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すべての働く者の処遇を改善! 「底上げ・底支え」「格差是正」で経済の好循環実現!

2016年02月07日 02時51分 JST | 更新 2017年02月04日 19時12分 JST

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2016春季生活闘争がスタートした。

3年連続で「月例賃金の引き上げ」にこだわり、これまで以上に賃上げの社会的広がりを追求する闘いだ。

労使交渉のポイントは何か。「底上げ・底支え」「格差是正」をどう具体的に実現していくのか。須田孝連合総合労働局長に聞いた。

サプライチェーン全体で付加価値の適正分配を

−2016春季生活闘争のポイントは?

2014年・2015年に続き、2016春季生活闘争においても、「月例賃金」にこだわって、賃金引き上げをめざすスタンスに変わりはない。そのうえで「底上げ・底支え」「格差是正」にこだわり、取り組みを進めていく。

わが国は、超少子高齢化・人口減少という構造問題を抱える中で、マクロにおける分配のゆがみや非正規雇用が拡大し、そして所得格差が増大している。こうした将来不安の払拭、自律的な安定成長に向けて、すべての働く者の賃金の「底上げ・底支え」「格差是正」の取り組みが不可欠となっている。

そのため、今年は、これまでの春季生活闘争が果たしてきた日本全体の賃金決定メカニズムを生かしつつ、大手追従・大手準拠の構造からの転換に挑戦し、地場の中小企業で働く人々、非正規雇用で働く人々、労働組合のない職場で働く人々の処遇改善により光を当てた取り組みの強化を強く打ち出した。

また、サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正な分配に資する公正な取引の実現は、産業政策の観点からも労使共通の課題であり、春季生活闘争を機に、通年的に取り組みを進めていきたい。

中小地場・非正規により光を当てていく

−その背景や課題意識とは?

デフレから脱却し自律的な成長へかじを切るためには、かつてインフレを抑えた時のように労働組合が旗振り役となり、多くの仲間がベクトルを合わせて大きな運動のうねりをつくっていくことが必要だ。インフレは1年で抑えることができたが、デフレからの脱却には月例賃金引き上げを継続する必要がある。また、2014年・2015年の闘争を通じて、長きにわたり一定水準にあった賃金を引き上げることができたが、格差は依然として拡大している。

したがって、「総合生活改善闘争」の旗印のもと、「月例賃金の引き上げ」にこだわる闘争に引き続き取り組むとともに、「底上げ・底支え」「格差是正」によりいっそう重点を置いた闘争を展開していくことが必要だと考えている。

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足元においては、GDPに占める個人消費割合の伸びは鈍く、また、家計消費支出も2014年4月の消費税増税前の水準に戻っていない。所得が継続して上昇していく、少なくとも減少はないという安心感が生まれなければ、家計はサイフのひもを緩めない。

日本の人口は2050年に1億人を割り込むと想定されており、中でも労働力人口の減少は全体のそれに先行する。労働力人口は生産人口であるとともに消費人口でもあり、この層の減少は経済の縮小を招く一つの要因となる。国内総生産(GDP)は[人口×1人当たりGDP]に分解されるが、こうした社会状況において現在のGDP規模を維持しようとするならば、1人当たりGDPを増やし、所得を増やさなければならない。

大手追従・大手準拠の賃金決定メカニズムにおける波及構造を転換する


−「底上げ・底支え」「格差是正」を具体的にどう進める?

第1に、規模間格差是正と公正取引の実現だ。

日本においては、企業規模の違いにより労働条件に歴然たる格差がある。2014年の闘争において、十数年ぶりに賃上げを実現し、2015年の闘争においてもその流れを継続することができた。しかし、残念ながら一方で、「格差の是正」どころか、「格差の拡大」を招いてしまった。1989年の連合結成以降の賃上げ状況を見ると、中小組合は1995年を境に、労働組合全体の賃上げ率を下回る結果となっている。

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春季生活闘争の回答引き出しのヤマ場で大手組合が回答を引き出し、それが中堅・中小・地方(地場)の相場に波及し、さらに、その民間の賃上げ結果は人事院勧告や最低賃金審議会へも影響を及ぼす。この日本社会全体の賃金決定システムは現在も機能しているが、格差の拡大に歯止めをかけ、「底上げ・底支え」を実現するためには、従来の手法に加え、新たな挑戦が必要だ。

そこで、「2016春季生活闘争方針」では、最大のヤマ場でいわゆるパターンセッターとなる大手組合が引き出した回答を波及させるにしても、賃上げ額・率だけを波及させても「格差」の是正はできない。各社の賃金などの課題解決により、主体的に取り組むことが不可欠であることから、「大手追従・大手準拠などの構造を転換する取り組みにチャレンジする」ことを確認した。

−「構造転換」とは?

