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<落合陽一×SEKAI NO OWARI>ライブ会場に「魔法」をかける〜Zepp DiverCityを大改造!

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幅広い層に絶大な人気を誇る4人組バンド「SEKAI NO OWARI」。 
そんな彼らの1日限定ライブが10月20日お台場Zepp DiverCityにて行われた。 
今回はライブ会場エントランスの演出を、筑波大助教・デジタルネイチャー研究室主宰でありメディアアーティストの落合陽一が担当。 
現代の魔法使いがZepp DiverCityに魔法をかけて、その独特の世界を作り上げた。

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全体コンセプトについて

落合 いわゆるモニタやいわゆるプロジェクターのピクセルのようなデジタル感のある構成では表現されないような『アナログ感のある映像装置をデジタル技術でどのようにして作るか』というのが1つの大きなテーマでした。 
セカオワの魅力の1つとしてインターネット時代であってもいわゆる「画一的なピクセルの並びで表現されるデジタルっぽさ」とはまるで違う「アナログ的な魅力」があり、そこにピクセルやデジタル機器を超えた魅力があるということがあると思います。
それは「画一化していく都市構造の冷たさ」の中に「魔法感がある物語を創り出す」ようなものなのかなと感じます。 
例えば、デジタルシンセサイザーの音を多用したり、コンピュータによるシーケンサーの打ち込みで曲を構成したりするようなバンドやユニットが昨今流行っていますが、セカオワの曲作りやライブの音から聞こえてくる感覚はまるで違う。
同じように打ち込みというツールを使用しつつも、セカオワから漂う存在感は全然デジタル的なところではなく、むしろアナログ的な温かみを感じる。
デジタル技術ゆえの多チャンネル合成を繰り返してアナログのようなものに近づいていくような曲作りの真摯な努力を感じるし、デジタル技術を駆使しつつもアナログな雰囲気や世界観を大切にしているバンドだと思います。 

そこでライブ会場エントランスの演出についてもアナログで古典的な映像文化に関する解釈をデジタル技術で再構成するような演出を行いたいと考えました。
究極にデジタルが行き着く先はデジタルネイチャー、やがては「高度で知的なアナログ」になっていくんだと思いますが、まさにそう言ったポストデジタルな表現が似合うバンドだと思うんです。
だから何かお手伝いできるんじゃないかって思ったんですよね。 
もちろん今回の作品たちも裏ではコンピュータによるデジタル制御を行っていますが出力としてはアナログで見せるという試みです。
それが今、僕がこのバンドに提供させていただけるもっとも高い価値なのかなと思いました。
 
具体的なコンセプトや表現の話をするとセカオワメンバーのみなさんと打ち合わせしていただいたときに『Zeppを洋館みたいに変えたい!』というのが最初にセカオワのメンバーから出てきたをコンセプトでした。
「洋館」という言葉にビビっときたので、そこで現地に行って下見を行い、いくつかアイディアをだしていきました。
Zeppは地下ですし、照明環境も自由にコントロールすることができる。そして、お客さんにあっと驚いてもらえるような仕掛けを組むなら抜群の場所だなぁと感じたんです。
これはすごく面白そうだし、セカオワメンバーのやりたいことに全力で返球してみたいって感じました。 

作品作りとしては、僕の方からメディアアート的な表現のところを「セカオワが創り出す洋館」のイメージと掛け合わせて提案させていただくような形でした。
作品の外見デザインはアートディレクターの方と相談させていただきながら進めていき、全体の環境や構成・施工については施工の方たちとやり取りしながらやらせていただきました。
ものづくりに関わるところはデジタルネイチャーのラボの学生も大勢参加してくれて、たくさんのメンバーでやらせていただいたのですが、みなさん非常に心強く、そして楽しんでできました。本当に楽しかったです。

