地方×LGBT×仕事

LGBT当事者が抱える仕事にまつわる悩み。状況を打破しようと、企業と学生の交流イベントが広がっている。

昨年10月から続けている 名古屋あおぞら部(Twitter @nagoya_aozora )。

5回目の開催となった去る4月8日(土)には悪天候の中にも関わらず、会場となった東山動植物園に20人ほどが集まった。

今回は高校入学したての15歳から、素敵な社会人の同性カップルの方まで、これまで以上に幅広い年齢の方にご参加いただけた。

名古屋市の東山動植物園のモノレールと桜

10代LGBT当事者の不安とLGBT×アイドル!? という以前の記事でも紹介したとおり、LGBT当事者の若者や自身のセクシュアリティに悩む若者の一番大きな悩みは、「今後の将来」に関することだ。

名古屋あおぞら部の中で10~20代の当事者同士で話すと、「学校内にLGBTに対する差別的な発言が多くて、カミングアウトすることができず学校が辛い」「LGBT当事者であることを隠さずに就職したいけれど、そんなこと受け入れてくれる会社はあるのか不安」という2つの悩みがよく出る。

前者については、ここ数年で学校にLGBTに関する出張授業を行うNPO団体などが増えている。もちろんまだ十分ではないが、少しずつ各学校へ理解が広がってはいると考えられる。

問題は後者について、だ。

どこの会社がLGBTに理解を持っているのか。

実際働く中で社内にカミングアウト出来る空気があるのかどうか。

多くの学生当事者がこの悩みを抱きながらも、自身がカミングアウトしていないが故に、なかなか企業の担当者に聞くことができないでいる。

そういった状況を打破しようと、LGBTをキーワードにした企業と学生の交流イベントが東京など大都市を中心にここ数年広がっている。

そして今回こういったイベントを初めて地方で行おうという動きがある。

6月10日(土)に名古屋で行われるイベントのタイトルは、Working Rainbow EXPOだ。

今回イベントの実行委員の代表であり、on the Ground Project(株式会社 エニシア)代表の市川武史さんにお話を伺った。

市川武史さん

―今回のWorking Rainbow EXPO はどのようなイベントでしょうか?

市川「企業の経営者・人事・ダイバーシティ担当者と、LGBT&アライの学生・社会人が集い、年齢や業種を超えて『自分らしく働く』ことについて考えるイベントです。中部地方では初となります。」

―これまでこのようなイベントは東京や大阪では開催されていますが、中部地方で開催する目的は何でしょうか?

市川「昨年2016年は、この中部地方の三重県伊賀市がパートナーシップ宣誓制度を開始したほか、岐阜県関市がLGBTフレンドリー宣言をするなどLGBTに関連した様々な話題をテレビ、新聞、雑誌などで毎日のように目にするようになりました。企業からのLGBT/ダイバーシティに関する研修の依頼も急増しています。」

企業向けに研修を行っている様子

市川「中部地区の企業の経営者・人事担当者・ダイバーシティ推進者の方からも、

『最近、企業説明会や面接時に学生の方からLGBTの取り組みについて質問を受ける機会が増えている』

『LGBTの人は就職活動や職場でどんな事に困っているのか話を聞きたい。』

『LGBT/ダイバーシティの取り組みをしている企業の取り組みを知りたい。』

といったお話を多くいただいています。

『既に取り組みを行っている企業』・『取り組みを行いたい企業』・『取り組みを行っている企業を知りたい学生や社会人』、この三者が一堂に会する機会を作りたいと思い、企画しました。」

-LGBTやダイバーシティという外資系の大企業ばかりのイメージですが、今回のイベントには地元の中小企業が多いそうですね。どういった理由があるのでしょうか?

市川「LGBT/ダイバーシティの取り組みというのは、就業規則などの制度を整えるだけでは難しく、多様性を受け入れていく組織風土を醸成していくことが大切です。私はこれに中小企業は適していると考えています。

中小企業は大企業に比べると社員数も少なく組織の階層も少ないため、大企業に比べると多様性を受け入れる風土をつくりやすいのです。

また、人材不足で悩んでいる中小企業が多いからこそ、『多様性を受け入れ、社員一人ひとりが個性を活かして活躍できる』職場づくりが今とても大切になっています。」

実行委員のメンバーと打ち合わせしている様子

市川「LGBT/ダイバーシティの取り組みをしている企業というと大企業をイメージすることが多いですが、実を言うと中部地方では中小企業の方が上記のようなことに気づいてLGBTの取り組みを進めている状況です。

素晴らしい取り組みをしている企業もたくさんあるので、参加者の方に『こんな企業が身近にあったんだ!』と感じて頂くことが出来たら、と考えています。」

―市川さんは就活中の学生たちから相談を受けることも多いそうですが、どのような相談が多いですか?

市川「ここ数年で学生から『どこの会社がLGBTに理解があるの?』と聞かれることがとても多くなりました。

もちろん、『就職活動では本当の自分の事を話す事が出来ないけれど、本当はカミングアウトして働きたい。』というLGBT当事者の学生から聞かれることも多くありますが、LGBT当事者ではないという学生からの質問も多いです。

彼らは『多様な働き方・生き方を受け入れる素敵な会社を探したい』という考えで就職活動をする中で、企業を見極める指針の一つとして『LGBTに関する取り組みを行っているか』という点を見ているようなんです。

こういったことから、企業にとってLGBTに関する取り組みを行うことはその学生がLGBT当事者か否かに関わらず、『他社よりも多く優秀な社員を採用できる』ことに繋がると考えています。」

LGBT当事者にとっても、そうでない人にとっても、とても意味のあるイベントになるだろうと期待している。

そして何より、こういったイベントを知ることによって、LGBTに関心を持つ経営者が増えたらとても嬉しい。

Working Rainbow EXPO HP

■開催概要

・2017年6月10日(土)13時~18時30分

・会場:国際センターホール 別棟ホール(名古屋駅から徒歩7分、国際センター駅から直通)

〒450-0001 愛知県名古屋市中村区那古野1-47-1

・参加者:LGBT/ダイバーシティの取り組みをしている企業に関心を持っている学生、求職者、社会人 200名ブース出展企業10社(30名)、企業関係者20名程

■企業の参加方法

・ブース出展 10社

・オブザーバー(経営者、人事、ダイバーシティ担当者)参加

■一般参加者

・学生、求職者、社会人は参加無料

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