革新的資金調達は、国際政治における最重要課題

ODA予算は、OECD加盟の多くの国でかなり目減りしていて痛手を蒙っている。途上国で膨らむ需要に資金確保するため、グローバリゼーションからもっとも利益を得ている経済活動に痛みのない課税をすることは、時宜を得た代替となる。アフリカの石油生産にも可能性がある。

ODA予算は、OECD加盟の多くの国でかなり目減りしていて痛手を蒙っている。途上国で膨らむ需要に資金確保するため、グローバリゼーションからもっとも利益を得ている経済活動に痛みのない課税をすることは、時宜を得た代替となる。アフリカの石油生産にも可能性がある。

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フィリップ・ドスト=ブラジ はユニットエイドの理事長。国連では事務総長特別顧問として開発のための革新的資金調達を検討する責務にある。2005年から2007年までジャック・シラク大統領のもとで外務大臣を務めた。

――2015年が近づいています。国際社会がミレニアム 開発目標達成に決めていた年です。最貧と闘うための資金調達は難局打開に作用しているでしょうか。

ズバリ切り込む必要がありますね。ミレニアム開発目標達成に求められるもの、そしてポスト2015の持続可能な開発目標の要求は増えています。しかしそれらを達成するための収入は減っています。

10億もの人々が一日1ドルも稼げず、40億は一日8ドル以下、そして私たちが属しているわずか10億が「一握りの幸福な人々」という現状で、なすべきことは膨らむいっぽうです。

一日ドル以下で生きなければいけない人々は、飲み水もなく、教育も受けられず、公衆衛生もなく、清潔な暮らしもできず、半数以上は食べるものにも事欠いています。

世界でもっとも子だくさんなのはそうした人々です。人口統計学的には、インド、ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、カンボジア、ベトナム、中国などで極貧状態にある人々の数は減少していますが、出生数が非常に増えているので、貧しい状況にある人々の数も多くなっているのです。

同時に収入は減っています。支援する側のほとんどの国は破産またはその寸前の状態にあります。ギリシャ、イタリア、ポルトガル、スペイン、フランス、そしてアメリカも含めた国の政治家たちに開発援助を10億とか20億、増やしてくださいとは言えないでしょう。

――国際連帯の資金調達はどのように再調整するおつもりでしょう。

収入が減ることと支出が増えることに対応するには、新しい革新的資金調達に賭けるべきです。

概念はシンプルそのものです。航空輸送、インターネット、金融取引、携帯電話、採掘資源といった、グローバリゼーションからもっとも恩恵を受けている経済活動を対象に、ごく小さな痛みを伴わない連帯税を創設する、というものです。さらに言えば、革新的資金調達は予測可能で、安定していて、付加的なものです。

これらの資金調達は私にとっては世界の国際政治の最重要課題です。倫理、モラル、人道、健康の問題ではなく、国際政治の問題です。

――ODA予算の後退は、もし革新的資金調達にバトンタッチされれば、特にフランスでは、受け入れ可能と考えますか。

もちろんノーです。とんでもありません。革新的資金調達はODAを補完するものとしてとらえられるべきです。この資金調達は政府援助を減らすためのものではありません。今フランスでそのとおりになっていますが、まったくナンセンスです。

例えば、フランスでは航空券税は議会を経由しません。監査を経て政府のデクレにより、開発のための連帯基金に入れられます。しかし元開発担当大臣のパスカル・カンファンはこの税を他の目的のために配分することを認めました。ユニットエイドとIFFIm(ワクチンと予防接種のための世界同盟Gaviの予防接種のための資金調達国際ファシリティ)にこの税の収入を使うという唯一のデクレではなく、今後は他の目的にも使うことになります。具体的には世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)に資金提供するために使われますが、これまではフランス国家予算によって賄われていたものです。これはフランスの開発援助への貢献を縮小するものです !

