道幸せんせいとワークルールを学ぼう!テーマ:労働時間

どこまでが労働時間なのか、これは、賃金にも関わる大事な問題。
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ワークルールを知っていれば、職場のトラブルを未然に防止できたり、自分や仲間そして部下を守ることができます。ワークルール検定は、クイズ形式で楽しみながら、必要な知識を身に付けることができます。日本ワークルール検定協会の道幸哲也代表理事の解説で、深く学びましょう!

「着替えの時間は労働時間?」

「タイムカードを押してから後片付けをしているけど、これってサービス残業?」

そんな声をよく聞きます。どこまでが労働時間なのか、これは、賃金にも関わる大事な問題。ワークルールでは「労働時間」をどう考えているの?

問 次のうち労働時間にあたるものをすべて選びなさい。

① ガードマンの仮眠時間

② タクシー運転手の客待ち時間

③ 昼食休憩中の電話当番の時間

④ 居酒屋で同僚と会社の将来について話し合っている時間

解説 使用者の指揮命令下において就労した時間

最近、「働き方改革」でも、長時間労働の是正が大きなテーマになっていますが、ここでは、そもそも「労働時間」とは何かを考えてみましょう。

労働時間とは、広く「拘束時間=実働時間+休憩時間」と考えることができます。ただし、労働基準法32条の「1日8時間、週40時間」の原則が適用される労働時間とは、このうちの「実働時間」を指しています。

労働法上の「労働時間」として議論されているのは、通常、労基法上の労働時間である実働時間ですが、これも実は明確な定義はありません。一般的には判例などから「使用者の指揮命令下において就労した時間」と解されています。

最高裁は、労働時間を、使用者の「指揮命令下での就労」の有無という「客観的基準」で決まるとして、⑴実作業にあたり義務付けられた作業服及び保護具等の装着、そこから準備体操場までの移動、⑵副資材等の受出し及び散水、を労働時間と認めました(三菱重工業長崎造船所事件・最一小判平成12.3.9判例時報1709号122頁)。

また、ガードマンの仮眠時間について、仮眠時間であっても緊急時に対応せざるをえないこと、仮眠の場所等について一定の拘束を受けていること等から労働時間としました(大星ビル管理事件・最一小判平成14.2.28労働判例822号5頁)。

したがって、①のガードマンの仮眠時間は労働時間とみなされます。使用者の指揮命令下にあれば具体的な就労の事実がなくとも労働時間にあたります。

②は客待ちが、③は電話当番が、いずれも指揮命令下ということになり、労働時間とみなされます。

それに対して、④の居酒屋での話し合いは、たとえ会社の将来についてより良いアイデアが出たとしても、使用者の指揮命令下とはいえないので労働時間とは認められません。

会社の会議室ならば認められるかもしれませんが...。

[正解] ①、②、③

道幸哲也 どうこう・てつなり

(一社)日本ワークルール検定協会 代表理事

北海道大学大学院法学研究科修士課程修了。小樽商科大学商学部助教授、北海道大学法学部教授、放送大学教授などを歴任。2007年、NPO法人職場の権利教育ネットワークを設立。「ワークルール検定」の立ち上げに尽力し、2013年に設立された検定協会の代表理事に就任。著書に『不当労働行為救済の法理論』(有斐閣)、『15歳のワークルール』(旬報社)など。

ワークルールに関する一般的な知識を問う検定試験。厚労省も後援。

問合先(一社)日本ワークルール検定協会 http://workrule-kentei.jp/

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