女性だけが専業「主婦」になりたいのか?

思うに男女間の雇用問題だけかというとそうではなく、正規・非正規の問題も大きな影響を与えていると思います。つまり女性だけでなく、男性も不安定な雇用しか見つからず、仕事にあまり価値をおけないとなると、仕事以外の価値観を見つけ様とする面もあるのではないかという話です。

『ハフィントンポスト』に「専業主婦になりたがる日本女性 海外からは疑問の声が 【争点:アベノミクス】」という記事が掲載されており、いろいろ興味深かったので、これについて少し。

1 記事の紹介

「15〜39歳の独身女性の3人に1人が専業主婦になりたいと望んでいる、という厚生労働省が行った若者への意識調査の結果に、海外メディアが注目している」という記事です。

「厚生労働省の調査では、61%の女性が『女性には家事や子育てなど、仕事をするよりもやるべきことがあると思うから』と答え、29%は『夫がしっかり働けるようにサポートするのが妻の役目だから』と回答し」ました。

これについてフランスの『フィガロ』が「主婦になりたいと望む日本の若い女性は、外で働くことへの魅力を感じていないのではとみている。その背景には、日本企業は女性をつまらない仕事に制限させる傾向にあり、これが女性の働く気力をくじいているのではと伝えている」そうです。

そして、『フィガロ』の記事についたコメントが紹介されています。

「(このような結果になるのは)日本女性に社会進出に対して強いプレッシャーがあると信じたい。だけど場所の東西や男女に限らず、人々は会社を自己実現の場所と異常なほど思い過ぎていないか」

「日本は男性優位の文化だから仕方ないよ」

2 男性優位?

「日本=男性優位」というイメージは各国にあるようで(中国に新天地を求める女性とそれに対する反応)、その裏返しとして、家庭でかいがいしく男性の面倒を見る日本人女性というイメージも結構あるようです(以前ほど強くはない様ですが)。

元記事では、「1970年代くらいから女性の地位改善が進んだ結果、多くの女性が社会進出できるようになった。今では20〜40代の女性の8割以上が職に就き、出生率も上がっている」とフランスの状況を紹介して終わっています。

日本でも、フェミニズムの影響で、女性の社会進出が進み、1986年には男女雇用機会均等法が施行されました(これについては、女子差別撤廃条約の関係で1985年までに法整備を行う必要があったためだけという意見もありますが)。

確かに管理職の数などを見ると、日本は圧倒的に男性が多く、こうした数字等をして日本は未だに「男性優位」だという話はあります。しかし、世界で思われている程、日本が男性優位かというとそうとも思えません。

3 非正規

思うにこれは、小倉千加子氏など、かつてのフェミニストが「敗北」した原因として挙げている、女性が社会進出しても自由になるどころか、仕事も家事もしなくてはならない状況が大きな影響を与えているのかと考えます(『風を野に追うなかれ』(女性文庫))。

余談ですが、私は一時期フェミニズムにはまっていたことがあり、上野千鶴子氏なども愛読してものです(性的マイノリティへの偏見や差別をなくすにはどうしたらよいか)。

確かに、この問題については、共働き世帯において、何故女性だけが家事をしなくてはならないのかという話で、男性の育児休暇など、いろいろ複雑な問題が絡んできます。

ただ、思うに男女間の雇用問題だけかというとそうではなく、正規・非正規の問題も大きな影響を与えていると思います。つまり女性だけでなく、男性も不安定な雇用しか見つからず、仕事にあまり価値をおけないとなると、仕事以外の価値観を見つけ様とする面もあるのではないかという話です。

結果、専業主婦だけでなく、専業主夫の希望者も増えてきているのではないかと考えています。発展途上国の様な皆が有無を言わず働かなくては食べていけない状況を見てきた者からすれば(現実には重さが異なる命と平等に来る死)、こういう選択肢があるということは、社会全体に余裕があるが故の話とも思えなくはありません。

4 最後に

日本の高度経済成長期の専業主婦は、確かに男性が会社人間となって長時間労働をする上で、家庭を守る人が必要であるが故のシステムだったと考えます。

以前はそうした選択肢しかなかったわけで、それが故に専業主婦をしていた方が多かったのですが、現在の専業主婦(願望)は明らかに異なるものと考えます。つまり、今はそれ以外の選択肢がないわけではないのに、こうした道を選んでいるわけです。

「新型うつ」と呼ばれる、これまでとは異なる鬱が話題となっています(『「私はうつ」と言いたがる人たち)。うつ病と似た症状を示しながら、いろいろ違いがあるわけで、かつての専業主婦と今の専業主婦の違いと同じようなものかと思ったものです。

さらに、先の「専業主夫」ではありませんが、こうした「新型うつ」が増えてきているということは、男性でも、こうした形ででも現在の仕事からリタイヤしたいと考えている方が増えてきているという話ではないかと思った次第です。

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