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母乳育児を奨励して子どもの栄養改善を目指す ~インド~

ビカネール県では31%から69%へと激増しています。

2017年11月12日 11時12分 JST | 更新 2017年11月12日 11時12分 JST

2015年1月末に開始した「子どもの栄養状態改善プロジェクト」に携わり、インド北西部のラジャスタン州を数カ月おきに訪れ、毎回2~3週間現地で活動しています。

インドでは5歳未満児の40%以上が栄養不良と言われ、その要因は多岐にわたります。このプロジェクトでは微量栄養素の支給、住民や乳幼児保育に関わる人々への意識啓発や研修など、包括的な活動を通じて子どもの栄養改善に取り組んでいます。

母乳に対する無知が引き起こす誤った行動

初乳(分娩後に出る最初の母乳。その後の母乳に比べタンパク質や免疫成分がより多い)を含め、母乳は乳児にとって何よりも栄養満点な食事です。乳児の排便を促し、免疫力を高めるうえで重要な役割を果たすだけでなく、授乳時の母子のスキンシップが子どもの精神的な発達にもよい影響をもたらします。

また、母乳育児は子どもの成長だけでなく、産後の母体の回復にも効果があると言われています。しかし、プロジェクト開始前の対象地域では、母乳の効果が正しく理解されていませんでした。そのため、初乳を捨てている家庭や、乳児の水分補給のために水や牛乳、極端な例では紅茶を薄めたものを飲ませている家庭までありました。

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授乳後に我が子をあやす母

母乳育児への理解を深めた男性の言葉

1990年に、世界保健機関(WHO)はユニセフとともに8月1日~7日を「世界母乳育児週間」と定め、170カ国以上で母乳育児と乳児の栄養改善の推進キャンペーンをすすめています。

このプロジェクトでもこの時期に合わせて啓発イベントを実施し、妊産婦だけでなく義父母や男性も母乳の効果を理解し、母乳育児を実践していく環境づくりに取り組んでいます。今年8月の啓発イベント視察中に、私は地域内に生じている変化に気づきました。

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啓発イベント会場入口(ウダイプール県)

変化のひとつは、母乳育児に対する男性の理解度の高まりです。ウダイプール県のイベントでは、参加者約100人を前に、20代の父親の代表2人が母乳育児に関する意見・考察を述べました。

1歳半の息子を持つ父親のカニャラルさん(24歳)は、「村の栄養指導員の日々の働きかけにより母乳育児の重要性に対する認識も広まり、初乳を与える母親も増えてきています。子どもの健やかな成長に母乳はとても重要です。母乳の質にも影響するので、妊産婦の栄養状態への配慮も必要です」と聴衆に力強く訴えました。

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母乳育児の重要性を訴えるカニャラルさん

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栄養指導員3人による啓発劇の様子

活動を支える村のボランティア

ほかに見られた好ましい変化は、村の若いボランティアの関与です。ビカネール県のある村の啓発イベントで、私はインド文学修士課程の学生で独身のラリさん(20歳)に出会いました。

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ボランティアのラリさん

35℃を超す屋外の案内ブースで受付ボランティアを務めていたラリさんは、次のように語りました。「社会貢献活動に関心があり、1年ほど前からプロジェクトのボランティアを始めました。この1年で育児指導・相談会の参加者数は増え、妊産婦は自主的に保健所の予防接種を受けに行くようになりました。このような変化が見られて私もうれしいです」

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ラリさんから啓発チラシを受け取る来場者

同じイベントでは、非識字の参加者(主に高齢の女性)が「母乳育児の意義を理解し実践します、また実践することを促進します」という提言に賛同し、インクをつけた手を署名代わりにバナーに押しつける場面も。そこでも20歳代のボランティアが活躍していました。参加者から聞き取った名前を手形の上にヒンディー語で追記し、賛同者の情報を整理していました。

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インクをつけた手のひらを押しつける参加者

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署名代わりの手形の上に書き加えられた名前

プロジェクト参加者の発言からは、母乳育児や子どもの栄養改善に関し、地域住民の理解がすすみ、行動が変容した様子がうかがえます。実際、完全母乳育児*実施率は、この1年でウダイプール県では86%から88%と微増、ビカネール県では31%から69%へと激増しています。

今後、母乳育児の実践だけでなく地域内の協力体制の強化がさらにすすみ、プロジェクト終了後も継続する体制が確立されることを期待しています。

*完全母乳育児:生後6カ月間を母乳だけで育てる。WHOが推奨している

橘 祐子 プラン・インターナショナル  プログラム部シニアオフィサー

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東京都出身。大学卒業後、大手私鉄で5年半勤務後、青年海外協力隊に参加し南米エクアドルで活動。

帰国後、民間企業勤務を経て、公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパンへ入局。

活動国への短期出張のほか、グアテマラへの短期派遣、JICA事業(水衛生分野)のプロジェクトマネジャーとしてバングラデシュに約2年駐在。

現在は、主に企業や個人支援者からの寄付や外務省助成金による事業を、現地事務所と連携して形成、実施管理している。