中国に帰国する留学生の増加と現実

『新華経済』が「中国人留学生に空前の『帰国ブーム』、12年は27万人 経済成長への期待感大きく―中国メディア」という記事を掲載しており、いろいろ興味深かったので、これについて少し。

『新華経済』が「中国人留学生に空前の『帰国ブーム』、12年は27万人 経済成長への期待感大きく―中国メディア」という記事を掲載しており、いろいろ興味深かったので、これについて少し。

1 記事の紹介

「中国・グローバル研究センターなどが4日出版した中国の国際人材リポートによれば、2012年、海外の留学先から帰国した中国人は前年比46.56%増の27万2900人に上った」という記事です。

「リポートは帰国者が急増した理由について、『中国の経済発展により、チャンスがつかめるとの期待が膨らんだため』」としており、「帰国者の91.8%が『中国はチャンスが大きいため、帰国した』と回答している」そうです。

「また、中国当局が近年、国際的な人材を取り込むための一連の政策を実施したことも、帰国者急増につながった」ともしております。

2 中国の大学教育

実際問題として、中国での教育が典型的な詰め込み教育であることや、言論の自由(学問の自由)の制限などにより、研究が制限されていることなどから(日本と中国の「詰め込み教育」と平均点)、中国では以前から留学が盛んに行われておりました。

それに、今でこそ高度経済成長でマシになってきたとはいえ、以前は明らかな発展途上国で、研究の水準も高くないというのが正直なところで、先進的な知識を学ぶためには留学せざるを得ないという現実もありました。

また、「中華意識」という話はよく聞きますが、中国人は何だかんだ言って、外国(特に欧米)に対する憧れは強く、そうしたところに留学して学んで来たと言えばそれだけで、尊敬される時代もありました。

3 留学者の実力

ただ、現実問題「留学」と言っても語学学校から一流大学まで様々です。それに、日本でもたまにおりますが、自国の大学に進学するだけの学力がないが故に「留学」という形をとられる方もおります(海外留学と「逃避」)。

また、日本の語学学校でも出席率などが問題となりましたが、現地の学校でも「留学生」という名の生徒を確保して、金(学費)を稼ぐことしか考えていないところもあるのが現実です。

それに、自国で勉強をしなかった方が外国で勉強するはずもなく、ひたすらゲーム三昧、バイト三昧で何をしに外国に来たのかという方もおられます。

そうした方がどれだけ使い物になるかと言うと言わずと明らかで、留学生の数が増えてくるとこうした方も必然的に増えるわけですが、企業側もある程度経験を積んでくると、単に「留学生」というだけでは仕事の確保も困難となります(中国の留学の現実)。

4 魅力ある中国

前述のとおり、中国は発展途上国だったわけで、中国から移民として国外に出る方も多ければ、留学を終わってもそのまま現地に滞在するという方も結構おられました。

中国政府にしてみれば、それは中国という国の魅力がないことを意味しかねないので、これまでも結構気にしておりました(中国人が国を離れるのは中国を発展させるため?)。

そのため今回の様に、海外経験者が多数中国に戻って来てくれるということは極めて望ましいことで、喜んでニュースにしたというわけです。

確かに、中国にはチャンスが大きいというのはその通りですが、これは、いろいろ未整備であるが故に何でもできるという面があり、チャンス同様それなりにリスクも大きくなります。

その点先進国では、既に成熟しきっているため、一流企業に入るなど「成功する」ためのルートはかなり決まりきっており、他人との競争に打ち勝つことが要求されるなど、それだけ狭い門であるわけですが、成功してしまえばかなりの確率で安定します。

ただ、エリートコースに乗っても競争は続くので、そんなものは嫌だという人にとってはキツイかもしれません。

5 最後に

「留学」に多大な希望を持っている方もおられる様ですが、留学さえすればこれまでの人生が一変するなどということはありませんし、留学したが故に新卒扱いにならなかったなど、当然デメリットも多くあります(留学の現実)。

では留学に何のメリットもないかというと、当然そんなことはなく、今まで自分が育ったところと全く別の価値観の国で暮らすが故の良い面もあります。

語学や知識習得といった面だけでなく、別の価値観を見る(知る)と、こんな生き方もあると楽になることもありますし、結果、袋小路に陥る可能性もそれだけ少なくなると考えます。

実際問題、今回元記事で問題にしている中国への帰国という話も、留学先でいろいろ頑張った(てきた)けど、(いろいろあったから)帰国して心機一転という話で、こういう選択肢があるのも、そもそも留学したからこそありうる話だと考えます。

(この記事は、2013年11月7日の「政治学に関係するものらしきもの」から転載しました)

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