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会場に入るまで

落合 打ち合わせの時にメンバーから、「森を抜けて洋館にたどり着く」というコンセプトをいただいたので、じゃあ、会場に入るまでは森にして、会場から洋館にしようということに制作チームで相談して決めました。
林っぽいゲートの中にランタンの薄ぼんやりとした明かりがある。Zeppってビルの地下なんですが、地下に下っていくと雰囲気がガラッと変わって暗がりの林のゲートがある。魔法の始まりです。 
実は会場に飾ってあるランタンにもこだわりがあって、なんかどこか均一的な感じがするLEDは使いたくなかったから、「フリッカーランプ」っていう燃えるような動きがする古い電球と「バイブラランプ」っていう実際にフィラメントが振動する電球を探して揃えて使っていました。
この電球も売ってなくて揃えるのが大変でしたね、秋葉原中の電球屋を探しました。
あの動き気づいた人いたかなぁ、フリッカーランプは電化が溜まって本当に炎みたいな動きするし、バイブラランプは交流を受けてフィラメントが天然のモータみたいに動くんですよね。
まるで炎みたいな動きをするアナログな電球です。

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大扉

落合 まずは会場に入ってすぐ目につく印象的な『大扉』ですね。
ZeppTokyoに来場されたことがある方は驚かれたと思いますが、もともとあの場所にはあんな巨大な大扉どころか普段は扉すらありません。
森を超えてたどり着く洋館を作り出すには扉がいるんじゃないか、って現場を視察しに行った時にアートディレクターの方に相談して、施工の方に無理言って作ってもらった巨大な扉でした。 
もともと空間的に遮断されていないところにあえて大扉を作って空間を分割するっていうのはすごくいい働きをしたと思います。
今回のライブでは「こっちから先はセカオワの世界が待ってます」ということを暗に示すような象徴的なモニュメントになってたと思いますね。1日限りのライブにしては圧倒的に贅沢なセットでした。木の質感も良かったし左右にある揺れる炎もいい感じだった。
前日にセカオワメンバーが見に来たときにみんな喜んでくれたのがすごく嬉しかったです。

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ゾートロープ・シャンデリア

落合 次にゾートロープ、大扉入ってすぐのところで見上げると真上に見えるシャンデリアです。このゾートロープはとても古典的な映像装置です。19世紀ごろによく用いられた回転映像装置の一つなのですが、これは実際動かない3Dフィギュアを盤面ごと高速で回転させることで動いているように見せることができる。
洋館のシャンデリアを映像装置に変えるというアイディアが面白いんじゃないかなと思って作りました。悪魔が13体逆さ向きに吊るされていて、踊りだす。まさに怖い洋館みたいな感じ。古典的映像装置と合体した照明装置でした。 

ただこういったゾートロープは通常、制作がとても大変なんですね。 
どこが大変かというと2点あって、1つは少しずつ造形の異なる人形を複数作らなければならない、2つ目は人形を決まった位置に誤差なく固定しなければいけないということです。 
1つ目の問題については今回でいえば悪魔の人形を全部で13体作らなければいけなかったのですが、3Dプリンターを使用することで大幅に工数を減らすことに成功しました。
3次元のアニメを作ってからそれを分割して3Dプリンターで出力していく。ゾートロープでできるアニメーション自体はアナログのものですが、裏はデジタル技術で製造しているいい例です。 
また2点目の作った人形を寸分違わず決まったポジションに固定しなければいけないところについては、手伝いに来てくれたうちのラボの学生が徹夜で頑張ってやってくれました。
回転するものだから万が一のことがあってはならないし、みんなすごく神経を使いながら作っていたと思います。 
ちなみにあのシャンデリアの重量は15〜20kgぐらいありましたから、上から吊るときも人形の位置を気にしながらのデリケートな作業でしたね。施工の方々には大感謝しています。 
でも結果としてはすごく綺麗に動いていました。お客さんたちが動画や写真をたくさん撮ってくれてよかった。
13体の悪魔が踊るシャンデリア、悪魔の踊りが不思議で不吉で、非日常感ある洋館の演出をちゃんと果たしてくれたと思います。

