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9000kmの距離を越え、世界の子どもたちの飢餓をなくすため働くリモートワーカー

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ひとことに「リモートワーク」といっても、実際にその働き方を選択する人たちの背景や実情はさまざま。今回は、なんとドイツと日本、9000kmの距離を越えてリモートワークを実践している女性をご紹介します。

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もといた職場を辞めることなく、海外移住を選択


まるでガレージのような開放感のあるコワーキング・スペースでパソコンに指を走らせる小林智子さん。彼女が暮らすのはドイツ南部の都市、ミュンヘン。ところが、その画面の先とつながっているのは東京のとあるオフィスです。

小林さんが働くTABLE FOR TWO Internationalは、2007年、先進国と開発途上国の間の「食の不均衡」をなくそうという理念のもとに日本で生まれたNPO法人。企業などの協力を仰ぎながら、社員食堂でのヘルシーメニューを推進したり、店頭キャンペーンを行うことで寄付を集め、アジアやアフリカの子どもたちに給食を届けるという活動を続けています。

―そもそも、小林さんはどういった経緯でリモートワークをされることになったのでしょうか?

小林さん(以下敬称略):私は、TABLE FOR TWO(以下TFT)の東京のオフィスで5年間働いていたのですが、2013年ころから、団体がほかの国にも活動を展開していきたいというフェーズになってきました。

そんななかで、研究者である私の夫が日本の大学を退職し、ミュンヘンの研究所で勤務をするという話が出てきたんです。そのふたつのタイミングが合ったので、TFTを辞めることなく、こちらに移っても引き続き活動していくという流れになりました。

―リモートワークのメンバーがいるというのはTFTにおいて初めてのケースだったんでしょうか?

小林:そうですね。TFTの活動は現在700社くらい参加企業がある大きなものになってきているのですが、フルタイム勤務しているスタッフが3名、パートタイムスタッフが数名というとても少ない人員で回しているんです。

TFTのモデルが、お預かりした寄付の上限20%を運営費・人件費に使うことになっていて、豊かな財源があるわけではないので、すぐに誰かを海外に派遣しようという風にはできなかったんです。そんななかで私の事情が発生し、ごく自然にきまった感じですね。

―同僚の方のリアクションはどのようなものだったのでしょう?

小林:日本から人がひとりいなくなってしまうので、そこをどうやってうまく引き継ぐかというのが一番の課題でした。大企業とは違い、ほかの部門からだれかが異動してくるというかたちは取れません。

幸い2014年4月から新しい方が来てくれることになり、3か月間一緒に企業訪問や資料作成などをして引き継ぎを行い、私は同年7月にドイツに移りました。なので、リモートワークをはじめてからは1年少し経った段階です。現在はフリーランスとして業務委託を受けているかたちですね。

―小林さんはリモートワークを歓迎する気持ちで始められたわけですね。

小林:はい。活動に共感、誇りを持ってやっている仕事なので、これを海外移住後も続けられるというのはすごくありがたいことでした。例えば10年前だったら、こんなにテクノロジーが充実していなかったので、遠隔で仕事をするのは難しかったんだろうなというのを思うと、すごく幸運だったと感じます。

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「この先子どもができても変わらず続けていきたい」


―現在されている具体的なお仕事の内容について教えていただけますか?

小林:日本でフルタイムで働いていたころは3つ大きな仕事がありました。様々な企業を訪問してプログラムの提案や報告をする「企業とのコミュニケーション」が3分の1くらい。次の3分の1が「支援先の管理」で、アフリカやアジアの農村地域の給食プログラムがどういう風に進んでいるのか管理すること。そして残りの3分の1が寄付金の流れのチェックなど、「バックオフィス」に近いような業務です。

私の後任に企業とのコミュニケーションの部分を引き継ぎ、私は引き続き支援先の管理と、運営をスムーズにまわしていくためのバックオフィス業務をここドイツで行っています。

もちろんそれに加えて今後ドイツでの立ち上げも行いたいというのがあるのですが、まだすぐに動ける状況にはないので、少しずつ準備をしているところです。

―パソコンが1台あればどこででも仕事ができるという状況になった一方、ほとんど人と直接会わずに仕事をするようになられたわけですよね。そのあたりはどう感じていますか?

小林:直接企業を訪問するような業務をもう少しやりたいという気持ちはあります。ただ、日本のスタッフとはSkypeなどでけっこう頻繁に顔を見て話しているので、仕事内容が大幅に変わってしまったという印象はありません

日本とドイツは8時間の時差があるのですが、例えば朝起きてパソコンを開けてチャット画面を見ると、スタッフのだれかとだれかはオンラインになっているとか、チャットでおしゃべりをしたりってこともあるので、ひとりきりという感じはしませんね。

―チャットで雑談もするんですね!

小林:「ドイツでこんなことがあった」とか「企業を訪問したときにこんな話題が出たよ」なんていうのは、こまめにやり取りをしています。同じオフィスで働いていれば、雑談などからその人がどういうことに興味があって、どういうことを大事にする人なんだっていうのが感じられたりするじゃないですか。

でも、メールだけのやり取りになってしまうと、そんなちょっとした話がどうしても出てこなくなってきてしまうので、チャットでなるべくそういう話をしたり、ちょっとした報告メールにもまめに返信をするということにも心がけるようにしていますね。

―小林さんが感じられているリモートワークの欠点についてもお伺いしたいです。

小林:私はリモートワークに入る前にすでに5年間働いていたというアドバンテージがあり、仕事の流れがわかっていたので、新規で始める方に比べるとハードルは低かったと思います。

自分がもしこれを新規でやっていたとすると、それこそ仕事の進め方って、ファイルの保存方法から何から、組織ごとにまったく違うじゃないですか。それがよくわからないままおいてきぼりというような不安感を持つこともあったんだろうなっていう風には思いますね。

また、日本で大きなイベントや記者発表などがあって盛り上がっているときにそれをリアルタイムで実感できないのは少し残念だなとは思います。

―ご家族の理解という点ではいかがですか?

