々対極にある意見や普段関わっていない人の考え方は入ってきません。

それと、ネットで得られる情報量には限りがあります。だからこそ、本物に触れるべきで、政治に関しては政治家に会って話すとか、投票箱に触れるとか、商店街の人にヒアリングするとか、そういう五感で感じる実体験が一番大事だと考えています。今はなんでも「本物」に触れる機会が減っているので、そこは意識していかなければいけないのではないでしょうか。

18歳選挙権だけじゃ意味がない、目指すは被選挙権の引き下げ


―大学卒業後の夢はお持ちですか

高校生の頃は政治家になる強い気持ちを持っていましたが、今は少し変わりました。政治分野以外で自分の強みを見つけてみたいということです。

それに政治だけしか"飯を食う"方法がないと、政治家でなくなったときに何もない人間になってしまいますよね。だからこそ、食べていくための強みを身につけたいので、卒業してすぐに政治家を目指していくことは考えていません。まずは政治とは違う分野で自分を伸ばしていくことを模索しています。

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―"ぼくいち"でこれから目指すものを教えてください

18歳選挙権が施行されますが、これって特に若い人たちにとってうれしい事でもなんでもなくて、ただのきっかけにしか過ぎないんです。今まで考えたこともなかったのにいきなり「政治について考えろ!」だなんて少しかわいそう。一方で、自分と同じ考えや主張を持った政治家を探してみても、若者の声を政治の世界へ届けてくれそうな候補者はなかなかいません。

だからこそ投票する権利である選挙権だけじゃなくて、立候補できる権利である「被選挙権」も引き下げないと若者の政治参加は進みません。投票という間接的な方法で声を届けるだけでなく、自身が政治家になって直接届ける方法もあるということです。全員が全員政治家にならなくとも、少なくとも同世代で政治の世界で活躍するロールモデル的な存在を、作り出していかなければいけないんです。単純に、同世代で頑張っているアイドルやスポーツ選手がいたら、「すごいな」って自然に共感や応援ができるのと同じことです。

すでに被選挙権引き下げを訴えて、ロビイング(ロビー活動)やオンライン署名を行う「OPEN POLITICS」というキャンペーンも行っています。実際に主要政策として取りあげる政党も出てきました。時代の流れとして、被選挙権引き下げはいずれ実現するものだと思いますが、問題は「実現までのスピードをどれだけ上げられるか」だと思っています。少子高齢化や世代間格差が広がる速度に追いつけるくらいに。

あと、世間知らずの若者が当選したらどうするんだ?なんて議論は無意味だと思っています。だって「隣の家の高校生がいきなり立候補したらあなたは投票しますか?しないでしょう?」という話ですから。

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―どういう若者に政治を目指してほしいですか

全然政治に興味はなくても、自分の好きなものや得意なものや目指していることがある人たちに、当たり前の職業の一つとして政治家を意識してほしいです。18歳選挙権が実現し、若者の政治参加の選択肢はどんどん多様化しています。多くの選択肢を、若者なりの視点で社会に提示していきたいと思っています。また、NPOの事業を通して、"チームで政治に挑む"という考え方を生み出していきたいです。

後藤 寛勝(ごとう・ひろかつ)
新潟市出身、21歳の中央大学4年生。 NPO法人「僕らの一歩が日本を変える。」代表理事。内閣府地方創生推進室/内閣官房まち・ひと・しごと創生本部RESAS専門委員。U-22の若者による政治教育モデル『票育』を全国で展開中。OPEN POLITICSにて、被選挙権取得年齢の引き下げキャンペーン中。

「僕らの一歩が日本を変える。」ホームページ:http://boku1.org/
「OPEN POLITICS」ホームページ:http://open-politics.org