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デフレ脱却のために、リングからボルテージMAXへ!ここからが正念場だ

2015年04月14日 16時03分 JST | 更新 2015年06月13日 18時12分 JST

【神津里季生のどまんなか直球勝負!】

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先行組合の回答のヤマ場を迎え、すべての働く仲間への波及を目指し

2015春季生活闘争は、長引く「デフレからの脱却」を確実なものとし「経済の好循環」を回していくために極めて重要な闘いであり、総力を挙げた取り組みを展開している。

この間の経過を振り返れば、昨年12月16日、「経済の好循環の継続に向けた政労使会議」が取りまとめた報告書に「経済界は、賃金の引き上げに向けた最大限の努力を図る」との文言が盛り込まれた。年が明けて1月29日、連合は経団連とトップ懇談会を持った。

経団連側は、総論では「経済好循環の2巡目をしっかりと回すため、経済界として一歩前に出た対応を図らなければならない」とした上で、各論ではあの『経労委報告』においても、従来通りの「総額人件費管理の徹底」や、「支払能力論」が繰り返されているのであり、また昨年に引き続き一時金まで「賃上げ」に含まれるとしている。この経営側の姿勢に対して、連合は「月例賃金が上がらなければGDPの6割を占める個人消費を動かすことはできない。ひいてはデフレからの脱却は困難になるばかりか、個別企業にとっても競争力の源泉である人材確保がままならなくなる」と繰り返し発信してきた。

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1600人を超す参加者の熱気がファイトリングを取り囲む中、「がんばろう三唱」で集会を締めくくった(「政策制度要求実現3・12中央集会」/東京・後楽園ホール)

連合はこの間、全国の地方連合会で各種集会での盛り上げをはかってきた。さらに中央では2度の集会を開催し、決意固めをしてきた。特に格闘技の聖地である後楽園ホールで開催した「政策制度要求実現3・12中央集会」を経て、闘争モードのボルテージを高めてきた。集会の終盤、私はファイトリングに上がり、「要求趣旨が受け止められなければ両者カウントダウンだ」と声を張り上げた。私たちの要求の趣旨、すなわち「月例賃金の引き上げ」「底上げ・底支え」を通じて社会全体の持続可能性を見いだしていくことに経営側の理解が至らなければ、労使が共倒れになる。そんな思いを言葉に込めた。

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集中回答日の記者会見(2015.3.18)

そして3月18日、先行組合のヤマ場を迎えた。この日の速報で、中核組合を中心とする94組合が昨年を上回る水準の回答を引き出す状況となった。2015春季生活闘争のスタートにおいて、春季生活闘争の意義と目的を果たし得る内容だと受け止めている。後続組合の今後の交渉につながる道筋をつけることができた。先行組合の引き出したこの流れをすべての働く仲間、とりわけ中小企業や非正規雇用で働く仲間にどれだけ波及させることができるか。そのことが非常に重要なカギとなる。2015春季生活闘争は、まさにここからが正念場だ。

経済の好循環と軌を一にする生産性向上運動

さて、春季生活闘争が佳境にさしかかる中、日本生産性本部の「生産性運動60周年記念シンポジウム」が3月2日に開催された。

生産性運動は、いわゆる「春闘」が今年60年を迎えたことと軌を一にしている。どちらも60年ということだけではない。「生産性三原則」の構成要素である、①雇用の維持拡大、②労使の協力と協議、③成果の公正な分配が、春季生活闘争の持つ意義の「基本中の基本」という点でも、両者で通じ合うものがある。

連合はこの間、中小企業や非正規雇用で働く仲間、すべての働く者の「底上げ・底支え」「格差是正」によって、社会全体の持続可能性を確保しなければならないと主張してきた。その含意には「生産性三原則」に即して労使が目標に向かって成果を挙げ、労働条件を向上させ、働く人のやりがいを高めていくという好循環を実現しなければならないという課題認識がある。

生産性を高めていく上で重要なことは、産業民主主義(※)や集団的労使関係(※)が職場に存在することだ。それらを欠いた状態では、経営者は「最低賃金ギリギリ」で人を使うことを所与の前提とした経営に甘んじてしまい、生産性の向上は絵に描いた餅となる。従業員を代表して労働組合が、経営者に対し、「生産性向上に向けた協力を惜しまない代わりに果実は必ず配分してくれ」とプレッシャーをかけることによって、生産性向上に向けた好循環の歯車が回り出すのだ。

このままでは社会が壊れてしまう

ところが従業員数100人以下の中小企業では、労働組合の組織率が1%しかない。中小企業における生産性が相対的に低いのは、中小企業における労働組合の組織率が低いことが一因であることに対しても、もっと目が向けられなければならない。

また、非正規雇用で働いている方々が雇用労働者の約4割に達している。連合にはパート労働者を中心に非正規で働く仲間が約82万人いるが、圧倒的多数の非正規労働者は、まだ集団的労使関係のない職場で働いている。そうした方々にとって、働く上での不安や不満を訴えられる相手は誰なのか。仮に仕事への不満がないとしても、「せっかく働くからには、自分の職場がもっと良くなってほしい」と思うのは自然なことだ。

非正規雇用で働く方々が、日々の仕事の中で「この部分をこういうふうに変えれば、もっと良くなるのに」と思っても、それを伝えられる相手を持たないことは、労働者にとっても経営者にとっても不幸なことだと思う。その不幸を克服するために、私たちは労働組合の責務として組織拡大をいっそう強化していかなければならない。

ところで、生産性の概念に関して、いわゆる新自由主義論者の皆さんが偏った認識を持っていることに違和感を持っている。例えば、今通常国会で議論される予定の「ホワイトカラー・エグゼンプション」の制度創設や裁量労働制の対象範囲拡大もそうだ。賃金と労働時間のリンクをはずすという考え方の裏には「労働者への残業代の支払いをストップすることで見かけ上の生産性を上げよう」という発想が見え隠れしている。3月13日に国会に提出された「労働者派遣法改正法案」も同様だ。技術革新やマネジメントの努力を怠り、労働者を安く使うことで見かけの生産性を上げる―。そんな認識で突き進んでいったら、これから社会に出ていく高校生、大学生の雇用の質が劣化して社会全体が壊れてしまう。私たち働く者の目の前に大きな危険が迫っている。

[3月18日インタビュー]

用語解説

※産業民主主義 (さんぎょうみんしゅしゅぎ)とは

産業社会における諸問題、とりわけ使用者と労働者との関係や労働生活諸条件に係る問題について、労働者またはその代表者が発言し、規制を加え、諸決定に参加することを可能にし、保障する制度。産業民主制ともいう。

※集団的労使関係とは

会社と一人の労働者との個別の労使関係ではなく、労働者が労働組合をつくることにより、会社と労働者の代表が対等に話し合うことのできる労使関係。

※こちらの記事は日本労働組合総連合会が企画・編集する「月刊連合 2015年4月号」記事をWeb用に編集したものです。「月刊連合」の定期購読や電子書籍での購読についてはこちらをご覧ください。

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