留学でしんどかった孤独が、ひとりに変わったらむしろ楽しくなった

僕は、カメラを片手にどこかに出かけたり、図書館で静かに過ごしたりすることで、孤独からひとりになれた。

留学で陥った孤独、しんどかった

ハウスパーティー、ポップにハットを被っているのに、馴染めずこの世の終わりみたいな顔をしている。

海外で生活する上で、孤独は付き物だ。縁もゆかりもない異国の地で暮らすのは、想像以上にしんどい。言葉の壁や文化の違いもあって、馴染むのにも時間がかかる。イギリスの大学に入学した僕も例に漏れず、そうした経験をした留学生のうちのひとりだ。

大学1年生のころ、学校の寮に入った。

20人ほどの同居人が、キッチンやバスルーム、トイレを共同で使う。20人という大人数が収まるキッチンには、食事の時間以外にも人が集まり、溜まり場となっていた。ところが輪の中にいても、何を話しているのか理解するのに精一杯で、なかなか会話に入っていくことができない。

最初のころは頑張ってその場に居続けたが、徐々に苦痛を感じるようになった。みんなといるのに、自分だけが取り残されているような孤独にさいなまれた。

問題は言葉の壁だけではなかった。同居人が他の友達を呼び、深夜でもかまわずどんちゃん騒ぎすることもあった。そんな雰囲気に馴染めず、徐々に距離を取るようになった。キッチンに誰かいるかもしれないと考えると、部屋を出るのも億劫になり、こもりがちになる時期もあった。

しばらくして生活が落ち着き、英語が上達して気の合う友達もでき始めても、ひとりで過ごす時間は多かった。長期休暇で友達や同居人が実家に帰ってしまうと、1日中誰とも話さない日も珍しくなかった。友達も少なく、頼れる知り合いもいない。当時は毎日が孤独との戦いだった。

ひとりの時間を充実させ、自分を楽しむ

カメラがあればどこでも気軽に行けた

ある時、ひとりでいる自分を受け入れて、その時間を充実させようと考えたら、少し気持ちが楽になった。自分を楽しもう。僕はどこかに出掛けるのが好きだ。幸い、僕が住んでいた街は、見て回る場所がたくさんあった。行きたい場所があるのに、一緒に行く人がいないから諦めるのはもったいない。マーケット、美術館、城、公園−−。カメラを片手に、さまざまなところに繰り出した。

どこかに出掛けて、写真を撮っている時は、ひとりでいる理由を見つけたような気持ちになれた。どこに行って、どんな写真を撮ろうかと、次の計画を立てる時間も楽しみのひとつになった。

何かをしているという感覚が、ひとりに対して感じていた不安や抵抗感を解きほぐしてくれた。自分は何に興味を持ち、何を大切に考え、どんなことに楽しみや幸せを感じるのか。ひとりで過ごす時間を通じて、自分と向き合い、対話する機会も増えた。

僕の場合、ひとりの時間を楽しむのは、どこかに出掛けることだった。しかし、人によっては、絵を描くことや、本を読むことかもしれない。スポーツや映画鑑賞、買い物だって、何でもいい。ひとりを楽しむ手段は人それぞれで、きっと誰にでもあるはずだ。

ひとり旅の楽しさも知った。もちろん、誰かと一緒に旅行するのは楽しく、同じ時間や景色を共有しさらに仲を深めることができる。

けれども、ひとりだからこその楽しみもある。

行き先や時間など、全ての選択を自由に決めることができるため、他の人を気にして妥協する必要もない。また、同じようにひとり旅をする人たちはたくさんいて、他の人と一緒に旅行する時よりも、旅先での交流も生まれやすくなる。こういった旅の楽しみ方があることも、ひとりになる環境がなければ知らないままだっただろう。

正直に言って、留学中に経験した、ひとりで孤独な時間は辛かった。でもそのおかげで、自分と向き合い、知ることができた。悩んで、自分にとって大事なものは何なのか、何が好きなのかを真剣に考えた。いつも誰かと過ごしていたら、経験できなかったかもしれない。

孤独を感じなくていい空間が救いになる

日本に帰国してからも、ひとりで過ごす環境が続いた。大学を卒業後に入社した報道機関では、職業柄、ひとりで過ごす環境が付いて回る。若手記者の大半は、地方支局が初任地となる。神奈川県出身の僕は千葉支局に配属された。同じ関東とはいえ縁もゆかりもなく、職場の人以外に、知り合いや友達もほとんどいなかった。

若手記者は警察担当を任せられ、大きな事件や事故が起きたらすぐに現場に駆け付けられるよう、休日も原則、県外へ出ることができない。赴任して間もない頃、休日は必然的にひとりで過ごすことが多かった。

そんな時によく通っていた場所が、図書館だった。特別に本が好きというよりも、ひとりで行っても静かに迎えてくれるような雰囲気に居心地の良さを感じて、たびたび訪れた。

本を読むこともあれば、パソコンで作業したり、何もせずぼうっとしたりすることも。自分と同じようにひとりで来る人がたくさんいて、ただそこにいて、何をしてもいいという安心感を与えてくれる、孤独を感じなくてもいい空間だった。

ひとりは誰でも気軽になれて、むしろ楽しいものだ

初めてのひとり旅

図書館の他にも、美術館やカフェ、映画館など、ひとりで来る人を見かける場所はある。最近はひとりカラオケやひとり焼肉といった言葉もよく耳にするようになり、「おひとりさま」が徐々に浸透し始めているようにも見える。

しかし、「ひとり=寂しい」と思ったり、ひとりで行動することを特別視したりする風潮はまだまだ強い。そういった否定的なイメージのせいで、ひとりで過ごすことに抵抗を感じる人も多く、敷居が高いと思われがちだ。

確かに孤独を感じるのは辛い。でもひとりは違う。ひとりでいるのと、孤独を感じるかどうかは別物だ。それは自分の心が決めるものなのかもしれない。

僕は、カメラを片手にどこかに出かけたり、図書館で静かに過ごしたりすることで、孤独からひとりになれた。

ひとりは決して怖いものではなく、誰でも気軽になれて、むしろ楽しいもの。そう感じさせてくれる場所や機会が、もっとたくさん存在する社会であって欲しいと思う。

ひとりで過ごすと、だれかといる時間を外から見つめ直すことができる。

自分の時間を大事にするからこそ、人の時間を尊重し、だれかと一緒に過ごす時間も大切に思える。

だからこれからも、誰かと過ごす時間と同じぐらい、ひとりの時間を大切にしたい。



ハフポスト日本版では、自立した個人の生きかたを特集する企画『#だからひとりが好き』を始めました。

学校や職場などでみんなと一緒でなければいけないという同調圧力に悩んだり、過度にみんなとつながろうとして疲弊したり...。繋がることが奨励され、ひとりで過ごす人は「ぼっち」「非リア」などという言葉とともに、否定的なイメージで語られる風潮もあります。

企画ではみんなと過ごすことと同様に、ひとりで過ごす大切さ(と楽しさ)を伝えていきます。

読者との双方向コミュニケーションを通して「ひとりを肯定する社会」について、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。

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