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地下洋館のためのアリスの時間

落合 続いては巨大な時計仕掛けの映写装置です。
洋館といえば古時計や大きな時計だと思ったのですが、これも思い切って映像装置として作ろうということで会場に置かせていただきました。
これは一つ一つの時計の盤面にレンズが付いていて、光る盤面から実物投影機の要領で一箇所に実像を投射していく作品です。
光る盤面を切り替えることでフィルムを使わないアニメーション、実物を使った鏡時計を作る作品でした。 
この作品に関してはアイディアというか元々の原型がありました。元々は府中市美術館の公開制作で作った作品で、Leonardo誌という権威ある論文誌の表紙になったり、SIGGRAPHのアートギャラリーでも展示されていたものなのですが、今回このライブのために新調しました。どこが違うのかといえば、「サイズ」と「機構」ですね。 

まずはサイズ。これほど巨大な作品を作るのは初めてでしたし、元々のアリスの時間は全体の直径が1mくらいなのですが今回のは直径2.5mくらいありました。また高さが4m近くあって、巨大な存在感を放っていましたね。 
また機構もオリジナルのものとは逆転しています。元のアリスの時間は反射光で作っていたのですが今回は盤面が直接光る方式でつくりました。
そしてオリジナルは鏡時計が壁に映るのですが、今回は壁の時計が正しい時計になるように盤面自体が鏡時計になっています。 
これに関しては、ほぼ夜通しかかりっきりでなんとか作り上げました。 
特に大変だったのはレンズの調整ですね、いっつもこの作品の調整は非常にシビアなのですが、今回のこれは本当の本当にシビアでした(笑)。
なぜかというと、今回は物自体も大きいためレンズも大きいものを使ったのですが、レンズが重く筐体が軋みやすいのと、数mmずれるだけで映る像は大きくピントがボケてしまいますから、入念な調整が必要なわけです。しかもその調整は脚立の上から高所作業という(笑)。
ただこれはもともとFukaseさんが「俺これ好きだな」と僕の作品を見ていってくれて採用された演出でしたので、努力と気合と根性の連立方程式で頑張って作り上げました。
うちの学生さんもパーツの組み立てから手伝ってくれました。

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目が合う肖像画

落合 これは「本来動かないものを動くようにした装置」を作りたかったんですよね。そういう意味ではこれも映写装置の一つ、肖像画に見せかけたたまに動く映像装置。
「不気味で不思議な雰囲気がある洋館にしたい」というセカオワメンバーからのリクエストだったので、普段動かない、そして肖像画にしか見えない絵の目が突然動いたらびっくりするし、相当怖いだろうというアイディアが出てきました。
アートディレクターの方にアナログな絵画を描き起こしてもらい、僕らがそれに仕掛けを施しました。 
液晶の反射と、絵の上に乗せる額のガラスの反射と、絵自体の反射と、照明の色味の条件、とそれぞれのパラメータを揃えてやることによって、液晶をはめ込んだ目が、塗った絵画と判別つかなくなります。本来動かないはずの肖像画の視線が動く不気味な肖像画になりました。 
もともと人間の目って反射光沢が綺麗なので、ちょうどパネルの反射とライティング合わせて色味を揃えてあげればリアルに見えるかなと思っていたのですが、お客さんの反応も良くて嬉しかったですね。
苦労したところとしては目の明るさを絵画の部分と合わせるための調整と絵画をくりぬいた部分の処理。その点はアートディレクターの方とうちの学生さんが最終調整してくれました。

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気づくと人が消えている絵画

落合 これはVIP用の階段を上がった踊り場に設置された作品なので、一般のお客さんは見ることができなかった演出だと思います。
大きい額縁に入った絵画の中に『ANTI-HERO』のPVの時に使われたセットのセカオワメンバーが描かれています。
でもこれぱっと見は絵画に見えるんですけど、よく見ると炎が揺れたりメンバーが消えたりするんです。この絵を見上げながら階段を上ってくると、たまにメンバーが消える。 
これは下地としてグレースケールでプリントした絵があり、そこにプロジェクターで色を乗せ、さらに環境光を調整することで、プロジェクションの映像を絵画のように変えることを実現しています。
下絵にグレースケールを用いることでスクリーン自体のコントラスト比を上げて、さらに照明位置にプロジェクターで擬似照明を作ってやることで本当はついてない照明の光を強く見せて目を騙すなど絵画のようなコントラストと反射を作るためにいろいろな細かい工夫をやっています。
VIPのお客さんたちがカメラで撮影してくれていたのも嬉しかったですね。

