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公正な採用活動実現へ、5月から「就職差別撤廃取り組み期間」を実施

2017年05月24日 17時17分 JST | 更新 2017年05月24日 17時17分 JST

面接で「本籍地」「親の職業」など聞いていませんか?

連合が昨年、加盟組合を対象に実施した「採用選考に関する実態把握のためのアンケート」の結果がまとまった。

2008年に続く2回目の調査だが、統一応募用紙等の使用状況が向上していないことや、就職差別につながる面接時の質問などが減少していない実態が明らかになった。この結果を受けて、連合は今年2月、就職差別の撤廃に向けた取り組みの強化を確認。5月から始まる「就職差別撤廃取り組み期間」(8月まで)を通じて、職場や地域での積極的な啓発活動を呼びかけていく。

まず、調査で何が明らかになったのか。そのポイントを見ていこう。

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連合「採用選考に関する実態把握のためのアンケート」(2016)

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統一応募用紙等「使用していない」企業は8年前より増加

職業安定法により、新卒中卒・高卒者の採用にあたってはそれぞれ「職業相談票(乙)」「全国高等学校統一用紙」を使用するよう定められている。また、新卒大卒者・中途採用者についても、厚生労働省は「参考例」を示し、就職差別につながる「本籍地・出生地」、「家族構成・家族の職業や収入」などの記入を求めることのないよう指導している。

ところが、こうした統一応募用紙等を「使用していない」民間企業は、新卒高卒者14.5%、新卒大卒者・中途採用者で24.3%にのぼり、2008年調査と比べて増えている。また、労働組合として、自分の企業が使用しているかどうか「わからない」という回答が3割を占めている。統一応募用紙等の使用を徹底する取り組みと同時に、就職差別撤廃の重要性をあらためて認識することも大きな課題として浮かび上がった。

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戸籍提出・身元調査は法令違反

選考前の戸籍謄(抄)本などの提出は、本籍地・出生地による差別につながる危険があり原則禁止されている。ところが、これらを今なお「求めている」企業が少なからず存在する。応募段階では、民間企業8.7%、国・自治体・公営企業7.2%、内定後では、それぞれ11.8%、12.9%。これは早急な対応が求められる。

また、採用選考にあたって身元調査を行うことも法律で禁止されているが、過去3年間に行っていたケースがあるとの回答が民間企業で1.5%、国・自治体・公営企業で0.7%あった。少数とはいえ、意識的に行われる行為であるがゆえに重大な問題だ。

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民間企業の1割で不適切な質問あり

個人の能力や適性を判断する機会である面接で、それとは関係のない質問をすることは就職差別につながりかねない。しかし、調査では[本籍地・出生地]、[家族構成・家族の職業や収入]を質問する民間企業が約1割もあった。

また、男女差別につながる[未婚・既婚や結婚の予定]については、民間企業の11.9%が質問。[残業や休日出勤ができるか]は36.6%、[転勤できるか]は43.9%と、多くの企業で質問されている。大半の企業は、「女性だけでなく、男女ともに聞いている」としているが、形式的な均等取り扱いにならないようチェックが必要だ。

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健康診断は採用後に実施を

労働安全衛生規則に、雇入れ時の健康診断が規定されているが、これは採用選考時の実施を義務づけたものではない。採否決定前の選考段階での健康診断は、免許など職務遂行に必要な要件がある特定職種に限定することが求められる。しかし、「すべての応募者」に選考前の健康診断を行っているという回答が、民間企業で18.6%、国・自治体・公営企業で15.8%もみられた。就職差別撤廃の観点から、その趣旨の徹底が必要な項目といえるだろう。

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啓発に取り組む組合が大きく減少

労働組合の取り組み状況の把握が今回調査の重要な目的の1つだが、採用選考時における個人情報の収集に制限があることを「知っていた」組合は、民間企業労組で32.6%、国・自治体・公営企業労組で34.0%にとどまった。これは、前回調査よりも減少している。

また、人権意識の啓発、差別問題の学習会や諸行動に「取り組んだ」組合は、民間労組で21.7%、国・自治体・公営企業労組で39.6%。これも前回調査より、大きく減少している。さらに、採用選考時における個人情報の収集に制限があることを知っていた組合のほうが、統一応募用紙等の使用比率や啓発への取り組み比率が高いことも明らかになった。

労働組合による取り組みが弱まることは、就職差別問題に対する認識の希薄化、企業・団体内におけるチェック機能の低下をもたらしかねない。職場の人権を守るために取り組みの点検と再強化が必要だ。

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アンケート概要 ※調査協力:労働調査協議会

調査目的:就職における公正な採用選考のための課題を把握するため

調査対象:連合構成組織の加盟組合

回収状況:民間企業(民間)761枚の計3648枚、国・自治体・公営企業(公務)761枚の計3648枚

実施時期:2016年6月配布、9〜10月回収

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【就職差別撤廃のために知っておきたいワークルール】

性別による差別的取り扱いの禁止と「統一応募用紙等」の取り組み

採用選考段階での性別による差別的取り扱いは、男女雇用機会均等法で禁止されているものの、罰則はない。今後は、性別以外のさまざまな差別を事由とする雇用関係全般における差別禁止の法整備が必要である。

