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派遣法改悪には断固反対!大阪から学ぶべき教訓とは

2015年06月12日 15時53分 JST | 更新 2016年06月11日 18時12分 JST

【神津里季生のどまんなか直球勝負!】

経営者の都合だけを考えた天下の悪法だ

─労働者保護ルール改悪、あす採決を与党側が提案

労働者派遣法の改悪法案をめぐっては、違法派遣の「『労働契約申し込みみなし制度』が本年10月から施行される前に成立しなければ大量の派遣労働者が失業する」という煽動的な文書を厚生労働省が作成し、与野党議員に説明に回っていたことが明らかになった。さらに担当局長の国会での虚偽答弁も明らかになった。

そもそも今回の「改正」法案は、派遣社員をずっと派遣のまま働かせることができるようにするという、一部の経営者の都合だけを考えた天下の悪法だ。欧州をはじめ韓国や中国でも導入されている派遣労働の共通ルールである「均等待遇原則」も盛り込まれていない。一部の経営者の皆さんは、安い労働が使えれば良いと考えているかもしれないが、それは麻薬のようなものであり、結果として企業競争力や社会の持続可能性をむしばむ。このような問題だらけの法案が成立することは絶対にあってはならない。

また、今国会には、労働時間法制に関する労働基準法の改悪法案も提出されている。本当に痛ましいことだが、わが国では毎年100人を超える人が「過労死」で亡くなっている。安倍総理は、長時間労働による労働災害がこれほど深刻化しているにもかかわらず、そうした実態に正面から向きあうことなく、日本を「世界で一番ビジネスがしやすい国」にするために、労働者保護ルールに「ドリルで穴をあける」と言っている。

いわゆるホワイトカラー・エグゼンプションについては、年収1075万円以上の労働者を対象としているが、財界からは「小さく産んで大きく育てればいい」という声が出ている。いったん制度が導入されてしまったら、年収要件はどんどん引き下げられていく恐れがある。このような法律を通すわけにはいかない。連合は組織の全力を挙げて、街頭での訴えや国会前座り込み行動などに取り組み、法案の問題点を全国の働く仲間の皆さんに訴えていく。

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 国会と国民軽視の暴挙は極めて遺憾

─安保法制の議論も目が離せません。

安倍政権は最近になって、集団的自衛権を含む一連の安全保障法制のことを「平和安全法制」と呼ぶことに決めたそうだ。なぜ安全保障法制と呼ばないのか。人間は誰しも、自分の本心と違うことを言うときには、取って付けたような美辞麗句を使うものだ。ホワイトカラー・エグゼンプションを「高度プロフェッショナル制度」と言い換えているのと同じ発想だ。

安全保障法制の整備に前のめりになっている政府のやり方に対して、国民の多くは不安を感じている。

最近の世論調査では、政府が今国会に提出した安全保障法制の関連11法案を成立させる必要があるかどうかという質問に対して、「必要はない」が過半数を超え、「必要がある」を大きく引き離している。

また、安倍総理が安全保障関連法案について、「日本が米国の戦争に巻き込まれることは絶対にあり得ない」と説明したことについて、「納得できない」が「納得できる」を上回っている。

一方、民主党は党内での議論を積み重ね、4月28日に「安全保障法制に関する民主党の考え方」を決定した。民主党が一つにまとまって安全保障法制に関する考え方を提示したことは非常に大きな意義がある。民主党の考え方を一言で言えば、「専守防衛に徹し、近くは現実的に、遠くは抑制的に、人道支援は積極的に」ということになる。

民主党は、政府の集団的自衛権行使を認める「新3要件」について、「基準が曖昧で歯止めにならない」「立憲主義に反した解釈変更であり、専守防衛の原則から逸脱している」と批判している。一方で、有事とまでは言えないような「グレーゾーン事態」については、海上保安庁や警察、自衛隊の連携を強化して迅速に対応できるようにする新たな「領域警備法案」等を提案しており、政府・与党とは一線を画した考え方を提起している。

日本は悲惨この上ない戦争を経験し、その反省の上に立って戦後の平和と民主主義を志向してきた国だ。だからこそ安全保障政策については、他の国とは違う考え方を採っており、そのことは米国を含む世界の国が認めてきた。ところが安倍政権は、国民を蚊帳の外に置いたまま既成事実を積み上げて、それを変えようとしているのであり、見過ごすことはできない。

国会審議に先立ち、4月28日には自衛隊の米軍への協力を地球規模に拡大することなどを含む日米ガイドラインの改定に踏み切った。国会や国民を軽視するものであり、極めて遺憾だと言わざるを得ない。連合は、政府・与党の一連の暴挙に抗議するとともに、今国会において、安全保障法制と日米ガイドラインの問題が徹底的に審議されるよう求めていく。

政治を自分たちの手に取り戻そう

─大阪市廃止の住民投票は廃案に...。

先日の大阪市の住民投票には、日本全国から大きな注目が集まった。211万人の有権者に賛否を問うという投票規模の大きさもさることながら、政令指定都市である大阪市の廃止・分割の是非を問うという、いわば大阪のあり方そのものを決める選挙であったことが、高い関心を集めた理由に挙げられると思う。

投票率は66.83%と、昨年末の第47回衆議院選挙(投票率47.78%)や2011年の大阪府知事・大阪市長ダブル選挙(60.92%)を大きく上回った。140万人もの大阪市民の皆さんが自ら判断をし、投票所に足を運んで意思表示をしたわけであり、あらためて当事者の皆さん方が正面からこの問題に取り組まれたことに敬意を表したい。

男女別の投票率では、女性の投票率(68.97%)が男性(64.52%)をかなり上回った。大阪市24区ごとに見ても、投票率はすべての区で女性の方が高く、中には男性を11ポイントも上回っている区もあり、とても興味深い。

それにしても、今回の投票を通して再認識したのは、政治と私たちの暮らしは切っても切り離せない関係だということだ。政治に無関心であったとしても、誰一人として政治に無関係でいることはできない。そして無関心のツケは自分に返ってくる。今回の僅差の投票結果を見るとなおのこと、そのことを思わずにはいられない。

住民投票に敗れ、橋下氏は引退を表明した。橋下氏は「日本の政治で一番重要なのは独裁」「主張を報じない新聞は便所紙か漬物をくるむ紙にしかならない」など、数々の暴言や迷言を吐いて物議を醸してきた。確信犯的に攻撃的な言葉を投げかける橋下氏の政治手法を危険視する人は少なくなかったが、その一方で熱狂的なファンを惹きつけていたのも事実であり、過激な言動や裁判所・労働委員会の裁定にもかかわらず社会的な制裁を受けることはなかった。

「僕みたいな政治家が長くやる世の中は危険」だと言う橋下氏。その言葉を借りるならば、私たち有権者は「危険な政治家」をヒーロー扱いするのではなく、日頃から政治に真摯に向き合い、政治を自分たちの手に取り戻していく姿勢を取り続けることが大事なのではないだろうか。

橋下政治の顛末から学ぶべき教訓は、そのことに尽きると思う。

[5月22日インタビュー]

※こちらの記事は日本労働組合総連合会が企画・編集する「月刊連合 2015年6月号」に掲載された記事をWeb用に編集したものです。「月刊連合」の定期購読や電子書籍での購読についてはこちらをご覧ください。