「人と違うこと」を責めない~誰にとっても生きやすい社会とは?~

これこそが私の”理想”の“多様な”空間だな、と開催を重ねる度に強く感じる。

私が 名古屋あおぞら部 を始めて、10ヶ月が経った。

7月までに7回開催し、のべ170人が参加してくださった。

普段はナゴヤドーム(名古屋市東区)近くの矢田コミュニティセンターを借りて開催するが、時には近くの東山動植物園へ遠足と称して出かけるなど、参加者(特に高校生)が参加しやすく、そして楽しめる空間になるように努めている。

東山動植物園内に走るモノレールと東山スカイタワー

そもそも私が名古屋あおぞら部という活動を始めた経緯は、自分の高校時代の経験にある。

高校生の頃、私は既に「もしかしたら自分は同性愛者かもしれない」と思っていた。

しかし、学校の友人や地元の知り合いなど、身近な人たちの中にLGBT当事者である(と明かしている)人は一人もいなかった。

テレビの中には"オネエ"や"ホモ"の人たちもいたが、「気持ち悪い」「変態」といったようなネガティブな描き方が多かったように思うし、ニュース番組や新聞でLGBTという言葉に出会ったこともなかった。

学校や地域の図書館にも、LGBTに関する本はほぼなく、あったとしても「同性愛者が必ずしもエイズで死ぬわけではない」といったようなとても初歩的で遅れた内容しか記載がなかったような記憶がある。

だから、当時の私にとってLGBT当事者は『自分の地元からは遙か遠くにある"2丁目"にだけ生息している特別なとても可愛そうな人たち』という認識が強かったし、地元で当事者に出会えるまでは心のどこかでこの認識を信じて疑わずにいた。

いや、疑えずにいた。

自分が住む地方に、LGBT当事者が自分と同じように生きているなんて想像して出来なかった。

それでも、高校生の私はLGBT当事者という人に会ってみたかった。

実際に会って話して、「同性愛者かもしれない」という自分の生き方を少しでも肯定して欲しかった。

名古屋で毎年5月に開催されているNLGR+でのバルーンリリースの様子

インターネットで調べたところ、「LGBT当事者のサークル」というものがたまたま地元でも開催されていると知り、幸運にも参加することが出来た。

そして、私は救われた。

人生で初めて自分以外の「LGBT当事者」という人に出会って、自分の生き方を肯定してもらえて、「LGBT当事者」という人間でもこんな風に社会の中で生きていくことが出来るのだと、初めて知ることが出来た。

先日、当時「LGBT当事者サークル」で出会った社会人の方と3年ぶりに再会した。

その方は私を見て微笑みながら言ってくださった。

「りぃなちゃん、明るく元気そうになっていて安心した。当時は不安げな感じがすごく出ていて、とても心配していたよ。今はとても元気そうで本当に良かった。」

3年前に1度出会っただけなのに覚えていてくださったのはもちろん、当時からずっと心配して見守っていてくださったことが本当に嬉しかった。

私は今でも、あのとき「LGBT当事者サークル」を開催してくれた方には感謝してもし足りないと思っているし、あのときサークルに参加できず自分の生き方を肯定されないままだったら、こんな風に元気に生きている自分はいなかったかもしれない。

だからこそ、私は今後も名古屋あおぞら部を続けるという形で恩返しをしていきたいし、自分と同じように悩んだり苦しんだりしている人にとって、救われるきっかけのひとつになれたら嬉しいと思う。

名古屋あおぞら部を開催している矢田コミュニティセンター

名古屋あおぞら部は月に1度のペースで開催している。

開催時間も出来るだけ長くして、参加者がそれぞれ都合の良い時間にふらっと立ち寄れるような環境を目指している。

参加者の年齢は高校1年生(15歳)~60代までいる。

自分のことを「LGBT当事者だ」と自認している人もいるし、「自分がLGBTかどうかよくわからない」という人もいる。

LGBT当事者を家族や友人に持つ人もいる。

最近では、高校や大学の授業でLGBTについて知って興味を持ち「もっと知りたいと思った」と来てくださる方もいるし、教育や福祉に関わる仕事の方が勉強をかねて参加されることもある。

参加者の住んでいる地域も開催地の名古屋だけでなく、愛知県内各地や近隣の岐阜県・三重県からも多くの参加者が来てくださっている。

これこそが私の"理想"の"多様な"空間だな、と開催を重ねる度に強く感じる。

元気いっぱいの高校生も人見知りの大学生もいる。

話を盛り上げてくれる社会人もいるし、少し離れてみんなを微笑んで見守る社会人もいる。

結びつけているのは"LGBT"という言葉だけ。

住む場所も年齢も職業も、これまでの生き様もみんな違う。

でも私たちは「私たちはみんな違う人間なんだ」「社会は多様なんだ」ということを知っている。

だからこそ、「人と違うこと」を決して責めない。

これこそが私の"理想"の空間であり、そして誰にとっても生きやすい空間なのではないだろうか。

【名古屋あおぞら部・今後の予定】

8月26日(土)14~20時(途中入退室OK)

9月23日(土)14~20時(途中入退室OK)

開催場所は矢田コミュニティセンター(名古屋市東区・ナゴヤドーム前矢田駅から徒歩5分)

参加の予約は不要です。

LGBT当事者はもちろん、LGBTについて気になっているという方も当事者を家族や友人に持つ方など、みなさんのご参加をお待ちしています。

詳しくはこちらまで

名古屋あおぞら部Twitter @nagoya_aozora

メールでの問い合わせ nagoya-aozora@excite.co.jp

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