一方、「求職者の個人情報を収集することを制限する」という方法で、長年にわたって就職差別撤廃の取り組みが積み上げられてきた。これは、部落解放同盟の就職差別反対の闘いの中から起こり、部落差別はもとより、家庭環境・資産や家族関係による差別、親の職業などによる差別、思想信条による差別など、あらゆる差別に結びつく個人情報の収集を許さない取り組みとして前進してきた。

この取り組みは1973年に全国化し、それ以降、新規高卒者の就職応募書類は「全国高等学校統一用紙」、新規中卒者は「職業相談票(乙)」を使うよう、厚生労働省・文部科学省を中心に指導が行われるようになった。またその後、大卒者の「参考例」が示され、さらに市販のJIS規格の履歴書などにも同様の趣旨の徹底がはかられている。

そして、1999年、職業安定法改定の中で、「求職者等の個人情報の取扱い(第5条の4)」が明記され、「人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項、思想及び信条、労働組合への加入状況」に関する個人情報の収集を禁じる大臣指針が定められた。

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連合は「就職差別撤廃」の取り組みをどう位置づけているのか。調査結果をどう受け止め、今後の取り組みを進めようとしているのか。連合連帯活動局の大木哲也局長に聞いた。

職場における人権侵害は絶対あってはならない

―調査の目的は?

連合は、1989年の結成以来、「人権を守る」取り組みを重要な課題と位置づけてきた。私たちが安心して生活し、働き、労働組合活動をするためには、社会が平和で安定し、人権が守られていることが大前提である。なかでも、労働組合として、職場における人権侵害はあってはならないという立場で、就職差別撤廃に向けての人権教育や啓発活動に取り組んできた。今回調査は、その現状と課題を把握するために実施したものだ。

実は毎年、構成組織地方連合会に対する調査で、「加盟組合に就職差別撤廃に向けた取り組みの要請をしていますか」と聞いてきたが、この間「していない」の回答が増えてきていた。その理由には「職場にほとんどそういう差別は存在していないから」という答えが多く見られた。

今回の調査結果からは、残念ながら、差別がなくなったのではなく、労働組合が職場の採用選考の実態を十分把握していないことが明らかになった。また、啓発などの活動も大きく減少していることがわかった。

「知らない」では済まされない

―何が「就職差別」にあたるのか?

端的に言えば、「本人の適性・能力」以外のことを採用の条件にしてはいけないということだ。

「本人に責任のない事項」「本来自由であるべき事項」、例えば出身地や親の職業、家庭環境などの情報を採用選考にあたって収集することは、明らかに差別であり、人権侵害だ。また結婚や出産の予定に関する質問も採用選考では必要ない。日本で、特に問題になってきたのは女性差別と部落差別だが、今後はLGBTなど性的指向・性自認に関する差別も大きな課題になってくるだろう。

ところが今、多くの職場では、本人の適性・能力とは関係ない情報収集は差別につながるという認識が薄れ、労働組合の関心も低下しているのではないか。しかし、人権に関わる問題は、「知らない」では済まされない。差別する側は悪気はないとしても、差別される側は深い傷を負う。無知や無関心こそが、差別を助長し、はびこらせてしまう。労働組合は、職場における差別・人権侵害は許さないという姿勢を明確にし、チェック機能を果たしていく必要がある。

―「就職差別撤廃取り組み期間」に向けては?

今回調査の結果を重く受け止め、あらためて差別撤廃の取り組みを強化していきたい。連合本部では、毎年「人権フォーラム」を開催しているが、今年は5月26日に構成組織・地方連合会の担当者を対象とした「就職差別撤廃」に特化した学習会を開催する。また、就職差別は部落差別に大きく関連する課題であることから、連合も参画する「部落解放中央共闘会議」と連携して行政指導の徹底を求める政府への要請行動も実施したい。就職差別を迅速に解決するためにも「人権侵害救済法(仮称)」の制定を引き続き求めていきたい。

連合として構成組織にお願いしたいのは、加盟組合に対する学習会などの啓発活動と職場の実態把握だ。そこで、統一応募用紙等を使用していない、面接で法令違反の質問がされているなど問題があれば、労使協議や事務折衝の場で取り上げ、是正に向けた対応を求めてほしい。また地方連合会は、今回の調査結果を地方労働局や地方自治体に周知し、その是正指導を要請してほしい。

地域によって差別問題に関する認識の差はあるが、「知らない」ところで、いつのまにかはびこるのが差別の怖いところだ。繰り返し繰り返し発信し、警笛を鳴らしていくことが連合の役割だと思っている。ぜひ、職場、地域で積極的な取り組みを進めてほしい。

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大木哲也 連合連帯活動局長

※こちらの記事は日本労働組合総連合会が企画・編集する「月刊連合 2017年5月号」に掲載された記事をWeb用に編集したものです。