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自宅にいながら学び・教える。リモート講師という新しいワークスタイル

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自宅で学べるオンライン料理教室・自宅料理教室「チアフルキッチン」を主宰している柏木京子さん。

Skypeを活用して、遠方の方や子どもが小さくて教室に通いにくい方などに、おいしくてバランスのとれた家庭料理の作り方を教えています。リモート講座の実際と可能性についてうかがいました。

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柏木京子(Kyoko Kasiwagi)
自宅で学べるオンライン料理教室・自宅料理教室「チアフルキッチン」主宰。20代前半から料理家への師事、老舗レストラン、調理師専門学校などで学ぶ。出産時に、数か月寝たきり生活になるも食事のおかげで体力も生きる力も取り戻し、"食の大切さ"を実感。育児中から自宅や区の施設で料理教室を始め、コーチングの資格も取得。2011年、夫の転勤でアメリカ・サンディエゴへ。Skypeを使った料理教室を開始する。開催実績は200回を超え、のべ800人以上が参加する人気料理教室に。
【資格】日本野菜ソムリエ協会認定・ジュニア野菜ソムリエ/家庭料理検定3級/茶道・裏千家/生涯学習開発団認定・プロフェッショナルコーチ
ブログ:http://ameblo.jp/kenkoup
ホームページ:http://www.cook-coach.com/

 

自宅にいながら料理を実況中継で教える・学べるSkype講座


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-リモートワークで料理講座って、いったいどうやるのか想像がつかないのですが、実際の授業風景はどんな感じなのでしょうか?

柏木さん(以下敬称略):私が教えながら料理をしているところをSkypeで中継しているんです。生徒さんはそれぞれのご自宅で見ていただいています。

-料理の実況中継なんですね! Skype講座ならではの教え方の工夫はありますか?

柏木:わかりやすいレシピの工夫と解説、大切なところは印象に残るように見せるということです。

具体的に言うと、例えば包丁の使い方でも、上から下へ垂直に押すのではなく、ななめ前へ動かすんです。

盛りつけの際も、「ただ盛るだけだとこう、気をつけて盛るとこうなりますよ」と変化を見ていただくと、ご自宅でも実践してもらいやすいですよね。

-受講の流れはどのようになっているのでしょう?

柏木:3日前までにメールで当日の流れと、PDFファイルのレシピをお送りしています。

当日は各自プリントアウトして手元に置いて実況を見ながら学んでもらっています。

-何人ぐらいが同時に受講しているんですか?

柏木:1回の受講人数は6名です。視聴を安定させるため人数制限しています。

-生徒さんはどんな方が多いんですか?

柏木:おもに30~40歳代の女性です。

将来の結婚に備えてという方もいますが、子育て中で、お子さんにおいしくて安全な料理を食べさせたいという方が多いですね。なかには出産退院した日に参加した方や、赤ちゃんに授乳しながら受講するという方もいます。

料理の香りで「うっ」と来る時期もSkypeなら大丈夫なので、妊婦さんも多いです。

-習いたいけれど教室へ行くのが大変、という方が多いんですね。遠方の方もいらっしゃいますか?

柏木:日本には東京をはじめ東北から九州まで地方在住の方も。海外は、アメリカ、イギリス、タイ、オーストラリアなどです。

海外の方のなかには、日本で和食を学ぶ前に海外に住むことになったという方や、国際結婚をしたので改めてちゃんとした和食を習いたいという方などがいます。

ほかには、外出はできるし遠くもないんだけど、仕事や家庭で忙しくて自宅でしか受講できないという方、料理講座に通っていることを人に知られたくない方もいます。

女性はみんな忙しいですから、自宅で学ぶというのがライフスタイルに合っているんでしょうね。

-いろんな立場の方に便利なんですね。これまでに何人くらいを教えているんですか?

柏木:Skypeで教え始めてから4年目ですが、のべ800人くらい。6つの講座で常に30人くらいは生徒さんがいる状態です。

-生徒さんからはどんな感想がきていますか?

柏木:今まで自信がなくて義理のお母さんにお料理を持っていけなかった方が「持って行けた」と喜んでくださったり、何を作っても「おいしい」って言ってくれなかった家族が喜んでくれたなどの反応があります。

海外で日本の食と思いやりのよさを再確認したという方もいらっしゃいますね。

実はSkype講座を始める前には「料理講座は料理を食べられないと意味がない」と悩んだんです。でも「自分で作れば食べられるから別にいい」と言われて「あ、そうか」と気がつきました。

だから、Skypeのほうが、自分で作ってくださる率は高いんじゃないかと思います。昨日習ったあれが食べたい......じゃあ作ろう、となるわけです。

自分でやってみようという意欲が出てくる、それこそが、Skype講座の魅力なんです。

 

サンディエゴでの駐在生活がSkype講座のきっかけに


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-そもそも、なぜSkypeで料理講座を始められたのか、きっかけを教えてください。

柏木:2011年に夫の赴任でアメリカに行ったことが、Skypeで料理を教えるきっかけでした。

10年ほど前から自宅で普通の料理教室をしていました。でもアメリカでは生徒さんとつながれないから、料理教室ができない。Skypeを通して私のコーチに愚痴を言ったら「Skypeじゃだめなの?」と聞いてくれたんです。その場ですぐ、カメラをオンにしてテストしてみると、できそうだ、ということになりました。

-撮影はどのように?