ここでいう「構造転換」は、大きく3点を意識している。

1つは、中小組合自身のマインドチェンジだ。60年余り続いている「春闘」方式は、日本の労働組合の組織形態が「企業別組合」であることの弱点を克服しようと始まった。「産業別組合」を結成し職種横断的な賃率形成をめざしてきたが、なかなか実現していない。そうした中で、中小組合自身が、大手組合の回答(要求ではなく)が示された後、その水準を参考とする要求を提出することが一般化している。これは、大手組合を上回る、あるいは同額の回答を得ることをみずから放棄してしまっているということだ。そして、2つめに、そのことを中小経営者も当然のように認識している。さらに、3つめに、社会一般の多くの人たちも、そのことを当然視している。その結果、規模間格差は拡大していく。この構造を、今こそ転換しようということだ。それは、「春闘」のトリクルダウン効果に頼りすぎてきたことへの反省でもある。

自由で対等な立場か公正な取引の検証を


−労使交渉のポイントは?

経営側は「労働条件決定は個社の支払能力の範囲で決定する」と主張している。この主張をストレートに受け止めるつもりはないが、「支払能力論」をいうのであれば、企業規模によらず「個社の支払能力」を踏まえた処遇改善を行ってほしい。また、結果として中小企業の支払能力が大手企業を下回っているとすれば、その原因解明と改善に労使が取り組むべきだ。

「付加価値を決定するのは消費者である」といわれる。つまり、サービスやものづくりに要したコスト論ではなく、消費者に受け入れられる品質と受け入れられる価格を提供しなければ、付加価値も支払能力も高まらない。

また、本質的に自由で対等な立場での取引がなされているかも検証していく必要がある。商慣行を含めた公正な取引がなされなければ、生み出した付加価値は、自社に残らずに発注先に吸収される結果となるおそれがある。下請的立場に立たされている多くの企業では労働条件を改善するための原資が確保できていない実態があり、それが中小企業で働く労働者の低賃金につながっている点も否定できない。

新たな挑戦を成功させるためには「賃金の上げ幅」だけではなく、「個別賃金の絶対値にこだわる取り組み」の展開の強化が不可欠だ。元々の賃金水準に差がある中で「率」を追求していては、たとえ大手と同率の引き上げを獲得しても、格差は拡大してしまう。

非正規の処遇改善へ職場点検の実施を


−非正規労働者の処遇改善の取り組みは?

全国で2000万人を超えた非正規労働者、特に不本意ながら非正規という雇用形態で働いている315万人の雇用安定に資する取り組みが非常に重要だ。

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今年の春季生活闘争では、総合的な労働条件向上の取り組みを第1に掲げ、「正社員への転換ルールの導入促進・明確化」「無期労働契約への転換促進」の取り組みを進めていく。非正規労働者の時給引き上げ要求水準については、「誰もが時給1,000円」を掲げるとともに、時間給が1,000円超の組合については、中小の賃上げ分6000円を所定内労働時間(「賃金構造基本統計調査」から月163時間)で除して得られる「37円」の時給引き上げを要求水準とすることとした。

非正規労働者の中には「働き方に見合った処遇がなされていない」という問題も存在する。また、いわゆる「ブラックバイト」と称される問題もある。こうした状況に対しても、電話相談などを実施し、広く対応していきたい。職場では、雇用形態の違いだけをもって正社員と異なる労働条件がないか、非正規労働者の処遇について点検を行い、合理的な理由のない格差については早急な改善に努めてほしい。また、職場の中で具体的な勤怠管理を行っているラインマネージャーが基本的なワークルールを知らないことから発生する問題も多くある。こうした事態に対しては職場全体でワークルールの周知をはかるとともに、社会全体としても基本的なワークルールの周知を進めていく必要がある。

個別賃金の絶対値(水準)にこだわる取り組みを

連合は「底上げ・底支え」のために、すべての働く者のミニマム基準として、生活可能な賃金水準を保障する観点から、「連合リビングウェイジ」にもとづき、47都道府県別に「最低到達水準」を設定した。また、「連合版賃金構造調査」ともいえる「地域ミニマム運動」結果(38万人の個別賃金データ)から都道府県別・産業別の賃金特性値を算出し、広く社会に発信し、賃金水準の相場観を構築していくこととした。さらに、要求の組立においても「あらゆる手段を用いてそれぞれの産業全体の『底上げ・底支え』『格差是正』に寄与する」内容とすることを確認した。総額人件費(月例賃金)の改善原資の配分を考えるうえでも、自社の賃金実態を精査し、課題を解決する配分を要求内容としてほしい。

課題山積の中で取り組む2016春季生活闘争であるが、それは将来への安心と希望を確立するための労使の社会的役割と責任だ。そのことを、すべての企業ごとの組合段階で訴え、労使交渉を進めるとともに、社会全体の運動として「クラシノソコアゲ応援団!2016RENGOキャンペーン」への積極的な参加もお願いしたい。

須田さん

須田 孝

連合総合労働局長

■豊富なデータで2016春季生活闘争の課題を解説

組合役員必携・必読の書!「連合白書」

連合白書表紙

2016春季生活闘争の方針と課題すべての働く者の処遇改善!

「底上げ・底支え」「格差是正」で経済の好循環実現!

企画・編集:日本労働組合総連合会 (2015年12月28日発行)

頒価:800円(A4判・120頁)

●お申し込みは連合HPから。

 

 

 

※こちらの記事は日本労働組合総連合会が企画・編集する「月刊連合 2016年2月号」に掲載された記事をWeb用に編集したものです。