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新人が勝利した福島市長選挙と「草の根」と『毎日新聞』

2013年11月17日 23時30分 JST | 更新 2014年01月17日 19時12分 JST

任期満了に伴う福島市長選が11月17日に即日開票され、無所属で新人の小林香元環境省東北地方環境事務所長が、自民、公明などの支援を受け4選を目指した現職の瀬戸孝則氏にダブルスコアーという大差で初当選しました。

これに伴う『毎日新聞』の報道がいろいろ興味深かったので、これについて少し。

1 記事の紹介

3つ紹介させていただきます。まずは「放射線対応 住民『裏切られた』」ですが、「市民一人一人の現状への不満が大きなうねりとなり、地滑り的な勝利をもたらした」として、「事故後、子育て世帯の自主避難が相次」いだものの、「市から地区振興策が具体的に示されたことはな」かった事例などが紹介されています。

2つ目は、「『福島を変えて』草の根の声届く」ですが、一人で行った記者会見や「母校の同級生や同市内の親戚を中心に、友人から友人へと草の根で支持を広げる地道な活動」が紹介されています。

そして、最後に敗れた現職陣営の声として、「実績と具体的政策を持つ瀬戸氏こそ復興を進められると考えたが、事故後の対応について理解をしてもらうことが難しかった。反応は良く、自民党への批判とは受け止めていないが、無党派層に訴えが届かなかった」を紹介しています。

3つ目が「除染市町村任せのツケ」で、今回の結果を「原発周辺以外の除染を国が市町村に任せっきりにしてきた現状に異議を突きつける結果」で「ダブルスコアの票数で表れた福島の怒りを政府・与党は重く受け止めるべきだ」としています。

ただ、その一方で、小林氏陣営の声として、「現職でなければ誰でもいいとの声があったのは事実だ」という意見を紹介したり、「選挙戦で小林氏は現市政を批判したが、現状を打開する対案を示せたわけではない」ともしています。

2 市民運動(草の根)

記事では「草の根」の勝利とされているところもあります。確かに既存大政党に「市民」が異議を唱えたという構図もなりたたなくはありません。

私自身、中央の大政党がどこまで地元の思いを汲み取っているかとなると、確かに疑問で、今回の結果を見ても不満がかなり積っているというのは間違いないかと思います。

ただ、その一方で、私は市民運動に諸手を挙げて賛成する気にもなりません。現状に不満を言うこと(現政権を批判すること)は簡単なことですが、問題はだったらどうするかという話で、菅元首相が典型ですが、現状の解決策を提示できなければ何の意味もありません(市民運動家と政治家の違いと原発停止)。

政治家は国民に対し、具体的な政策を示すことが求められます。理想が高くとも現実に使える資源(金や人力)は限られており、それらをどう配分するかが政治なわけで、理想だけを追い求めた失敗例の典型が民主党政権だったかと考えます(田中眞紀子議員を例にした民主党の敗因)。

3 地方自治

 

そういう意味で、今回勝利した小林新市長がどのような政策をとってくれるのかという話になるわけですが、正直私はあまり期待しておりません。

というのは、日本では地方自治といいながら、中央が金や政策決定権を握っているのが実情で、地方だけで、どこまでできることがあるかと言われるとかなり疑問だからです。

正直誰がやってもあまり変わり映えしないが故に、自治体では長期政権となることが多く、今回の瀬戸氏も4選目を目指したことからわかるとおり、既に12年という長期に渡って市長を務めてきたわけで、今回原発の問題がなければ、更に続いていた可能性が高いのではないかと思っています。

当然、皆これで良いとは思っていないわけですが、有る程度安定した生活が送れていれば、何も無理をして変える必要もないというのが本当のところで、不満の高まりがそれほどでなければ現状維持を選択するというのはどこの国でもあることかと思っています(山本太郎議員に対する脅迫と度量の広さ)。

4 最後に

どちらかと言えば「反原発」よりの、『毎日新聞』なので、「草の根」という単語を見たときは、単純に「大政党=悪、市民運動=善」という形で記事が構成されているのかと思ってしまいました。

しかし、必ずしもそういうわけではなく、放射能漏れという未曽有の事態に、誰がやっても難しいことは間違いないという前提と、はたして新市長にどこまでできるのかという視点は保持しており、そういう意味で好感が持てる記事だったが故の今日のエントリーでした。

(※この記事は、2013年11月18日の「政治学に関係するものらしきもの」から転載しました)

福島第一原発事故

福島原発 地下汚染水の視察