柏木:今はキッチンで2台のカメラを使って撮影しています。

ノート型のパソコンの内蔵カメラで手元を映し、外付けのカメラをつなげてガス台を映しています。火を使うときはガス台を映し、切る、あえる、盛りつけるなどの作業の時は「カメラ変えますよ、見てくださいね」と声をかけて手元を映します。

-編集された動画でなく、Skypeで教えているのはどうしてですか?

柏木:実は、最初は動画がうまく撮れないところからスタートしたんです(笑)。

でも、やってみてSkypeのよさに気づきました。場所は離れているけれど、時間は同時進行ですから、生徒さんの「もう一回教えてください」という声にすぐ対応できるんです。

-Skype講座ならではのメリットはありますか?

柏木:リアルな料理講座をするときは、その日の一番の目的は、全員で食べる、ということになってしまいがちです。

時間までにやるべきことが終わるように配分しつつ、参加者同士楽しくおしゃべりしたり、私もおしゃべりしたいとなると、講座の内容がそんなに入らないんですね。それに講師の手元が人の影で見えなかったりということもあります。

Skypeは、講師の手元や火加減などポイントが見やすいんです。作るのは講師だけなので生徒さんが料理を学ぶことに集中できるというのがありますね。

-リアルな料理講座はもうやっていないんですか?

柏木:Skypeで見た料理を実際に食べて確かめてみたいという方などにむけて開催しています。昨年は東京と静岡で計7~8回開催しました。リアルな講座だけに参加してくださる方もいます。とても楽しいですよ。

-生徒さんの募集はネットですか?

柏木:そうです。おもにブログとFacebook、ホームページですが、ブログを見て私のことを知っていてくださる方が、会ったのをきっかけに申し込む。リアルに会ったのをきっかけにブログを読み、申し込むといった流れがあります。

それからSNSでの拡散もあります。おせち料理の講座をしたとき、講座後にひとりの生徒さんがFacebookにご自身が作ったおせち料理の写真をアップしてくれたんです。するとほかの生徒さんもみんなおせち料理をアップしてくれた。

「いいね!」や「すごい」「どうやって作ったの」なんてコメントがたくさんついて、そこから興味を持ってくださる方もいます。

 

料理を囲んで幸せな家族を増やしたい


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-Skypeで教えるとき、講師として心がけていることはありますか?

柏木:講座をやっている1時間はできるだけ素のままでいようと思っています。

「講師」となると、ちゃんとしなくちゃ、って思いがちですが、私が目の前で失敗して「こういうときはこうするといいんです」とフォローの仕方を教えれば、「失敗してもフォローできる」とか「京子さんも間違えるんだから、私もうまく出来なくてもいいんだ」って思ってくれますよね。

-失敗してもいいというのはすごく気が楽になりますね。でも「素のまま」に行き着くまで、紆余曲折があったのではないですか?

柏木:料理講座を始めた当初は、素敵な料理を提供するのが先生の仕事だと思っていて「こんな料理みんな知らないでしょう」って、奇想天外なレシピを開発して教えようと思っていたんです。

でもそれを続けていくうち、すごく苦しくなってしまいました。そんなに奇抜な発想はポンポン出てこないですしね。

Skype講座をするようになって、私がしたいのは自分の料理を広めることじゃない。みなさんに家で料理を作って欲しい、手作りの料理を囲んで家族との豊かな時間を過ごして欲しい、と気づきました。

そのためには、素敵な料理よりも、料理が苦手な人にも作りやすい料理のほうがいいんですね。

-苦手な人のハードルを下げるために、どんな工夫をしていますか?