しかしデーヴィッド・キャメロンには敬意を表したい。彼はイギリスの国際開発省DIFDの予算、このたった一つの予算を聖域化することで、930億ポンドを捻出したのです。

――あなたは途上国向け医薬品購入の国際組織ユニットエイドの理事長ですね。ユニットエイドの資金は大部分が革新的資金調達からもたらされていますが、これまでにどのような成果をあげていますか。

ユニットエイドは一枚一枚の航空券に課税することから始まりました。ユーロ圏では1ユーロ、ドル圏では1ドルというように。それで6年間で20億ドル以上を集めました。この税収はだんだん増えています。モロッコはこの方式の採用に同意したところです。日本の首相はこの件について真剣に検討しますと言ってくださいました。エミレーツ航空とエティハド航空ともコンタクト中、アルゼンチンにも検討するよう要請するところです。

この資金で、ミレニアム開発目標のターゲット6(エイズ、結核、マラリア)に集中して、たとえばマラリアでは3億5500万治療を実現したり、結核については850万人の人々を治療することができました。また小児用の薬で80%、成人用の薬で60%価格を下げることができたのは、この資金調達が予測可能であることと持続性があることのお陰です。

革新的資金調達のアイデアは 進化しています 。フランスでは少し前から金融取引税が実施されていますが、その一部が開発のために充てられています。またヨーロッパレベルでは11か国が同様の税を実施しようとしています。

金融取引税はニコラ・サルコジが当初実施した時、株式と債券の取引に0.1%の課税でした。ついでフランソワ・オランドはそれを上回って0.2%にしました。そして私たちは今、この税がデリバティブの0.01%に拡大されることを願っています。

特に11か国の強い協力関係があります。ドイツやベルギーといったこれらの国は金融取引税導入を受け入れています。

今問題なのは、したがって金融取引税をするかどうかではないのです。この税はもう周知のものです。しかしこの税収が誰に行くかといことを見極めることが重要です。これについてはまだ勝利していません。しかしながらフランスがこの税の15%を開発のために充てることは高く評価します。

この税がヨーロッパ税として進展している今、つぎのステップとしては参画しているそれぞれの国で15%から20%の税収を確保し、それを二つの多国間システムに投入するべきです。一つは保健分野のユニットエイドに。もう一つは、これはそもそもの目的から外れるかもしれませんが、環境変化と戦うための資金をグリーン・ファンド「緑の気候基金」に。

この資金は世界規模の目的のために集められ、したがって世界規模の枠組みに充当されるべきです。このうち15%とか20%とかが国家予算に組み込まれてしまっては、元の木阿弥です 。したがってこの資金は国家予算外の組織に預けられるべきです。連帯のグローバリゼーションが待たれます。

――国際連帯に資金調達ができる他の分野についてもお考えがあるかと。その最新情報を。

私は今、アフリカ諸国の国家元首と石油1バレル毎に10サンチームを徴収しようという税の導入について検討中ですが、このアイデアはまだとても新しいものです。この税はとてもシンプルな概念が元になっています。石油会社が産油国になるかもしれない国にやってくるとします。それら国々の国家元首に、石油会社の収入に10サンチームを課税して国際連帯に充てるように頼むのです。これは南南連帯になります。彼らは受容力がありますが、アイデアはまだ新しいもので、確立するまでには時間がかかります。

ODAは維持しなければなりませんが、開発の構造は徐々に変わるべきです。ODAと革新的資金調達、この二つの財源に頼るべきです。

2005年、私は国連の内部に革新的資金調達に関するリーディング・グループをつくりましたが、そのメンバーには64か国と全国際機関が参加しています。このグループ内で私たちはポスト2015のターゲットの枠組みで、革新的資金調達の創造を検討します。私はこの問題については国家元首たちと政府側からの意見を注意深く聴くつもりです。

セシル・バルビエールによるインタビュー

EurActive.frに2014年6月25日に掲載された記事の翻訳です。

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