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ガスゴースト

落合 これは液化ガスを噴出した場をディスプレイにするというもので、出力としては何もない空中にいきなりドクロが現れるという演出です。
ガスのディスプレイというのはウチのラボでも最近研究として扱っているものの1つで、そのうち論文もでてくると思います。
リフレッシュレートが高くて像も綺麗に出るので、研究としてもすごく面白かった。この作品は瞬間的にリアルな映像が現れ、次の瞬間には消えるので実際に見てみると、とても不思議な感覚でお気に入りです。
今回は論文にする前に、実験的に投入することで新型ディスプレイの実施検証としての役割も兼ねていましたが、お客さんの反応も良かったのでとても満足しています。
叫んで逃げる人もいて、まさにお化け洋館っぽさがありました。お客さんたちに楽しんでいただいて光栄でした。

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落合さんにとってのアナログ、デジタルとは?

落合 僕は持論として「もっとも高度に発達したデジタルはやがてアナログになる」と思っています。
このデジタル時代に、そんなアナログ性に回帰できるのがセカオワの素晴らしいところであり、今後デジタルばかりになっていく世の中にとって必要なことだと思うんですね。
ワクワクや魔法みたいな素敵な瞬間を作り出していくために科学技術を駆使していく。着地点を忘れてはいけない。計算機化の果てに冷たくて心が死んだ世界に向かってはならない。 

一見アナログに見えるものも高度なデジタルによって支えられていて、これから先はアナログもデジタルも区別がつかないような世の中になってくると思います。
でもそれはすごく魔法的で素敵な非日常が広がっていく世界なんだと思うのです。 

例えば、最初にも挙げましたが、今回の会場演出でも使用した『ランタン』。 
これは中で本物の炎が燃えているように見えるのですが、実は中に入っているのは震える電熱線であって燃えてはいないんですね。でもぱっと見では炎にしか見えない。ゆらゆら揺れててすごいリアリティがあるんです。
このアナログ感のあるもの、アナログな現象自体を内蔵されたコンピュータで制御して魅力的な演出空間を作り出していく。こうやってデジタルにアナログの皮をかぶせて造られたリアリティというのは体験としては実にアナログな体験として記憶されます。
こうなってくると、もうアナログとかデジタルとか境目なんてないようなものだと僕は思うんですよね。
あらゆる場所にコンピュータが溶けていく。このデジタルならではの制御性と、アナログにしかない高解像度な体験を作るということはある意味、魔法のような感じにつながってくると思います。
 
今の時代、プロジェクションマッピングやドローンなどデジタル制御とメカメカしい派手な演出が注目されがちですが、そうではなくちょっと感傷的というかアナログ的な、デジタル感のない演出をどれだけ作れるかというのはある意味メディアアーティストとしての挑戦だと思いますね。 
都市構造の中にある孤独や矛盾を語る、もしくは何も考えず原理に浸る、そう言った音楽メッセージが10年代以降増えているような気がします。
誰もが大きなコンテクストを共有できない中で、孤独と向き合っている。その中で、愛や魔法やファンタジーを作り出す。
ただ矛盾を指摘するだけじゃなくて物語性のある世界観を作り出していける『SEKAI NO OWARI』はまさにそういうバンドだし、クリエーターとして非常に刺激を受けました。 

これからも、僕は僕で自分にできること、メディアや芸術やコンピュータのあり方をこれからも考えていきたいと思います。
今回はすごく良い機会を与えていただきました。もう一度メンバーに最大の感謝を。

Interview/Text: 横田亮介 Photo: 保田敬介

クリエーター落合陽一が執筆した単行本『魔法の世紀』が2015年11月27日に発売されます。

タイトル :「魔法の世紀
発行所 :PLANETS
発行日 :2015年11月27日
定 価 :本体2300円(+税)
著 者 :落合陽一

(2015年11月16日「QREATORS」より転載)

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