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「偽装シェアハウス」に対する道理と義理

2013年07月08日 00時29分 JST | 更新 2013年09月06日 18時12分 JST

『産経新聞』が掲載していた「窓なし激狭の"偽装シェアハウス" 行政指導で住宅難民1万人発生?」という記事がいろいろ興味深かったので、これについて少し。

1 記事の紹介

「偽装シェアハウス」の記事で、例として「東京・神田にある共同住宅」が紹介されています。「建物内には、3畳ほどの広さの部屋がいくつも並んで」おり、部屋は「2人部屋で、2段ベッドが部屋の半分を占め」、賃料は月2万8000円だそうです。

当然住環境は最悪で、「洗濯物を部屋干しするスペースも、ベッド内にしか」ありませんし、「隣室との仕切り壁は薄く、話し声やテレビの音声は一言一句はっきり聞き取れるほど」で、窓もない様な状態です。

こうした「偽装シェアハウス」は、「住居としての耐火基準は満たしていない」分安くあげることができるので、「借り手側には高額の敷金や保証人も不要な上、ネットカフェ生活並みの低家賃で入居できる」、「さらに、就労に必要な住民登録を行え」ます。

「貸し手側にとっても、多くの住民を『詰め込む』ことで収入を増やせる」上に、「家賃の滞納などがあれば住民をすぐに追い出すことができ」ます。「借地借家法は、一定の猶予期間や正当な理由のない賃貸借契約の解除を禁じてい」ますが、ここにはその適用がないためです。

結果、「偽装シェアハウスは、各地で年々増加」することとなります。ただ、脱法行為であることは間違いなく、消防庁などの改善指導により、急遽閉鎖となるところもあり、1ヶ月以内に退去という話になっても、「同じくらいの賃料の物件が近所ですぐに見つかるわけもな」く、住民は苦労することとなります。

行政の現場でも、困惑があり、「違法住宅を活用することが許されないのは当然だが、現実としてその日の寝床が見つからない相談者がいる。どう対応すればいいのか...」という声も聞かれるそうです。

市民団体からは、「住居の規制強化のみを進めても、需要があれば新たな違法住宅が登場するだけだ。貧困問題の解決に向けた総合的な対策が求められる」という意見もあるものも、「防災上の問題がある施設に行政指導すると、住民が追い出され路頭に迷うという現実」があり、記事では「今のところ、明確な解決策はない」としております。

2 縦割りと「総合的施策」

行政は部署毎に別れており、それぞれが施策を行っているので、こうした話も起こるということです。これについて、市民団体の方が言う様に「総合的」な施策をつくってという話は以前から縦割り行政が指摘される度に言われていることですが、実際はそれほど簡単ではありません。

中国には「上に政策が有れば、下には対策がある」という言葉がありますが(人助けも難しい中国の現状3(サインをしてから人助け))、いろいろ困った状況(需要)があれば、それに対応するものが出てくるのが世の常です。

今回も住所がなければ就職できないが、収入が少なくきちんとしたところに住めない人はどうしたら良いのかというが背景にあり、表面上は「偽装シェアハウス」の問題ですが、雇用問題なども関連しており、本当はもっと大きな問題です。

そうなると、とても一自治体だけで対応できるのかという話にもなります。国と地方との連携が必要となるわけですが、地域ごとの特殊事情もあれば、各部署の意見調整などがあり、ここいらが本当にやっかいな話で、とても簡単に「総合的」な対策がつくれるとは思えません。

3 「道理」と「義理」

「無理が通れば道理が引っ込む」とか「彼方を立てれば此方が立たない」といった諺がありますが、政治(行政)の目的も1つではありません。

最近話題になった八王子市の北浅川に架かる「違法な」手作り橋などがその典型ですが、住民の安全を考えると「違法な」橋を認めることは、できないわけですが、住民の利便性の問題などもあり、一概にどうこう言える問題ではないかと思っております。

法律という「道理」も必要なわけで、これなくして政治(行政)はあり得ませんが、全て法律通りにできる事案などは少なく、皆それぞれの個別の都合があり、事情があります。

そうなると「義理」というか、「人情」のようなところも要求されるわけで、住民の「利便性」もこうした形で検討することが必要になるのではないでしょうか。

ただ、法治国家である以上、個別の事情をどこまで考慮できるかというと極めて難しい問題があります。むろんそのために司法制度などが用意されてはいるわけですが、利用にはいろいろ訴訟費用などいろいろハードルがあるのは周知の通りです。

4 最後に

政治とは、国が税金などの形で集めた「資源」を如何に政策という形で再分配するかという制度であると私は考えています(「革命」後のエジプトと「自由」)。そのため、当然各部門ごとに衝突もおこれば、如何に美味しいところを自分が確保するかという話も出てきます。

TPPの議論などがその典型ですが、商工部門と農政部門でいろいろ意見の対立のあるのは周知のとおりです(どこまで政策が違ったら、同じ政党して行動すべきか?)。斯様に大きい問題であればあるほど、関係者が多く、利益の調整には時間がかかります。

もちろん、貧困対策として国や自治体が政策を講じなければならないのは間違いありません。しかし、とても難しい問題であり、元記事でも解決は難しいと認めてる事案に対し、簡単に「貧困問題の解決に向けた総合的な対策」というだけなのはどうかなと思った次第です。

いつも思うことですが、総論では皆賛成でも各論で反対するのが多いのが実情です。そのため、難しいのは、具体的な施策を構築し、事業化していく過程となります。そのため、反対(批判)する方は、具体的にどうしたら良いか、対案を示してから意見を述べるべきかと思っております。

(※この記事は、2013年7月8日の「政治学に関係するものらしきもの」から転載しました)