柏木:レシピもわかりやすく、材料もスーパーで手に入る物しか使わないようにしています。それから私は「100%レシピ通りでなくてもいい。わが家の味を作ってください」と、あえてアレンジも話すんです。

多くの料理講座が「レシピを変えずその通り作ってください」と言うんですが、それだといちいち材料を買いそろえるのが面倒になって作らなくなってしまいがちです。

でも、たとえば小松菜がなかったら、ほうれん草でも青梗菜でもいいんです。

「あるものでやっていいんだ」って気がつくと、料理が作りやすくなります。「こっちのほうがおいしい」なんて材料を変えたり、お子さんのリクエストで好物を入れたり、その家庭オリジナルの「わが家の味」ができるんですね。

そこまでいくと料理を作りたくなる、家族においしいと喜ばれ、ますます作りたくなる、そんないい循環ができてきます。

私がしたいのは、そういった料理の力をつける講座なんです。Skypeという最初のハードルを飛び越えてきた方は、そこまで一気にいけます。

たとえば、生徒さんもご自分の家にいるのですから「今ちょっと冷蔵庫見てきてください。何がありましたか?」と聞いて、その場で「じゃあこれを使ってみましょう」とアイディアを提供できます。家である材料でできるので、すぐに作れますよね。

-今後はどんな料理講座を考えていますか?

柏木:料理講座ではコミュニケーションを取り入れて学ぶクラスもスタートしています。料理が真ん中で家族といい時間を過ごすのがテーマです。

コミュニケーションがうまくいくと、家族がもっといい関係になって、食事の時間がほっと安心な時間になる、そういうところをお伝えしたいと思っています。

 

ますます広がるSkype講座の可能性


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-少し私生活についても教えてください。柏木さんのご家族は?

柏木:夫と小6の娘の3人家族ですが、自宅の台所を使って料理講座をしていますので、講座中に帰宅した夫が、電子レンジを使うため画面に入ってしまう、なんてことも時々あります(笑)。

-ご家族は料理講座について何かおっしゃってますか?

柏木:家庭に影響がなければOKという感じですね。

家族がいてよかったなと思うのは、家族からのリアルな反応がわかることですね。家族がおいしいと言うものは、自信を持ってご提案できます。夫も娘も味に厳しい方なので。

試作、計量しながら、当日と3回は作るので、時間がたったときの味の変化、余ったときの利用法、なども体験しています。

-料理講座は週に何回くらいやっていらっしゃるんですか?

柏木:週に2~3回ですね。自分がSkypeでコーチングをしたり、コミュニケーションを学んでいる日もあるので、夜はほぼ毎日パソコンに向かっています。

-毎日のタイムラインはどんな感じですか?

柏木:夜のSkypeクラスがある場合のスケジュールですが、朝、家族を送り出した後は午前中パソコンの仕事、レシピを書いたりします。

昼には買い物に出かけ、夜の講座に向けて仕込みをして、夕方からは家族の食事作り、片付け、自分がお風呂に入って、髪を乾かしてポイントメイクをして5分前にSkype前に立つという感じです。

1時間から1時間半で講座を終わらせ、片付けて12時頃には就寝します。

-生活に全く支障なく、講座を開催できているんですね。

柏木:それがSkype講座のいいところです。子どもが小さい頃は寝かしつけてから講座をしていました。

家事と仕事の境目がむずかしいということはありますが、夕食後のプライベートな時間に家にいながら教えることができるのは、うれしいですね。生徒さんも同じように、寝る前のひととき楽しく学んでいただくという感じですね。

-料理のほかにSkype講座の作り方も教えていらっしゃるんですよね。

柏木:何人かの方から「Skypeで教えるってどうやったらいいの」とお問い合わせがあったので講座を作ることにしました。

Skype講座のメリットは手軽でノーリスクだということですね。

自宅で講座を開けば、場所を探す手間や移動時間もありません。会場代や交通費などの経費は全くかかりません。掃除が大変と聞かれるのですが、映るところだけきれいにすればいいですし、少人数でもいい。今の状況を変えずにこの状態から発信できることです。

-どんな講座がSkypeに向いているんですか?

柏木:どんな講座でもできますが、特に向いているのは、学びを活かして行動したり、自分で作業するもの、物づくりなどですね。英会話やコミュニケーション、プロフィールの書き方など、いろんな講座が開催されているんですよ。

-私もSkypeで講座を開きたくなりました!

柏木:ぜひ挑戦してみてください。Skypeでこんなこともできるんだ!と驚くと思います。

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-ありがとうございました。夜22時以降や早朝などの時間も有効に活用できるSkype講座。自宅で学びたい人と教えたい人の両方にメリットがあり、今後ますます広がっていくことが予想されます。

リモートワークのひとつの形として「講師」という働き方もあることを教えていただいた取材でした。

 
この記事の著者:曽田照子(Teruko Soda)

ライター。広告プロダクションでコピーライター経験後、1992年よりフリー。書籍、広告、WEB、フリーペーパー、情報誌など、多彩な媒体に執筆。得意分野は子育てと生活、女性の生き方。著書「ママが必ず知っておきたい!子どもに言ってはいけない55の言葉」メイツ出版、「『お母さんの愛情不足が原因』と言われたとき読む本」中経の文庫、「お母さんガミガミ言わないで!子どもが勉強のやる気を失う言葉66」学研パブリッシングなど。

 

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