小林:夫は私が仕事をすることに関しては大賛成です。これまでと同じTFTの人たちと仕事をしているっていうのは夫にとっても安心なんだろうと思いますね。

でも、例えば夫が朝に少し自宅で仕事をしてから出勤したいなんてことがあるんですが、私が電話会議をしていて、「気が散る」なんて言われたこともあります(笑)。今は朝6時から7時半は私が自由に電話会議などを入れてもいいということにしていて、7時半を超えてしまいそうなときには、相談をして融通するという感じにはしていますね。

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―小林さんが働くことで、生活費として、暮らしの足しにしたいというような部分はあったのでしょうか。また、今後についてはどう考えていらっしゃいますか?

小林:自分が食べていく分くらいはきちんと稼ぎたいというのはありますし、日本と同じ水準でというのは難しいにしても、この先子どもができても、変わらず続けていきたいなというのはすごく強く思っています。ただ、今後ドイツで団体も作っていくとなると、リモートワークではなく、働き方が変わってくる可能性はありますね。

「ちょっとした心の動き」を把握するために努めていること


―朝6時から働かれているというお話ですが、小林さんの1日、週のスケジュールを教えてください。

小林:基本的に月曜から金曜の朝6時から8時半くらいまでは時間を固定して働いています。ちょうど日本が午後でコミュニケーションが取りやすい時間帯になるので、なるべく朝に電話会議だったり、もしくはその日のうちに見てほしいメールのやり取りなどは終わらせるようにしています。

その後はごはんを食べたり、家事をして、10時から12時くらいまでは、朝相談した作業を進めるなどの時間にあてています。

日によっては今日のようにコワーキングスペースに来て、13時から18時くらいまで作業を進めることもあれば、ほかの用事が入って午後は仕事をしない日もあり、さまざまです。夕方までやるのは週に2回くらいでしょうか。

―リモートワークにあたって、どんなツールを使われていますか?

小林:個人のスケジュール管理は団体全体として以前からGoogleカレンダーで行っています。どの時間帯にだれがオフィスにいるというのがわかるようになっていて、私の勤務スケジュールもこれで伝えています。

チャットはGoogleのハングアウトで行い、電話会議ではSkypeappear.inという仕組みを使っています。appear.inはURLを共有していればそれでもう会議ができるので、とても便利ですよ。

―メールはもうあまり使わないでしょうか?

小林:いいえ、メールもすごく使います。さわりはチャットですることもあるんですが、最後はメールに残しておいたほうがあとから検索しやすかったりするので、メールのやり取りは日本にいるときより増えたんじゃないかなという気はしています。

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―リモートワークをする上でほかに心がけていることなどはありますか?

小林:日本にいたとき以上に「背景」の説明をするようにしています。なぜこういうことを準備、相談しているのか、こういう理由で資料がいついつまでに必要なんだ、そういったことは丁寧に説明をするようにしていますね。

ちょっとした心の動きや家庭の細かい事情なども遠隔では伝わりづらくなってしまうので、それを軽減するために、月に1~2回、個別のトピックを設けずに、全体的なアップデートのためのミーティングの時間も設けています。

―自宅を中心にお仕事をされているようですが、なぜコワーキングスペースを併せて利用されているのでしょう?

小林:リモートワークをはじめて3~4ヵ月したころから、週に1~2回は自宅じゃないところで仕事をしたいという気持ちが強くなりました。普通にドイツで働いて生活をしている人たちと知り合いたいというのと、買い物のとき以外は家にずっといるというような状況が精神衛生上あまりよくないかなと思ったんです。

ここに落ち着いたのはオープンな雰囲気があって、コミュニティビルディングをするためのいろんなイベントや、NGOやNPOのスタートアップに対するサポート体制があるからです。

イベントというのは、例えば毎週木曜にみんなでサラダを作ってお昼ごはんを食べるなんて恒例企画や、難民問題についてのディスカッションもありましたね。つい先日だと、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の未来の日がやってきた、なんて話題があったじゃないですか。その日に、みんなでポップコーンを食べながら映画を観るなんてイベントもあり、とても楽しかったですよ。

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―東京での仕事を辞めることなく、海外移住後も生き生きと働いている小林さん。リモートワークだからこそ、スタッフ間のコミュニケーションをより大切にしている姿勢が感じられました。本日はありがとうございました!

この記事の著者:溝口シュテルツ真帆(Maho Mizoguchi Stelz)



2004年に講談社入社。編集者として、『FRIDAY』『週刊現代』『おとなの週末』各誌を中心に、食分野のルポルタージュ、コミック、ガイドブックなどの単行本編集に携わる。2014年にドイツ・ミュンヘンにわたり、以降フリーランスとして活動、日本とドイツ間のリモートワークも実践中。南ドイツの情報サイト『am Wochenende』を運営。著書に『ドイツ夫は牛丼屋の夢を見る』(講談社)。

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