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派遣法改正法案は将来世代に禍根を残す天下の悪法だ

2015年07月13日 01時02分 JST | 更新 2016年07月09日 18時12分 JST

【神津里季生のどまんなか直球勝負!】

少しでも多くの人に伝えなければ

─派遣法改正法案が衆院で可決されました。

この法案は、現在は専門26業務を除いて最長3年となっている企業の派遣労働者受け入れ期間の制限を撤廃し、企業が3年ごとに人を入れ替えれば派遣労働者をずっと使えるようにするというものだ。派遣労働は「臨時的・一時的でなければならない」という国際基準に反するばかりか、均等待遇原則も入っていない。雇用が不安定で低賃金の派遣労働を恒久化させる内容だ。こんな天下の悪法が、衆議院において、自民・公明の賛成多数で可決されたことは極めて遺憾と言わざるを得ない。

連合が今年行った「働く女性の妊娠に関する調査」で、『9時間以上働くことが多かった―早産した人では4人に1人、流産してしまった人では5人に1人』という衝撃の実態が明らかになったことをご存じだろうか?

働く女性の約半数は、非正規労働で働いている。調査を進める中で、派遣労働で働く女性たちから「雇用契約を打ち切られたくなかったので、妊娠がわかってからも、体の無理を押して働かざるを得なかった」といった声が寄せられた。

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こうした働く現場の実態や声に耳を傾けず、日本を「世界で一番企業が活躍しやすい国」にするという目的に沿って、働き方のルールを強引に変えるというのが、今回の派遣法改正法案の中身だ。舞台は参議院に移るが、何とか阻止をすべくアピールを強化していかなければならない。

加えて今国会には、「残業代ゼロ」のホワイトカラー・エグゼンプションを導入し、裁量労働を提案型営業職にも拡大する労働基準法改正法案も提出されている。長時間労働を助長する「過労死促進法案」と呼ぶべき内容だ。こんな法案が通ってしまったら将来に大きな禍根を残すことになる。少しでも多くの人にそのことを伝えていかなければならない。

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─維新の党の対応が、派遣法改正案可決のきっかけをつくってしまいました。

もともと民主・維新・生活の3党は共同で、自民・公明が提出した労働者派遣法改正案の対案として、「同一労働同一賃金推進法案」を提出していた。ところが維新は、単独で自公と修正協議を進め、均等待遇でなくてもバランスの取れた均衡であればいいとする内容に法案を後退させてしまった。待遇格差の是正についても「法制上の措置を1年以内に講じる」とした部分を、「3年以内に法制上の措置を含む必要な措置を講じる」に変えて骨抜きにしてしまった。

維新は当初、あれだけ毅然と「同一労働同一賃金の実現が欠かせない」と言っていたのに、自民党に取り込まれてしまったのは残念だ。大半の国民は、いわゆる野合に、うんざりしているのではないか。

 

報道の在り方としてどうなのか

─報道の取り上げ方に対しては?

労働者派遣法改正法案を審議していた衆議院厚生労働委員会で6月12日、与野党議員が入り乱れて騒然となった映像をご覧になった方も多くいらっしゃると思う。あれを観て、どう感じただろうか?

あの場面を取り上げた複数のテレビ番組を録画で観比べてみたのだが、気になったのは、同じ事象でも取り上げ方によって、ずいぶんと印象が違ってくるということだ。

国会が紛糾した理由を含めて、客観的に事実を伝えようというスタンスの番組がある一方で、「そんな一面的な捉え方だけで本当にいいんですか?」と突っ込みたくなるような番組もあった。

例えば、平日の昼間の時間帯に放送されたあるワイドショーでは、なぜあのような事態になってしまったのかという説明を欠いたまま、揉み合いのシーンだけに焦点を当てて「国会で乱闘」と取り上げていた。また、野党を「旧態依然」だとする自民党幹部のコメントを流して、複数のタレント出演者が「民主党おかしいじゃないか」という趣旨の発言をする番組もあった。

「旧態依然」と断じる行為には、国民の思考をストップさせ、問題の核心から目を反らせたいという意図が隠されている。政権与党のコメントを流すだけで、国会が混乱した理由に触れないというのは、報道機関の在り方としてどうなのか。

さらに言うと、言葉の端々に安倍政権への配慮をにじませる評論家・コメンテーターが、画面に登場する機会が増えているように感じるのは、思い過ごしだろうか。自民党が報道機関への圧力を強めていると言われていることとの間に因果関係があるのかどうか。安全保障法制の報道に絡むことでもあるだけに、ある種のもどかしさを感じている。

 

若者や子どもたちの命がかかっている

─安保関連法案をめぐっては?

時の政府が便宜的・意図的に憲法解釈を変えることは決して許されないことだ。6月4日の衆議院憲法審査会において、自民党の推薦した専門家を含め、3人の専門家全員が「安全保障関連法案は違憲」との見解を表明したが、そのこともあり、今回の法案はやはり立憲主義に反しているのだという認識が広がっている。

今回の法案には、武力攻撃事態法改正案における「存立危機事態」という新たな概念の導入、周辺事態法改正案における「周辺」概念の撤廃、国連が統括していないPKO活動への参加も可能とするPKO改正案、自衛隊が国際社会の平和・安定のため活動する他国軍へ支援を行う場合、これまでは特措法で対応してきたものを恒久法化することなどが含まれている。このため、自衛隊の活動範囲を歯止めなく拡大させるという懸念が生じている。

こうした多くの国民が感じている懸念に対して、「正面から向かい合う」という姿勢が安倍総理をはじめとする政権側に感じられない。合理的な説明のないまま、ただひたすら「大丈夫です」「心配ありません」としか言っていない。

労働法制と安全保障法制は、どちらも国民の命と暮らしを守るために重要な法案であり、そのルールは明快でなければならない。ところが拡大解釈が可能な曖昧さを残したまま法案が通ってしまったら、人によってあるのかないのかわからないような「経営者の善意」や、時の総理の資質次第でぶれる恐れのある「政権の理性」に、若者や子どもたちの大事な命を預けることになりかねない。そんな取り返しのつかない法案は、徹底的につぶさなければならない。

今国会の会期は大幅に延長される見通しであり、この先も大事な局面が続くことが予想される。家庭、職場、そして地域で、法案の問題点を訴え続け、法案の成立に反対する世論喚起を行い、最後まで闘い抜こう。

[6月19日インタビュー]

※こちらの記事は日本労働組合総連合会が企画・編集する「月刊連合 2015年7月号」に掲載された記事をWeb用に編集したものです。「月刊連合」の定期購読や電子書籍での購読についてはこちらをご覧ください。