天安門前の自動車事故で中国崩壊? 日米安保崩壊?

いつもいろいろお世話になっている『BLOGOS』で、板垣英憲氏が「北京市天安門で小型四輪駆動車炎上、車の3人と観光客2人死亡事件は新たな『天安門事件』、中国崩壊前兆か」という記事を、天木直人氏が「中国天安門前で起きた自動車爆破事件の衝撃」という記事を書かれていたので、これについて少し。

いつもいろいろお世話になっている『BLOGOS』で、板垣英憲氏が「北京市天安門で小型四輪駆動車炎上、車の3人と観光客2人死亡事件は新たな『天安門事件』、中国崩壊前兆か」という記事を、天木直人氏が「中国天安門前で起きた自動車爆破事件の衝撃」という記事を書かれていたので、これについて少し。

1 板垣氏の意見

「『不条理を強いられる』『理不尽な格差から逃れられない』など文字通り『閉塞感』から絶対絶命の窒息しそうな境遇のなかで、人民大衆が取り得る最終的な道は、『自爆』だ」としています。

そして、「もちろん、いまの中国では、イスラム世界のような「ジハード」を叫びながら、「自爆テロ」を敢行するような人民がいるとは思えないけれど」としながら、春秋戦国時代に王に進言して意見を聞きいれてもらえず、自殺した「楚の政治家、詩人であった屈原・・・を生んだ国である」としています。

「いまの中国は、共産党1党独裁の下で、共産党幹部の汚職がはびこり、貧富の格差を生み、環境汚染に悩まされ、子どもたちが誘拐されて売られ、しかも、マスメディアに対する弾圧が厳しく、本当に救いのない社会に成り果てている」そうです。

そのため、「こんな状況に対して、『自爆』を覚悟して抗議の死を図ろうとする人民が現れてもおかしくはな」く、今回の事件は「新たなる『天安門事件』として、中国北京政府の習近平国家主席、李克強首相ら「チャイナ・セブン」の最高指導部に重大決意を迫るインパクトになる可能性が大だ。中国崩壊の前兆か」としています。

2 天木氏の意見

「中国政府はもとより、米国政府も日本政府も内心では大きな衝撃を受けているだろう。自爆テロだとしたら大事件だ。その自爆テロがシリア情勢や中東問題と関連していたら更に大事件だ」だとしています。

その上で、「この事件をきょうの邦字主要紙のなかで一番大きく報道したのは中国嫌いの産経新聞である。中国の政情不安、治安不安を喜びたいのかもしれない。しかしそのような観点からこの問題を捉えていては見誤る」としています。

その理由は「この問題は安倍政権にとっても深刻な悪影響を及ぼすことになりかねない。テロとの戦いで米中が、そしてロシアが協力するような事にでもなると、今度こそ日米同盟関係など吹っ飛んでしまう」からだとしています。

3 中国の問題点

そういう意味で、板垣氏が指摘されているとおり、中国が多くの問題を書かれていることは事実ですし、そういう社会に不満を持っている中国人がいることも事実です。

ただ、問題は、だったら直ぐに「中国崩壊」に結びつくかという話です。天安門事件の昔から、何かあると「中国崩壊」に結びつける方がおりますが、一向に中国は崩壊しておりません。

というのは、まともに考えればわかる話ですが、今の中国の体制から利益を得ている者と、不利益を被る者がどの位いるかという話で、いろいろ問題はあってもそれなりの経済成長を維持し、衣食住も保障されている現在の体制を破壊しようと思っている人が中国人の何割にのぼるかという話です。

実際、過去にも指摘したことがありますが、板垣氏は話を盛る傾向がある様で(中国体制維持のために日本アイドルを利用?)、今回の事件だけで、いきなりも「中国崩壊の前兆か」と言われてもまたかとしか思いません。

なお、こうした主張の最大の利点は、常に「中国崩壊」を言い続けていれば、いつかはおかしくなる可能性があるという話で、過去に外れた話をせずに、当たった時だけ、自分はかつてこう言っていたと言えば、信じる方が出てくるという点です。

4 テロを中心とした関係改善

そういう意味で、天木氏が述べている様に、「そのような観点からこの問題を捉えていては見誤る」というのは、その通りかと思います。

だた、「テロとの戦いで米中が、そしてロシアが協力する」というのはいつの議論をしているのだという話で、とても受容できるものとは、思えません。

というのは、これはアメリカ同時多発テロ(9.11)の時に、散々問題とされたもので、当時、中国の人権問題は棚上げされ、アメリカと中国の関係関係改善が進み、チェチェンなどの問題を問題を抱えていたロシアもアメリカに同調しました。

結果、それで良いのかという批判は散々起こったわけで(ボストンテロを利用してアメリカとの関係改善を図りたい中国)、そうした過去の経緯を無視していきなり、「日米同盟関係など吹っ飛んでしまう」という物言いをするのも如何なものと考えます。

5 最後に

どうしても、ブログでも新聞記事でも人目を集まるために、過激(極端)なことや、多少奇抜なことを言う方がおられる様です。

私もアクセス数ほしさに、いろいろ試行錯誤しているような状態で、他人のことをどうこう言えるような状態でありませんが、かなり思うところが有ったが故の今日のエントリーでした。

(※この記事は、2013年10月30日の「政治学に関係するものらしきもの」から転載しました)

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