女の子の権利は未解決の課題~国連女性の地位委員会で女の子が提言へ~

男性も巻き込みながら、ジェンダーに基づく暴力を根絶する必要があります。

世界の貧困を半減するために制定された「ミレニアム開発目標」が最終期限を迎えた2015年9月の国連総会では、2030年までの国際開発目標となる「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:以下SDGs)」が採択されました。

新たに「誰ひとり取り残さない」をキーワードに、貧困の撲滅と持続可能な開発に向けて、途上国も先進国も一丸となって取り組む目標となっています。ジェンダー平等と女性と女の子のエンパワーメントがすべての目標の進展に極めて重要な貢献をすると明記したうえで、目標5に、ジェンダー平等の達成とすべての女性および女の子のエンパワーメントを掲げました。

女性と女の子の課題解決はこれから

前述のミレニアム開発目標の達成に向けて国際社会が努力した結果、女の子や女性に関する目標では一定の成果が見られました。初等教育を受ける女の子の数は大幅に増え、乳幼児死亡率や出産が原因で命を落とす母親の数は過去のどの時点と比べても少なくなっています。

一方、「女性および女の子に対するあらゆる形態の差別の撤廃」、「早すぎる結婚や女性性器切除など有害な慣行の撤廃」、「経済的資源に対する権利、土地その他の財産、金融サービス、相続財産、天然資源に対するアクセス」といったミレニアム開発目標には含まれていなかった課題が加わったことからも分かるように、女の子や女性を取り巻く課題は山積しています。

女の子や女性がジェンダー平等を享受するには、すべての教育レベルにおける男女格差の解消や、女の子と女性のエンパワーメントに加えて、教育やエンパワーメントを阻む障害を取り除き、不平等を生み出す原因となっているジェンダーに基づく差別や制度の見直しなど、包括的な取り組みが必要なのです。

2016年で60回目を迎える女性の地位委員会

2015年プランを代表してCSWに参加した女の子たち

ジェンダー平等や女性の権利とエンパワーメントについて、各国の進捗状況を審議し、早急な対応を要する課題を明らかにし、必要な政策を策定する機会となっているのが国連女性の地位委員会(Commission on the Status of Women:以下CSW)です。CSWは例年2月から3月にかけて10日間開催され、国連加盟国の代表、国連機関、NGOや市民社会の代表者等が、毎年ニューヨークの国連本部に集まります。

第60回目となる今回は、「持続可能な開発に向けた女性のエンパワーメント」をテーマに、3月14日から24日まで開催されます。2013年のCSWの会議で成果としてまとめられた「女性および女の子に対するあらゆる形態の暴力の撤廃と防止」のテーマについても進捗が確認される予定です。

Because I am a Girlキャンペーンを通じて、ジェンダー平等と女の子のエンパワーメントを訴えているプランからは、マラウィ、パキスタン、ケニア、エチオピア、バングラデシュ、ジンバブエ、タンザニアといった活動地域の女の子が参加し、持続可能な開発目標を達成するために欠かせない「女の子の権利」を世界のリーダーに訴えます。

早すぎる結婚とジェンダーに基づく暴力への対策を求める女の子たち

女の子の権利やエンパワーメントの促進に大きな影響を及ぼすものの一つが早すぎる結婚です。国際的には、18歳未満は子どもと定義されますが、途上国では18歳未満の3人に1人の女の子が結婚しています。18歳未満の結婚は世界のほとんどの国で禁止されていますが、違法だと認識されていても、慣習法や社会規範、貧困が原因でなかなか無くならないのが現状です。

心身が十分に発達する前に女の子が結婚すると、幼いうちに妊娠・出産を強いられ、命を落とすこともあります。世界の15~19歳の女の子の死亡原因の第1位は出産です。早すぎる結婚は、女の子の教育を受ける権利を奪うだけでなく、生きる権利さえも奪うことになるのです。

「私の住む地域では、早すぎる結婚が大きな問題です。16歳で結婚を強いられた友人は、出産のために命を落としました。早すぎる結婚をやめさせるには、法的な執行力を用いることと、両親への教育が必要です。女の子自身がこの問題に声をあげられるように励ますことも重要です」(マラウィの女の子、15歳)

また、ジェンダーに基づく暴力の根絶もプランが進めるBecause I am a Girlキャンペーンの目標のうちのひとつです。特に、学校に通う女の子は登下校の途中で男性にからかわれたり、学校の敷地外にあるトイレで危険な目にあったり、よい成績と引き換えに男性教諭から関係を迫られたり、性暴力の被害に遭う女の子もいます。女の子には安全な学校で教育を受ける権利があります。

学校内外でのジェンダーに基づく暴力を撲滅し、女の子の継続した学びを確保することは、ジェンダー平等への第一歩です。男性も巻き込みながら、ジェンダーに基づく暴力を根絶する必要があります。なぜなら暴力は、教育など女の子たちにとって大切な機会を奪い、積み上げた成果を一瞬にして台無しにしてしまうからです。

「数学の先生につきあってほしいと言われましたが、私にはできませんでした。それが問題になりました。私がどんな小さな間違いや悪いことをしても、毎回のように罰を受けました。それが、私が学校を嫌いになってやめてしまった理由のひとつです」(シエラレオネの女の子、19歳)

2014年CSWに参加したパキスタンの女の子

2012年のCSWで発表をするシエラレオネの女の子

当事者の声に寄り添う国際NGOとして

2013年のマララ・デーに国連に集結したユースたち

プランはこれまでも当事者である子どもたちやユースの声をコミュニティの大人たち、地元政府、そしてCSWのような国際会議の場で世界のリーダーに訴えてきました。CSWに参加した女の子たちは、コミュニティの女の子の代表として、質の高い教育、早すぎる結婚の撲滅、ジェンダーに基づく暴力からの解放など、女の子の権利に関する未解決の課題について声を上げてきました。

当事者の女の子が自ら改善を求める声を発信し、データに基づいた提言を政策に繋げるアドボカシー(政策提言)を行うことは、より多くの女の子の状況を変えるためにとても重要なことです。「子どもの権利条約」、「北京宣言および行動綱領」、「女子差別撤廃条約」など、国際的な人権規約で女の子の権利は守られるべきと定められている一方で、日々女の子が直面している課題はあまりにも深刻です。

変化を求める強い意志を持つ女の子の活躍は、困難に直面する世界中の女の子の声を代弁し、今まさに困難に直面している女の子はもとより、次世代の女の子の状況をも変えることにつながります。

プランは、今後も、女の子と女性が権利と尊厳を享受できるよう、日本も含めた国際社会に働きかけていきます。

2016-03-14-1457945964-7679101-PlanJapan_Shiroya.jpg城谷 尚子(しろや・なおこ)

公益財団法人プラン・ジャパン アドボカシーオフィサー、教育協力NGOネットワーク副代表、広島大学客員研究員

高校の英語教諭時代に、開発途上国の現状を日本の教育現場に伝える開発教育に出会い、途上国支援、特に教育支援に興味を持つ。2008年プラン・ジャパン入局。翻訳担当、広報担当を経て、2011年10月より現職。

日本の市民社会に対する啓発活動や日本政府への政策提言を行う。現在はプランが展開する「Because I am a Girl」 キャンペーンのメッセージであるジェンダー平等や女の子のエンパワーメントに関する政策提言を行う。2012年5月より、世界中の子どもたちが教育を受けられること目指す教育協力NGOネットワークの副代表を務める。世界の教育について考える世界規模のイベント「世界一大きな授業」の事務局を担当し、イベントのコーディネイトやネットワークと協働した政策提言を行う。

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